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★35話をお読みいただく前に。 このお話は、途中より性表現がお話を大きく占めてくるため、全文は大変長くなっております。 そのため、原作のイメージを大切にしたい方、そのようなシーンを好まない方については、そのまま36話に読み進んでいただいてお話が繋がるように区切ってupしております。 また、ちあのだがどんなことをしていても大丈夫、すべてのお話を読みたいという方については、36話にお進みいただく前に、寄り道をしていただけるようになっております。 35話を読み終わったあと、36話に進むか、寄り道をするか、ご自身でご選択ください。 香水 マエストロの婚礼 35 「し、真一クン、痛いデス……」 俺は無意識に、のだめの手を力いっぱい握りしめていたらしい。 「あ、悪い……」 のだめから指摘されて緩めた手のひらを見れば、力を入れすぎていたせいで全体に赤みがさし、しっとりと汗ばんでいる。 何かに追い立てられるように急ぎ足で俺のアパルトマンに到着してみれば、ドアを開けのだめを引き込んだ玄関先で、二人とも呼吸は荒く、肩で息をしていた。 「真一クン、のだめ苦しいデス……」 そういって薄く唇を開け、苦しそうに眉をひそめるのだめを見た途端、俺は我慢できず、のだめを壁に押し付けて唇を塞いでいた。 噛み付くようなキス。 アイツの苦しそうな表情と洩れる吐息に煽られて、俺は口内を犯しつづけ、息継ぎもさせずに舌を絡めてゆく。 「んっ……んんっ!」 のだめの拳に胸を叩かれて、我に返った。 もう一度、のだめを力いっぱい抱きしめる。 そうしないと、自分がバラバラになって、消えてしまいそうだったから。 「真一クン……、今、どんな気分なんデスか?」 「なんか……、生まれ変わった気分……。 自分が自分じゃないような、かといって全く別人なわけじゃなくて……」 そうして、のだめの耳元に唇をよせると真一は囁いた。 「ベッド行こう」 「え……」 のだめの手を引いて連れて来ると、俺はベッドに腰掛けタイを緩め、両手を後ろ手についた姿勢でのだめを見上げる。 のだめは俺のいつもと違う様子に戸惑い、俺の前に立ったまま、こちらの様子をうかがっている。 俺はのだめを見上げ、まっすぐに見つめると静かに言った。 「なぁ、お願いがあるんだけど」 「なんデスか?」 「お前の身体、見せてくれない?」 「がぼん……むっつり真一クン……?」 「いや……セクシャルな意味で、興奮したくて言ってるんじゃなくて。 生まれ変わったように、真っ白で空っぽな俺の中に、まずお前を刻み付けたいから……」 射るような真一の真剣な瞳に、のだめは吸い込まれるような感覚を覚える。 「……いい……デスよ? でも……その前に何か飲ませてくだサイ。 飲みやすくてアルコール度の高い、一口で酔えるようなカクテルがいいデス……」 「わかった」 ジャケットを脱ぎクローゼットにしまうと、キッチンに移動し、のだめのためにカクテルをつくる。 シェーカーにクラッシュアイスをたっぷり入れ、よく冷やす。 ジンを1/2に、アプリコット・ブランデー1/4と、カルバドスを1/4。ストレーナー、トップをかぶせ、指で押さえると、左胸の前に抱えて素早く上下にシェイクする。 しゃかしゃかしゃか……。 静まり返った部屋に、心地よい音が響く。 適度に冷やしたカクテルグラスに静かに注ぐ。自分にはブッカーズをロックで。二つのグラスをリビングのローテーブルに運ぶ。 いつの間にか消えていたのだめが、バスルームから何か抱えて戻ってくる。 「なんだ?それ……」 「アロマキャンドル、買っておいたんデス。バスルームで使おうかと思って。 真一クン、ともしてくだサイ……」 俺がライターを探して、キャンドルに火をつけている間に、のだめはソファーの前のラグに直接座り込み、テーブルに頬杖をついてカクテルグラスを見つめていた。 「ほわぉ……。綺麗なカクテルデスね?なんていうカクテルデスか?」 部屋の照明を落とし、スタンドのライトとキャンドルのライトだけのほの暗い部屋の中で、黄金色のカクテルがまるでもうひとつのキャンドルのようだ。 「Angel Face。名前は可愛いけど、30度以上はあるぞ。100%アルコールのカクテルだから」 のだめはグラスを掴むと、静かに口元に近づけ、まず香りを嗅ぐ。 「甘い香りがします……。アプリコット?」 「そう。ジンベースだけど、アプリコット・ブランデーとカルヴァドスの甘い香りと、柔かく甘い飲み口に騙されて、すいすい飲むと潰れるからな」 「エンジェルというよりデビル?」 「……お前みたいだな」 俺の言葉にちょっと不満げな表情で、のだめがカクテルを口に運ぶ。 「……でも、美味しいデスよ?それものだめみたいデスか?」 ソファーに腰掛け、のだめを見下ろす俺を振り返り、挑発的な瞳で囁く。 やっぱり悪魔だろ、お前は……。 のだめは一口、二口と、ゆっくりとカクテルを飲んでいる。 キャンドルの明かりに照らされて柔らかい影をつくる表情が綺麗だ。 恥ずかしそうに伏せ目がちになった目元には、長い睫毛がほんの少し揺れている。 アイツの心臓の鼓動を伝えるように。 ゆっくりと時間をかけてカクテルを飲み干すと、のだめは俺のほうに身体を向き直し、ぺたんとラグの上に座り込んだまま、両手をソファーに座る俺の膝にかけ、小首をかしげて俺を見上げる。 決して弱くないアルコールのせいで、のだめの瞳はとろんと緩みきっていて、顔も全体的に赤みがさして目元はシャドーを入れたようにほんのりとピンク色だ。 「のだめ……今とってもいい気分デス。ふわふわして、自分の背中に羽がはえて、5センチメートルくらい宙に浮き上がってるみたいデス……」 そういうと、俺の両足の間ににじりよってきて、俺の左膝にその小さな頭を乗せ、ぐったりと身体を預けてくる。 俺は膝に乗せた子猫をあやすように、のだめの髪をなでながらグラスに残ったブッカーズを飲み干した。 「なぁ、俺はお前のリクエストに応えたんだけど……」 のだめはゆっくりと頭を起こして俺を見上げる。 「わかってマス……ここでいいデスか?」 こくん。 小さくうなづくと、のだめは俺の膝に手をかけゆっくりと立ち上がり、俺の両足の間に立ったまま、その両手で俺の頬を挟み込む。 「本当は凄く恥ずかしいんデスよ?……でも、生まれ変わった真一クンの中にものだめのこと刻み込んでほしいカラ……」 そういって、のだめは視線を自分の胸元に落とす。 「絶対に忘れないでくだサイね?」 真一のアパルトマンは今、アロマキャンドルから漂う、オレンジ、ベルガモット、ピーチやラズベリーなどのフルーツの甘い香りが溢れていた。 36へ> |