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俺は、ダイニングテーブルで俺のワイシャツ1枚にカーディガンを羽織ったのだめが、美味しい美味しいと夢中で呪文料理を食べるのを1週間ぶりに見つめながら、そのよく動く唇が肉の脂身でてろてろと光る様とか、第二ボタンまではずれた胸元とか、腕が動くたびに魅惑的に動く鎖骨とか、そんなものをワインを飲みながらぼぉーっと眺めている。 なんで俺、こんなに悶々としてなくちゃなんねーんだ? Virgin Snow 2 真一は思い出していた。 パリデビューの日。 演奏が終わって一番に駆けつけてサインをせがんだのだめ。 カーテンコールに応えて、2度目に舞台から戻ってみれば、ほっぺたにバカボンのようにウズマキをつけたまま、きらきら光る瞳で微笑み、真一をまっすぐに見つめていたのだめ。 おもわず抱きしめていた。 「お前さっき、もう一回キスしてほしいって言ったよな?」 「はい……。だって、この前は突然過ぎて、何にも覚えてまセンから……。 ちゃんとシテくだサイ」 「ちゃんと……ね……」 真一は、のだめの腕を掴むと、そのまま自分の楽屋に引き入れた。 のだめは、どうしてよいのかわからず、立ち尽くしている。 真一は燕尾のジャケットを脱ぎ、タイもはずしてワイシャツ一枚になると、のだめを壁に押し付け、その瞳を見つめる。 「ぎゃ、ぎゃぼ……」 いつもと違う距離感に、のだめはあっという間に緊張して、がちがちに固まったまま、そらした視線をバッグを持つ自分の両手に落としている。 真一は、ワイシャツのボタンを外して首もとをゆるめながら、のだめの頬を左手で優しく撫でる。 「のだめ、俺のこと見て?」 のだめの顔がゆっくりと上げられ、真一の瞳をとらえた。 「先輩……」 「俺は……お前のことが好きだ……。 たぶん、あの"悲愴"を聞いてからずっと……」 真一の顔が近づくと、のだめはぎゅっと両目をつぶる。 その初々しさに、胸の奥に温かいものが溢れるのを感じながら、真一は思いを込めて、やさしくその唇に触れる。 唇とくちびるを重ねるだけの、可愛らしいキス。 一瞬のあと、のだめの瞼が開けられ、真一の瞳をみつめる。 「のだめも先輩が好きデス……今までも、これからもずっと……」 その言葉に弾かれたように、真一の唇がもう一度のだめの唇を塞ぐ。 その柔かさを味わうように何度も重ねられたあと、その柔かい唇を割って、真一の熱い舌がのだめの口内に侵入する。 「う、うぅんっ……」 のだめの身体が弾かれたようにびくっと震えた後、逃げるように後退る。 真一は、のだめの身体を壁に押し付け、両手でのだめの頬を包み逃げられないようにしっかりとつかまえると、演奏後の熱とか、これまでの思いとか、そんな熱くて身体の芯まで焦がしてしまうような熱を、のだめの口内に送り込む。 ずるっ。 「え?」 そんな初めての刺激的な行為に耐え切れなかったのだめは、意識を失い、ずるずると壁をつたって崩れ落ちてゆく。 「お、おいっ!のだめっ?!」 コンコンっ! 楽屋のドアをノックする音が聞こえる。 「はぁぁぁ……」 演奏後、楽屋訪問のために押しかけたケエコとマナブとか、三善家とか、もうどうでもいいのにと思いながら、なんとか自分の気持ちをごまかしながら対応する。 「あれ?のだめちゃんどうしたの?」 由衣子たちの突っ込みに知らん振りで楽屋を出て行こうとする真一の背後に、征子の鋭いツッコミが入る。 「まったく……。若いわね、我慢ってものを知らないの?」 「……」 佐久間を追いかけて、なんとか楽屋の外に逃げる。 真一のいなくなった楽屋では、征子たちがなんとかのだめを起こしてソファーに座らせると、水を飲ませたりと介抱してくれたらしい。 邪魔者(ヒドイ)の立ち去った楽屋で、身支度を整え、借りてきた猫のように静かになったのだめに声をかけた。 「ほら?帰るぞ」 「はい……」 ぼぉっとして、いつも以上にぼんやりとしたのだめは、返事はしたものの、なかなか立ち上がろうとしない。 「先輩……。 さっき……、のだめに何かしまシタか?」 「……はぁぁぁ?!」 「楽屋に入って、そこの壁のところで、先輩がのだめのことを好きだって言ってくれて、その後、先輩の顔が近づいてきて、のだめはぎゅっっと目をつむったまでは覚えてるんデスけど、その後、何があったのか、覚えてないんデス……」 「……は、ははは……お前そんなこと言って、また俺のことを騙そうったって……」 「先輩、のだめ病気でショウか?」 「……」 のだめは顔をあげ、真剣な目で真一を見つめる。 正直、この後部屋につれて帰ったら、そのまま自分の熱い思いをぶつけて、のだめのヴァージンを奪ってしまおうと思っていた真一は、のだめからの驚きの告白をうけ、その衝撃のために言葉を失い、楽屋に立ち尽くすのであった。 3へ> |