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のだめは、ずっとずっと、千秋先輩のことが好きだったんデス。 あの、モーツアルトの連弾でフォーリンラブして。 学園祭のラフマニノフで近づきたいと思って。 R☆Sのブラームスで突き放されたけど、それでも少しでも近づきたいと思って、先輩を追いかけてパリまでやって来たんデス。 もちろん、先輩ものだめのことが好きになってくれたらいいなーって思ったことはありましたヨ? いつも遠く、前を向いて突き進む先輩が、ふと立ち止まって、のだめのことを振り返ってくれて、優しく微笑んでくれたらって。 でも、そんな事、ありえないって思ってた。西から上ったお日様が、東に沈みマスって。 Virgin Snow 指揮コンでみごと優勝した先輩は、のだめのことなんて振り向きもせず、ミルヒーと一緒に演奏旅行に出かけてしまいまシタ。 ミルヒーから届く便りでは、先輩は世界各国のお姉サンたちと楽しんだみたいデスし。 その頃ののだめと言えば、井の中の蛙状態で、挫折して落ち込んで。そして先輩のデビュー。泣きっ面に蜂状態。 どろどろした嫉妬で狂いそうになりながら、リストでRuiをコピーするのだめに、演奏旅行から帰ってきた千秋先輩は突然キスしてきたんデス。 もー、びっくりしまシタ! あの時、のだめは自分のことで精一杯で、思わず先輩を突き飛ばしちゃったけど、立ち直って先輩のデビュー公演に駆けつけて。 そんなのだめを抱きしめてくれた先輩に"もう一度キスしてくだサイ"ってお願いしたら、楽屋に引き込まれて濃厚なのをされちゃいまシタ。腰がくだけて、気絶してしまうほどの……。 そして先輩は言ったんデス、"お前のことが好きだ"って。 あれ以来、のだめおかしいんデス。 先輩に熱っぽい瞳で見つめられたり、突然抱きしめられたり、キスされたりすると、身体の中心がキュンってなって、熱くなって。 今までだって、先輩がお仕事で留守になるときは淋しかったケド、最近はもっと、身体の中から切ないというか、淋しくて。 一人ぼっちで先輩の帰りを待っているとき、先輩の匂いのするものを抱きしめて、胸いっぱいにその匂いを吸い込むと、先輩のキスとか、抱きしめられる時の体温とかを思い出して、きゅーんってしちゃうんデス。 のだめ、病気でショウか? 1週間足らずの短い期間だが、俺はコンクール事務局から用意されていた演奏会の1つに出るため、パリのアパルトマンを留守にした。 のだめと恋人になってから初めての事で、アイツがどんな反応をするのかと思っていたが、伝えたときの反応は、がっかりするほどあっけなくて……。 俺はほっとするのと同時に、すこし淋しいというか……。 でも、恋人になって初めて知った、アイツの初々しさとか、恋人にだけ見せる女らしさとか……、そんなものに少しやられっぱなしだったから、少し離れて冷静になるのもいいかと思ったりして。 俺からは初日に到着したとき電話をした。アイツはいつもの通り、腹が減っただの、ターニャや学校の話なんかをして。そんな今までと変わりのないアイツに勝手にがっかりしたりして。その後、アイツからはなんの連絡もなく……。 俺はとにかく、今の自分の力を出し切ろうと、仕事に集中した。 それなりにいい結果を出すことができて。アイツにこれから帰るって連絡しようとも思ったけど……。 なんとなく、ためらってしまった。 期待しすぎて、その期待に裏切られて、がっかりしたくないから。 アイツには、絶対にこんなこと、言えないけど。 かちゃり。 アパルトマンの部屋は、鍵もかかっておらず、それはアイツがこの部屋で待っていてくれているということでもあって。 無用心だからちゃんと鍵をかけろとか、小言をいいたい気持ちより、待っていてくれることがうれしくって。 「……ただいま……」 小さく、声に出してみる。 寝室からリビングに続くドアから漏れる明かりで、ぼんやりと浮かぶベッドには、先客がいることを知らせるように、こんもりと盛り上がったブランケット。 ブランケットからは、薄茶色の子猫のような髪の毛がのぞいている。 俺はそっと近づくと、小さく声をかける。 「おい、のだめ?」 すっかり眠っているようで、小さな声をかけたくらいではびくともしない。 俺は少し面白くなくて、いたずら心から一気にブランケットを剥ぎ取ってみる。 「お前は俺が留守だと思って……!」 目の前にひろがる光景に、驚きのあまりブランケットを持った手が止まり、言葉が出てこなくなる。 「ん……うぅん……」 のだめが寝返りを打つ。 俺は起こしたくない気持ちと、このままこの姿を見ていたい気持ちと、しばらく葛藤して、結局ため息をつきながら健やかな寝息をたてる恋人にブランケットをかけなおした。 帰宅をした真一を迎えたのは、真一のワイシャツ一枚を羽織って、ベッドにもぐりこんでいたのだめ。 のだめの身体にはあきらかに大きすぎる真一のワイシャツは、のだめの身体をさらに華奢に女性らしく強調していて、第二ボタンまで外された胸元からは、豊かな谷間がちらっと覗いていて、寝返りを打ったことで、すらりとのびた白い足は太ももまであらわになっていた。 「はぁぁぁ……」 無邪気な恋人の、まだ目にしたことのないワイシャツの下の身体。 それはまるで、まだ誰も足を踏み込んでいない、美しいヴァージンスノーのようで。 「その気もねーのに、べたな格好で挑発するんじゃねーよ……」 その美しい雪原に足を踏み込みたいような、まだその美しさを眺めていたいような……。 もう一度大きなため息をつき、恋人が目を覚ました時に喜ぶだろう呪文料理を用意するため、キッチンへと向かった。 2へ> |