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黒木クンを連れて行ったら、先輩びっくりするだろうなぁーって、のだめワクワクしてアパルトマンに帰ったのに……。 アパルトマンの門をくぐって、エントランスで待っていたのは、旅支度を整えて、旅立つばかりの千秋先輩。 この前、帰ってきたばっかりなのに、またのだめを置いていっちゃうんデスね? Virgin Snow 15 黒木クンが一緒だったことも忘れて、のだめは思わず先輩に抱きついてまシタ。 先輩はごめんって謝ってたケド……先輩が謝ることじゃないデス。 先輩にお仕事がくることはいいことなんだから、のだめは妻として喜ばなくっちゃいけないんデス! 黒木クンに気づいた先輩が、慌ててのだめを振りほどいて、時間がないからと慌しく旅立ってしまって……。 ごめんなサイ、のだめ、このときばかりは黒木クンがいなければよかったのにと思ってしまいまシタ。 でも仕方ありまセン!先輩はもう行ってしまいまシタから、のだめは妻として、夫の友人をもてなさなければ! 「黒木クン、寄っていきマスよね?」 「えっ!いいの?千秋君も出かけちゃったのに……」 「このまま黒木クンのことを帰しちゃったら、あとで先輩に怒られマスよ? 先輩の作ったカレーもあるみたいだし、ぜひ食べていってくだサイ!」 「……じゃあ、お言葉に甘えて……」 先輩が行ってしまったのは辛かったケド、こうして千秋先輩以外の日本の知り合いと会って話をするのも久しぶりで、それはそれなりに楽しくて……。 しかも黒木クンはコンヴァトの学生だから、ガッコの話とか、室内楽を一緒にやろうとかかなり盛り上がりまシタ! 千秋先輩のカレーも、美味しいって喜んで食べてくれて、気がつけば……ぎゃぼ!もう22時を回ってマス。 「こんな遅くまでごめんね?つい楽しくって長居しちゃったよ」 「いいえー、のだめも楽しかったデス!黒木クンさえよければ、また遊びにきてくだサイ」 「うん、ありがとう」 くそっ!どいつもこいつも、俺様の邪魔ばっかりしやがって……。 パリからアムステルダムまで3時間強の列車移動。 真一はイライラしていた。 のだめが学校に出かけて、いよいよ明日は……と期待に胸を膨らませ、いつものように部屋の掃除やら洗濯やらを始める。 特に寝室の掃除は念入りに。 のだめの初めてだから、どんな落ち度もあってはならない。 真一はベッドのマットレスまで外して、アパルトマンの屋上に運び、陽に当てる。 快晴の空が、真一とのだめの初めてを祝福するかのようで、真一はほかほかになったマットレスを持ち上げると、満足そうに屋上をあとにした。 寝室のベッドにマットレスをはめ込み、洗い立ての染み一つ無いシーツを敷きこむ。 bububu……。 携帯が着信を知らせて震える。 「げ、エリーゼ……」 仕事のオファーがあるのはとても嬉しい。実力も知名度もまだまだの自分には、今はとにかく経験が必要で、どんな仕事でも受けたいというのが本音。 あれだけ飛び出したかった日本から、やっと出ることができて、ヨーロッパの地を踏みしめ、指揮者コンクールで優勝。日本で腐っていた時のことを思えば、夢のような自分の今。 でも今は……しかもなぜ明日っ!(涙) ホテルにチェックインすると、さっそくバタバタと別れてしまったのだめのことが気になって、携帯に電話する。 RRR……。 "アロー!のだめデス!ただ今電話にでることができまセン!メッセージを……" アイツ……なにやってるんだ? 黒木君と……一緒にいるのか? イライラは解消されるどころか、募るばかりで。 真一は悶々としながら、明日のリハーサルのために、総譜を広げる。 千秋真一、今は目の前の音楽に集中しろ。 黒木クンを送り出して、片付けをしたらもう23時。 のだめ一人きりの先輩の部屋は広すぎて……。 先輩、もうオランダに着いたカナ?思わず、先輩の声が聞きたくなって携帯を手にしたら先輩から着信が。 嬉しい!先輩も、のだめの声聞きたいって、思ってくれたのカナ? 「のだめデス!先輩、連絡くれまシタ?」 「……うん。急に出発になって、ちゃんと話できなかったから……。黒木君もいたし……」 「黒木クンなら、さっき帰ったところデス。先輩のカレー、美味しいってすっごく喜んでくれまシタよ?」 「え?さっきって……こんな時間までいたのかよ……」 はぁーって先輩の深いため息。なんでショウ?のだめ、なんかイケナイことしたんでショウか? 「えと……」 「お前なあ……一応年頃の女なんだから、そういうこと少しは意識し ろよ」 「そゆう事とは?」 「つまり……黒木君は男で、お前は女ってこと。 しかも彼氏の部屋に、彼氏の留守中に男友達連れ込むって、どういう事だよ……」 はぁーってまた、先輩のため息。 「え……だって黒木クンデスよ?そんな心配……。大体、黒木クンに失礼デスよー」 ……コイツは分かってない。黒木君が自分のことを好きだったのにも気づいてないし、俺がどうして不機嫌なのかも。 「……とにかく、俺が留守の間、俺の部屋に人を呼ぶな。夜遅くまで、俺以外の男と二人きりになるな。わかったか?」 「……はい、わかりまシタ……」 二人の間にぎこちない空気が流れる。 こんな小言を言いたくて電話したわけじゃないのに……。 でも、電話してものだめは出ないし、待ってる間もイライラして、やっと連絡があったと思えばこんな調子で……。 このまま話してても、俺はまた変なことを言いだしそうだ。 「ごめん、俺やっぱり疲れてるのかも。 また電話する。お前もなんかあったら電話していいから……」 「……はい、おやすみなサイ」 「おやすみ……」 どうしてこんな風になっちゃったのカナ?のだめはただ、先輩の声が聞きたかっただけなのに……。 さっきまで黒木クンと一緒だったって、先輩のカレー喜んでまシタって伝えたら、先輩も喜んでくれると思ったのに……。 電話は顔が見えないから、苦手デス。先輩がどんな顔をしているのか想像するしかなくて……不安になるんデス。 先輩、怒ってまシタよね?やっぱりお仕事中は、電話しないほうがいいのカナ? 電話して、先輩の邪魔をして嫌われるのはいやデス。 そんなことになるくらいなら、のだめは寂しいのくらい我慢することにしまシタ。 だって、先輩は出掛けるとき、すぐに帰ってくるって、ノエルには戻るって言いまシタもん。 それまでは、先輩の声を聞きたい気持ちは封印して、のだめもピアノを頑張りマスよ! リハーサルが終わった。 心地よい緊張感の中でいい仕事ができたと思う。 こんなとき、素直にアイツに報告をして、一緒に喜んでもらいたいと思うのは、当たり前だよな? 簡単な食事をとって、ホテルの部屋に戻る。 シャワーを浴びて、ビールを冷蔵庫から取り出すと、ベッドに上がって携帯を睨みつける。 のだめからの着信はない。 昨日、あんな切り方をしたから、俺はなかなか発信ボタンが押せずにいる。 携帯を睨みつけながら、ビールを1缶あけた。 俺は覚悟を決めて、発信ボタンを押す。 RRR……。 "アロー!のだめデス!ただ今電話にでることができまセン!メッセージを……" どうしようか?このまま留守電に昨日のことを謝ってしまおうか? 待て!なんで俺が謝らなきゃならない? 俺は、女としてそのへんの自覚が足りないアイツに、注意を促しただけであって、感謝されたっていいくらいだろ? プッ! 「はぁぁ……」 大きくため息をつき、携帯を放り投げると、真一は枕に顔をうずめた。 先輩から着信があったケド、のだめは電話するのが怖くて。 先輩が帰ってくるまで、電話しないって決めたんデス! だから……。先輩からの着信は涙をのんで無視することにしまシタ。 今は、きっちりがっしりのバッハの懐にどうやって入り込むか、のだめとバッハとの勝負デス。 先輩、のだめ1人でがんばりますカラ。先輩もお仕事、頑張ってくだサイね? 本番が終わった。 携帯をチェックするも、やっぱりアイツからの着信はなくて。 公演がうまくいって気分はいいはずなのに、俺ははっきりいって面白くない。 俺ばっかりが、こんな風に悶々としているのだろうか? アイツ、俺のこと本当に待ってるんだろうか? 冷静に考えれば大したことじゃないのに、ちょっとした事で俺の心は不安でいっぱいになる。 とにかく、パリに帰ろう。 パリに帰って、アイツの笑顔を見たら、きっとこんな気持ちもあっという間に消えてしまうだろうから。 荷物をまとめ、ホテルの部屋を出る。 真一は、足早にパリ行きの列車に向かった。 16へ> ふぅぅ……。この手のお話は苦手です。 感情移入しながら書いていくので、かなり消耗します。 うんうん唸りながら書き上げました。 じゃあ書くなよってことなんですが(笑) まぁこれも二人の初めてを盛り上げるためのラブのスパイスということで。 読者の皆さまも読まれてて辛かったと思います。お疲れ様でした! |