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「それでどうなのよ?昨日はなんか面白いことあった?」 コンヴァトのカフェテラスでは、すっかり日課となったターニャによる恋のレッスンABCが今日も開講されていた。 「えっと……昨日は千秋先輩とラブラブShoppingでシタ!のだめにアロマキャンドルを選ばせてくれたんデスよ?」 「アロマキャンドル……ははーん、当日使おうって魂胆ね? さすがむっつり、やるわね?ほかには?」 「のだめ、当日どんな格好をすればいいのか、先輩に思い切って聞いてみたんデス」 「え?……あんたって、本当にうぶなんだかよく解らなくなるときがあるわ……。 で?エロい下着でも買ってもらった?」 「えと……なんでもいいと言われたのデスが、せっかくだからパジャマでも見てみるか?ということになって、お揃いのパジャマを買ってもらいまシタ、ゲハ。 昨日からそれを着て、先輩と一緒に寝てるんデスよ、はうん……」 「一緒に寝てるって……、チアキはなにもしてこないの?」 「えっ!?し、してきまセンよ?(めそらし)」 「ふふん、そりゃーあるわよね?付き合い始めだもの」 「……」 「ほかには?なんか面白いことは?」 「ターニャ……なんだか面白がってまセン?」 Virgin Snow 13 「なに言ってんのよ。未経験のあんたの相談にのってあげて、その上惚気話まで聞いてあげてるんでしょ? あんたが聞いてほしくなければ、私は別にいいのよ?」 「ぎゃぼ、ごめんなサイ、お願いします……」 「で?」 「えと……昨日、先輩の部屋に行ったら、先輩、のだめに気づかないくらい真剣にネットしてて……」 「どんなサイト?」 「それが……ロスト・ヴァージンについて? しょ、処女膜とか、どうしたら痛くないかとか……」 「そんなことまで調べてるなんてほんと勉強家ね、日本人は。 まぁ、それだけあんたを大切に思ってるってことじゃない?」 「あのぉ……やっぱり痛いんでショウか?」 「痛いなんてもんじゃないわよー! なかなか挿入できないから、チアキもきっと苦労するわね……くっくっくっ……」 「……ターニャ、何かのだめにできることってありまセンか?」 「そうねぇ……あんた、自分で触ったり、入れたりしたことある?」 「ぎゃぼっ!そ、そんなことあるわけないじゃないデスか……」 「そうよね……あ、今生理中なのよね?のだめはやっぱりナプキン派?」 「そうですケド……」 「じゃあ今日からタンポンに変えなさいよ! 何か入れたことがあるのとないのとでは、違うはずよ、きっと」 「なるほど……それならのだめでも、できそうデス!ターニャ、ありがとデス!」 「どういたしまして……ノダメって素直ねぇ(意味ないと思うけど)……」 真一は一人、昨日のだめと買い物に訪れた雑貨屋に足を運んでいた。 昨日はのだめにアロマキャンドルを選ばせたあと、 「先輩、のだめどんな格好すればいいデスか?」 と小悪魔的な発言をされ、 「な、なんでもいいよ……」 と、とりあえず答えてみたものの、せっかくだからパジャマでも見てみるか?ということになる。 店のナイティを置くコーナーでペアのパジャマを見つけ、 「お揃いで着るか?」 と、聞いてみたら、のだめがあんまり嬉しそうに微笑むので、思わず買ってしまったのだった。 しかし真一は、その店で見たナイティの中で、もうひとつ気になっているものがあった。 シンプルだがアクセントに胸元と袖口、裾にフリルがついたオフホワイトの膝丈のネグリジェ。 ハイウエストのデザインで、バストの下が絞られているので、その下から自然にギャザーが寄せられ、ふんわりと広がる裾がロマンチックな雰囲気だ。 のだめはそれを見つけると、 「ほわぉ……お姫様ドレスみたいで可愛いデス……」 と、蕩けるように眺めていた。 真一はそのことが一晩たっても忘れられず、結局もう一度一人で来てしまったのだ。 「……」 ネグリジェを真剣な表情で食い入るように見つめる真一に、完全にその一帯だけが異空間になってしまっており、店内の買い物客がびくびくと避けて通る。 そんなことにはお構いなしで、真一は脳内でそのネグリジェをのだめに着せてみせる。 大きく開いた襟ぐりからは、のだめの童顔からは想像もつかない豊かな谷間がのぞき、ハイウエストでバストの下が絞られているので、より大きなバストが強調され、こぼれおちんばかりで。 真一は、その胸元にそっと腕をのばし、胸元に結ばれたリボンに指をかける。 すぅー……。 真一の指によって、解かれてゆくリボン。 ぱさ……。 胸元のリボンが解かれ、少しだけ開かれたそこから、のだめの豊かな胸の盛り上がりがまた少し顔をのぞかせる。 真一はのだめの華奢な肩にひっかかっている布を、少しずつずらしていく……。 ごくり……。 「……お客様?……」 「うわぁぁぁぁっ!」 真一はいつの間にか近づいてきた店員に声をかけられ、飛び上がりそうに驚き、振り返る。 「は、はい?」 「彼女にプレゼントですか?よろしければ……」 あまりに思い詰めたような雰囲気の真一に、店員が助け舟をだしたようだ。 「はい、お願いします……」 真一は部屋に戻ると、リボンのかけられた包み紙をクローゼットの奥へしまい込む。 そしてもうひとつ、のだめが一緒では購入できなかったビニールで包まれた小さな箱を、ベッドサイドの一番上の引き出し奥にしまい込んだ。 「ふぅぅ……」 がちゃ。 「ただいまデース!」 「お、おかえり……」 タイミングよく、外側からドアが開けられ、ご機嫌な恋人が胸元に飛び込んできた。 ふがふがと胸元の匂いをかぐ恋人に、半ば呆れながらも、その行為を拒絶することはせず、自分もその柔らかい身体を抱きしめ、甘い香りを楽しむ。 「むきゃ?先輩、いつもみたいに怒らないんデスか?」 「……うん」 帰宅後、ピアノを弾き終わったのだめに、カフェオレを入れてやる。 最近では練習しろと言わなくても、のだめは自分から進んで練習をする。 それだけコイツも必死だということだよな。 「ほら……」 「ありがとデス!」 「どう?学校は?」 「調子いいデスよ?のだめ、最近は初見もなかなかやるんデス」 「へぇぇ……」 大人しくカフェオレを飲んでいたのだめだったが、突然俺のほうに体を向け、何か言いたげにモジモジしだした。 「どうした?」 「あ、あのぅ……先輩と彩子さん……」 「彩子?」 「……付き合ってまシタよね?」 なんだ突然?一体どうしたんだ? 今まで彩子の話なんて一度もしたことなかったのに。 そもそも、コイツが俺と彩子が付き合ってたことを知ってるのも意外だ。 コイツらしくはないが、もしかして俺の過去の女にヤキモチでも妬いてンのか? 可愛いところもあるじゃねーか。 のだめは、普通じゃないところが魅力だけど、時には、普通の女性みたいな反応をしてくれてもいいのに……と物足りなく思うこともあったから、真一は満更でもない。 うつむいたまま、相変わらずモジモジしているのだめの頬に右手をのばし、のだめの顔を上げさせ、自分のほうに向かせると、真一は熱っぽい視線を向ける。 「どうした?妬いてるのか?」 「……先輩と彩子さん、名前で呼び合ってまシタよね?」 「……そう……かな?」 「いつからそうなったんデスか?」 「えっ!……なんでそんなこと……覚えてねーよ」 「そういうのって、自然になるものなんデスか?」 「……さぁ……」 「……えと、名前を……」 「名前?」 のだめはそう言うと、上目づかいで潤んだ瞳で真一を見つめ、つぶやく。 「先輩のこと……のだめも名前で呼んでいいデスか?」 なんだ、そんなことか。 ほっとするのと同時に、少しがっかりもしたけど、そんな事いちいち断ってくるなんて、ほんとにコイツは……いじめたくなるほど可愛い。 真一は、そんな嬉しい気持ちは表情には出さす、ぶっきらぼうに返事をする。 「かまわねーけど。じゃあ、試しに呼んでみろよ?」 「えっ……」 「ほら……」 真一は、その美しい顔をのだめの目の前まで近づけ、口角をあげてにやりと笑う。 「のだめ、俺のこと呼んで?」 「し、しん……はうぅ……」 「どうした?名前で呼びたいんだろ?」 「先輩は意地悪デス!そんなに顔を近づけられたら、のだめ、緊張しち ゃって……」 「顔は関係ーねーだろ?ほら、何事も練習だぞ?」 「し、しんいっ……むきゃぁーーーっ!無理デスっ!」 真っ赤な顔を両手で覆い隠すと、真一の胸に顔を埋めて隠してしまう。 「なんだよ……それぐらいのことで……。 じゃあ、先に俺が呼ぶから、それに応えて?」 「え?」 真一からの突然の提案に、のだめが驚いて顔をあげる。 「俺が先にお前の名前を呼ぶから。 そしたらお前も呼びやすいだろ?」 「……はい……」 「いくぞ……」 「はい、どうぞ……」 「め、めぐみ……」 「し、しんいち……クン……」 「なんだよ、呼び捨てじゃないのかよ?」 「む、無理デス……先輩のこと、呼び捨てにするなんて……」 「しょーがねーな。俺は呼び捨てだからな?」 「はい……名前で呼ばれるって、結構攻撃力ありマスね……」 相変わらず頭から湯気でもでそうなくらい、真っ赤になったのだめ。 真一はなんだかおかしくて、のだめの身体を抱き寄せ、唇をのだめの耳元に寄せる。 「めぐみ……」 「はぅん……真一クン……」 「……なかなかいいもんだな……」 また一歩、恋人としての距離を縮めた、そんな真一とのだめの、ある日の午後。 14へ> |