芒果布甸/Mango pudding



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8.旺角・夜晩



 食事を終え、ラジョさんに預かってもらっていた大量の荷物を受け取る。
 若い女の子二人じゃ心配ダヨといって、ラジョさんは重慶マンションのエントランスまで送ってくれた。インド人、イイ人デスね。


 大通りに出てタクシーを拾い、ホテルに帰る。
 尖沙咀からホテルのある旺角までは、賑やかなネイザンロードを進む。派手なネオンの看板がひしめきあう、香港の代表的な景色が車窓を流れてゆく。


 「ノダメサン、今日はたくさんショッピングに付き合ってくれてサンキュ!
 結構歩きまわって、足パンパンじゃない?」


 「そですねー。普段、ここまで歩き回ることってあんまりないカラ。
 さすがののだめも疲れまシタ」


 「それじゃあ、明日からのためにも疲れとっておこうヨ」


 「ほえ?どやってデスか?」









 「ぎゃぼーーーー!ムキャキャキャキャ!」


 ホテルに荷物を置いて、旺角の街中に引き返して10分後、のだめは強烈な痛みに悲鳴を上げていた。


 Ruiにつれてこられたのは、いわゆる足ツボマッサージ。


 旺角の派手で賑やかな夜の雰囲気からは別世界のような、落ち着いた照明の室内に、大きな革張りのふかふかシート。
 シートの耳元からは、ゆったりとした音楽が流れている。


 最初は、美味しいお茶をいただきながら、漢方薬が入っているという温めのお湯で足湯を。
 その後、足の裏に人肌に暖められたオイルをすりこんでもらっていたところまでは良かったのだが……。


 ゆるゆると指を滑らせているだけなので、『なぁんだ、足ツボなんて楽勝デスね?』なんて油断していた。
 ところが突然、ここぞというツボに”グリグリグリッ!”と力を入れられたら最後、全身を突き抜ける強烈な痛みに悲鳴をあげるしかなかった。


 しかし、足裏へのツボ押しが終われば、足の甲から足首、すね、ふくらはぎと、膝下までを心地よくマッサージされ、リンパもマッサージしてもらって、すっかり夢見ゴコチ。


 「デトックスネ。水、いっぱいトルネ?」


 足ツボマッサージには毒だし効果があるから、水分をたくさん取っておくようにとの事。
 立ち上がってみると、さっきまでのだるさがすっかりとれ、全身の血行も良くなっている気がする。この効果を実感すると、あの強烈な痛みにも納得せざるを得ないデスね。









 ホテルに戻る途中、Ruiから締めのスイーツを食べようと誘われる。


 え?もう23時過ぎデスよ?確かに旺角の街は今も人がいっぱいで、明るい照明で眩しいくらいデスけど……。


 連れて来られたのは、赤地に金文字で『許留山(ホイラウサン)』とかかれた中華風の看板のお店。
 店はオープンスタイルで、店先にはフルーツなどのジュースだろうか、何種類かのジューサーが回されている。


 「こ、これはもしかして、あのハマアユもハマったというスイーツの有名店デスか?」


 「ハマアユ?よくわかんないけど、香港ではメジャーなスイーツのチェーン店だヨ」


 深夜1時まで営業だから、ホテルの近くにあれば、締めについつい寄っちゃうんだよネ。


 この時間でも店内は若い女性たちで満席。


 メニューにはカラフルなフルーツスイーツの写真がいっぱいで、はぅん、目移りしちゃってだめデス。オススメはどれデスか?


 「マンゴープリンも美味しいけど、マンゴーと黒糯米のココナッツミルクかけは最高ダヨ!」


 「じゃあ、それいただきマス」


 「オッケー。で、冷たいの?温かいの?」


 「はい?」


 「だからさ、どっち?」


 え?えええ?スイーツで、マンゴーで、温かいって……。
 もう、のだめには何がなにやら……。
 Ruiにお任せしますって言ったら、温かいのが出てきた。がぼん……。


 「むきゃ?温かいの、いけマスね?」


 あ、あれぇ?すごく美味しいデス!
 お口の中がスイーツレボリューションですヨ。


 「でしょ?香港の人は意外と、冷たいのは身体に悪いって言って、温かいスイーツ食べるんだヨ。
 その時の体調とか、食事との相性もあるけど。」


 「そなんですか。はぅん、適度な温かさがマンゴーの甘みを増しているような……」


 これ、クセになりそうデスね。疲れた身体に染み渡りマス。


 「ノダメサン、明日なんだけど、ワタシはエステに行きたいと思ってるんだよネ。
 ノダメサンって、エステとか興味ある人?」


 「むむ。残念ながら、エステとはお付き合いした事がないというか……」


 「あははは!構わないヨ。ノダメサンらしいね。じゃあ、何か希望は?」


 「よかったらRuiはエステに行ってくだサイ。
 のだめ、そろそろ一人でぶらっとしてみようかと思ってるんデスが……」


 「本当に?大丈夫?」


 「だ、大丈夫デスよ。こう見えても大人の女デスからね。
 RuiのおかげでMTRにも乗れるようになったし、すこしアドバイスなどしていただければ……」


 「了解!じゃあ、明日は別行動ということで。
 朝食は一緒に食べようヨ。その時、ノダメサンが行きたいところとか、アドバイスしてあげるヨ?」


 「むきゃ!よろしくお願いシマス」









 ホテルへの帰り道、Ruiはのだめが行きたいところなどをいくつか聞くと、コンビニに寄って、一冊の本を差し出す。


 「はい、これ香港街道指南。地図と公共交通機関の路線図が入ってるから」


 「ほわぉ……。何から何までアリガトゴザイマス」


 「無問題ダヨ!」


 ホテルの部屋に戻ったのは0時過ぎ。


 「のだめ、まだホテルの部屋からの夜景、見られてマセン……」


 そうつぶやくと、そのままベッドにダイブし、次の瞬間には穏やかな寝息をたてていた。





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