芒果布甸/Mango pudding



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1.旺角・下午




 翌日、遅いブランチを取り、北京から空路香港へ。


 数年前までは、仕事もプライベートもママがベッタリで、身の回りのことなど一人ではできなかったのではないかと思われたRuiが、のだめのパリ行きのチケットのキャンセルから、香港行きのチケット、滞在先の手配まで、すべて面倒をみてくれた。


 「Rui、助かりました。すっかり大人な女デスね」


 「あはは、香港にハマってからダヨ。行きたいっていう気持ちが強くなると自然と出来るようになるもんダネ」


 3時間半で香港に到着。広大だが機能的な空港で、スムーズに到着ロビーへたどり着く。


 「これからどうするんデスか?」


 「まずはホテルにチェックインするヨ。
 今回のホテルは私も初めてのところだから、ちょっと楽しみ。」


 音楽業界では若いころからスターであったRuiも、香港に入った途端、一般の若い女性のツーリストとして楽しむようにしているのだという。


 「移動もね、できるだけ公共の交通機関を利用するんダヨ。そのほうが香港人っぽいでショ?」


 香港国際空港の到着ロビーを出ると、目の前に直結してエアポートエクスプレスのプラットホームがある。


 「ノダメサン、ここで八達通(バッタットン)を買うネ?」


 八達通、別名オクトパスカードは、日本で言うところのSuicaとかPASMOと同じ、ICカードらしい。


 「これがあれば、MTRもトラムもフェリーもバスも、香港の公共交通機関の乗り物ほとんどの清算ができるし、コンビニでも使えて便利なんダヨ」


 八達通を使えば、通常料金より割引もあるらしい。Ruiに勧められるまま購入。


 「チャージもしておくヨ。これは私からおごりネ。」


 モダンでシンプルなデザインの車両が静かに到着して、二人は乗り込んだ。


 「今回は九龍の旺角に泊まるから、九龍(ガウロン)駅まで行って、ホテルまでタクシーに乗るヨ」


 「がうろん?」


 「うん。九龍は大陸と陸続きの半島。どちらかというと香港の下町かな?
 九龍とヴィクトリア湾をはさんで向かい側に位置するのが香港島。こちらがどちらかといえば山の手。実際、街中は坂が多くて、山登りしているみたいなんだヨネ。
 あとは、空港のあるランタオ島。HKディズニーランドがあったり、リゾート地っぽいかな。そのほかにも小さな離島がいっぱいあって香港って島国なんだヨ」


 なるほど、いわれてみれば、空港を出てからの車窓の眺めは、しばらく薄いエメラルドグリーンの海が続く。漁船が浮かんでいたり、リゾート地というより素朴な印象だ。


 のだめの乏しい香港への知識というかイメージでは、100万ドルの夜景などと言われた、高層ビルが建ち並ぶ景色や、色とりどりのネオンに装飾された大小さまざまの大きさの看板が大通りにずらっと並ぶ景色など、新宿の超高層や歌舞伎町のような派手な夜の街といったものしかなかった。


 「ちょっと楽しみになってきまシタね」


 のだめは久しぶりに音楽やパリ、遠く離れた恋人のことも忘れ、新しく訪れた街に期待を膨らませた。








 エアポートエクスプレスを九龍駅で下車。ここは空港に向うエアポートエクスプレスのほか、香港の中心部を走るMTRも乗り入れている。
 街中で搭乗手続きが行える、インタウン・チェックインの機能も持ち、巨大ショッピングモールも併設した巨大な駅だ。


 「ここからホテルまではタクシーですぐダヨ」


 タクシーに乗り込む。真っ赤なボディーがかわいい。”的士”とかかれており、これはtaxiの英語読みをそのまま漢字にあてたもの。覚えやすいかも。









 タクシーで20分程度に乗っていただろうか。到着したランガムプレイス−モンコックホンコンは、香港の九龍にある『旺角(モンコク)』という賑やかな下町に建つ42階建ての高層ホテル。
 ここが香港での宿泊先。庶民的な街並みにガラスを全面に使用したピカピカかの高層ビルの対比が面白い。


 MTRの駅から直結したショッピングモールやシネコンとつながっているものの、ホテルの内部に一歩足を踏み込めば、外の喧騒が嘘のように静かで、優雅な雰囲気に驚かされる。


 「ほわぉー。素敵デス……」


 フロントでチェックインをし、ベルボーイに案内され、客室にむかうエレベーターに乗り込む。とても静かだ。


 「なんか、意外でしたヨ」


 「ん?何が?」


 「香港デス。北京もそうでしたが、とってもモダンで機能的で……。もっとごちゃごちゃっと騒がしいイメージだったカラ」


 「あはは!そうだねぇ。いままでのところはそうかもネ。でも、ノダメサンの香港に対するイメージ、ある意味間違ってないと思うヨ。これから行くところは、まさにそんな所だからネ」


 Ruiは大切な宝物をみせびらかす子供のように楽しそうだ。
 対してのだめは、先の読めないゲームに巻き込まれたような。Ruiは何を考えてるんでショウ?
 とにかく楽しんだもの勝ちデスかね?








 高層階のエグゼクティブルームへ。


 「いつもは、ほとんど街の中にいて、部屋には寝に帰るだけだからあんまりホテルの部屋のグレードにはこだわらないんだけど、今回は香港バージンのノダメサンが一緒だからね、景色の綺麗な部屋にしてもらったヨ」


 シックで落ち着いた室内。部屋の壁一面を占める窓から広がる景色はヴィクトリア湾をはさんで180度広がる、香港島の高層ビル群。


 「夜景がとっても綺麗ダヨ〜。でも、街で美味しいもの食べたり、遊び回って帰ると、いつも夜景なんかどうでもよくなっちゃうんだけどネ」


 「美味しいものといえば、のだめ、お腹すきまシタ……」


 なにを食べさせてくれるんデスか?
 今だに普段はすっぴんで貫いているのだめには、化粧直しも必要なくすでに出かける準備万端。


 「今日はちょっと街中から離れて、美味しい海鮮を食べるヨ」


 「ムッキャー!海鮮デスか?!街中から離れるって、いきなり離島とか?」


 「うーん、離島の海鮮も美味しいんだけど、今日はそんなに時間ないから、もうちょっと近場でネ」





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