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11.一個人行街 3 もう一度MTRに乗り、香港島に渡る。中環駅で下車。チャイニーズテイストのハイセンスな雑貨とシルク製品を見に行くことにする。 駅をでて、大通りから少し入ったところに『上海灘』はあった。店に入ると、表の喧騒とはうって変わった、ゆったりとした時間が流れているようだった。 「ほわぉー、太極拳みたいデス(意味不明)」 最初のフロアには、シルクを使用した、小物やインテリア。 ウォレットや手帳カバー、キーホルダー、カードケース、手鏡などの小物には、中華テイストのモチーフが型押しされたシルク生地が使われてはいるが、若葉色、韓紅、ブラックなどのカラーバリエーションで、手持ちのバッグなどと合わせても違和感なく使えそう。 かえってアクセントになるカモ。 同じような素材、カラーで、ファブリックも用意されている。 チャイナテイストの部屋履き、可愛いデス! のだめ用にレッド、真一用にブラックを購入。 上質なシルク地に美しい刺繍が施されたナイティやガウンも豊富だ。 試しに羽織らせてもらうと、その肌触りのすべらかさにメロメロ。 美しい象牙色のシルク地に花鳥風月の刺繍が施されたガウンを購入。真一にもお揃いでブラックを購入した。 ベッド廻りも一式購入したかったが、サイズがわからないので断念。 次回は採寸してから来ようと決意する。 2階に上がると、色とりどり、さまざまな柄、デザインの洋服が並ぶ。 店の奥では、本格的なチャイナ服のオーダーメイドができるようだ。 洋服のデザインはモダンだが、色も刺繍もプリントも中華テイストが意識されていて、ため息がでるほど美しい。 伝統的なものも取り入れつつ、現代のテイストがうまく融合されていて、オリジナリティーにあふれている。このようなお洋服を着てパリの街を歩いたなら、さぞや注目されることだろう。 「がぼん……、とってもよいお値段デスね……」 手が込んだ仕立ての洋服たちは、さすがにそれなりのお値段ではあったが、ちょっとしたパーティーやサロンで使えそうなドレスを一着購入しようと決める。 鮮やかな藍色のワンピースに目がとまる。 ボディーラインにフィットするシンプルなデザイン。胸元は深くV字にカットされた、セクシーなスタイル。 生地と同系色、ブラウン、緋色などの絹糸をつかって、南国の植物と小鳥をモチーフにした美しい刺繍が胸元から裾にかけて繊細に差し込まれている。 フィッテングをぜひと勧められ、身につけてみれば、鮮やかな藍色がのだめの白い肌によく映える。 「ホウレンアー!(とても綺麗ですよ)」 言葉はわからないが、褒められているようだ。 サイズもぴったりで、なにより軽さと肌触りがよく、身体にしっとりとなじむのが心地よい。 「これくだサイ!」 それなりによい値段ではあったが、大満足の買い物であった。 気づいてみれば、Ruiとの待ち合わせ時間が迫っていた。 もう1つ行ってみたい雑貨屋があったのだが、また明日以降のお楽しみにしようと諦め、待ち合わせ場所にむかう。 MTRにのって3つめの駅なのだが、大通りに出たところでトラムが停車したため、思い切って乗ってみることにした。 前回と同じように2階に上がる。 しかし、トラムが動き出してから気づいたのだが、トラムにはMTRのように現在地を確認できる案内もなければ、停車場に駅の名前などが表示されているわけでもないのだ。 「ぎゃぼっ!」 慌てて、香港街道指南をめくる。地図の中に自分が今いるだろうところを必死でさがし、そこから、トラムの走行ルートを待ち合わせ場所まで辿る。 そこからは、地図と車窓の景色を必死で目で追い、現在地を常に確認しながらやっとの思いでトラムから降りる。 「まったく楽しめませんデシタ……」 Ruiとの待ち合わせ場所は、銅鑼湾にある日系デパート、そごう前。 「がぼん、人だらけデス……」 こんな人混みで、Ruiに会うことができるのか不安でいっぱいになるも、すぐにRuiから携帯に着信が入り、誘導されて無事に会うことができた。 「Ruiひどいデス、あんな人混みで待ち合わせさせるなんて。のだめ、遭難するかと思いまシタ」 「あははは!ごめんねぇ、わかってたんだけど、ここが一番わかりやすいかなぁと思って」 お詫びにとっても美味しいものご馳走するから、許してヨ。 「そういえばお腹がすきまシタね。今日は何を食べさせてくれるんデスか?」 食事に釣られて、あっという間にご機嫌を直すのだめであった。 Ruiに連れて来られたのは、大通りから二筋ほど引っ込んだ通りにある、ごく普通のマンションのような建物だった。 エントランスの壁面に並ぶ部屋番号ごとにわかれたインターフォンをおし、Ruiが名前を告げると、ブーっという電子音とともに、エントランスのドアが開錠される。 狭いドアを入り、5人も乗ればいっぱいになりそうな小さなエレベータに乗り込む。 「あのう……、また異国的な食事デスか?」 重慶のインドカレーを思い出し、のだめが恐る恐る尋ねる。 「ううん、今日はね、ふたりっきりのプライベートレストランだヨ」 「プライベート……デスか?」 「うん。これから行くのは、カーリンっていう女性シェフがやってるお店。 完全予約制で、お客は1組のみ。 カーリンはワタシタチだけのために料理をつくってくれるんダヨ。 お料理は家庭的な広東料理でとっても美味しいヨ」 だから期待して無問題だよ。そういってRuiは微笑むと、一つの部屋にむかった。 カーリンの部屋のドアで、もう一度インターフォンをおし、名前を告げる。 ドアが開き、中国系の女性が顔を覗かせた。 「Bonsoir!」 「へ?フランス語?フランス人なんですか?」 「カーリンはね、フランスで料理を学んで、向こうの有名レストランで修業をして、香港に帰ってきたんだヨ。 こっちの一流ホテルのレストランでシェフをしていたんだけど、オリジナルの自分らしい料理をお客さんに楽しんでもらいたいって、プライベートレストランを始めたんだよネ?」 「ええ。ホテル時代からRuiさんには贔屓にしていただいてて。 辞めてしまってから、こちらを始めたことを噂でお知りになって。 ご連絡をいただいた時は、とっても驚きました」 「ワタシ、カーリンのお料理の大ファンだったからネ。」 カーリンは、白のシンプルなカットソーに黒のサブリナパンツ、ベリーショートの髪に人懐っこそうなまん丸の目が魅力的な美しい女性だった。 Ruiの賛辞にすこし恥ずかしそうにお礼を言うと、 「さ、準備万端ですよ。いつでもどうぞ」 と、のだめとRuiをダイニングに招きいれた。 元は普通の住居タイプの部屋なのだろう。 真っ白のペイントがされたシンプルな部屋。 中華風の美しい彫り物がされた木製のスクリーンの向こうには、8人くらいは一度に座れそうな、大きな円卓が置かれている。 部屋の隅には、紫檀の美しい花台、乗せられた大きな陶器に南国の花が美しく彩りを添えている。 「コレ、お願いしますネ」 Ruiが事前に用意しておいたのだろう、持ち込んだ白ワインをカーリンに手渡し、二人っきりの晩餐が始まった。 |