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14.打電話 「もしもし、先輩?」 無理やりベッドに潜り込んだものの、明け方まで熟睡することもできず、早朝に諦めて起き上がることにした。 朝の6時、真一のいるマイアミは20時くらいだろうか? 「おう。元気か?」 「今、大丈夫ですか?」 「ああ、さっき夕飯たべて、部屋に帰ってきたところだから。 そっちはどう?」 「昨日はのだめ一人で香港の街をいろいろ歩いてみたんデス。 博物館に行ったり、市場を探索したり、お買い物もたくさんしまシタ。 夜はRuiにプライベートレストランに連れて行ってもらって、それはもう美味しいものをたくさん頂きました! すっごく楽しんでマスよ?」 「そっか……楽しんでンだな」 「……先輩はどうデスか?順調ですか?」 「うん。明日午後からゲネプロで、明後日は本番」 淡々と会話が進む。 お互い、言いたい事を胸のうちに秘めたまま。 電話でなんか話しているのではなくて、顔が見たい、触れたい、抱きしめたいという思いでいっぱいになって、次第に言葉は出てこなくなる。 「……」 「……」 沈黙を破ったのは真一だった。 「……あのさ、昨日Ruiに言われた」 「なんてデスか?」 「俺が素直じゃないって……。 お前に逢いに来てほしければ、逢いに来て欲しいって、素直に言えばいいのにって……」 「……そデスか……」 「……うん……」 「……(だから?)……」 「……(だからって……うぅ、言えねぇ)……」 重い沈黙に、昨日から脳内を占める事柄について、のだめは思い切って口にした。 「……昨日行ったプライベートレストランのオーナーシェフは、カーリンさんという女性なんデスが、香港で仕事をしながら、フランスに住むご主人と遠距離結婚をしているんデス」 「……それはすごいな……」 「……はい。 カーリンさん言ってまシタ。人間は弱いからあっという間に流されてしまう。 だから大切な人との関係を続けるためには、流されないように碇が必要なんだって……」 「……碇……」 「のだめと真一クンにも必要なんでしょうか?碇」 「……」 「今だって真一クン、のだめに逢いに来いって言えないんデショ?」 「……うっ……。そ、そんな事……ねえよ……」 「ちゃんと言ってくだサイ? 言ってもらわないと、のだめ、わかんないデスよ?」 「……そ、その……。あ、逢いにくれ……ば?……」 「もぉーーーーー、なんで疑問系ね!? 俺様なら俺様らしく、貫き通したらよかろーもんっ!」 真一のあまりのヘタレぶりに、ひさびさに大川弁でキレまくるのだめ。 そんなのだめに、逆ギレしながらも、まんまと言葉を引き出される真一。 「あぁぁぁーーーー!わかったよ、言えばいいんだろっ! 逢いに来いって言ってんだよ!これで満足かよっ!」 「あへぇ〜、久々の俺様で破壊力バツグンでシタ。今日はぐっすり眠れそうデス」 今回も、まんまとのだめにやられてしまったと気付くも、時すでに遅し。(連敗記録更新中) 「……お、おい。それでこっち来るのかよ?どうなんだよ?」 「えとデスね、明日まではホテルを押さえてあるので、明後日まで香港にいマス。 先輩だって、明後日の本番終わったら、翌日には移動なんデショ? のだめ、到着早々移動とかヤですモン。 先輩の移動先で逢いまショ?」 「はぁぁぁっ!? なんだよ、人が恥ずかしい思いして言ってやったのに! 本番はどうでもいいのかよ……。 ……はぁ……、お前ってそういうヤツだよな……」 「そのかわり、移動先にはずっと一緒にいてもいいデスよね?」 「……え……、仕事中、かまってやれねーけど、いいの?」 「しょうがないデスね。 寂しがりやの夫のためデスから、妻は一人で待っててあげマスよ?ゲハ」 「……誰が夫だ……」 「がぼん……ツッコミに威力がありマセン。 はぅん、やっぱり今すぐ駆けつけなくちゃだめデスかね?」 「ち、ちげーよ。いいよ、ヒューストンからで……」 実はうれしすぎて、ツッコミが弱くなってしまったとは意地でも言えない。 でもなんだろうか。 しばらくのだめが自分のそばにいてくれると分かった時の、この安心感は。 「そういえば先輩、ヒューストンって、ヒューストン交響楽団ですか?」 「そうだけど?(フェスティバルのかなりカジュアルな演奏会だけど)」 「ぎゃぼっ!メジャーじゃないデスかっ?!大丈夫なんデスか?」 「……お前……。俺をなんだと思ってンだよ……」 「えと、むっつりのメジャーリーガー?」 「おいっ!お前、こっち来たら覚えてろよ?」 「ぎゃぼっ!」 こうやって、いつものように軽口を叩いて……。 なにが『おっぱい星人としてNASAに捕まえられないデスかね?』だ! お前こそ、地球外生物だろうが! なかなか素直になれない俺を、いつものペースに戻してくれるのはアイツだったりする。 ヒューストンでの再開を約束して、俺たちにしては長い電話を切った。 |