芒果布甸/Mango pudding



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マエストロの婚礼 10






 パリのアパルトマンでは、のだめが一人、部屋で大量のゴミやら、洗濯物やら、がらくたと格闘していた。


 「げほげほっ!」


 ヒューストンから帰ってきた当初は我慢できないと思っていた汚部屋も、ほんの一瞬の気の迷いみたいなものだったようで、その後はイタリアから戻っても、日々の仕事やレッスンに忙しく、アパルトマンはいつもどおりの散らかり放題にすっかり戻っていた。


 「さすがにこの状態はまずいデスよね?」


 今日は真一がパリに戻ってくる。
 マルレの演奏会での真一が見れるのはひさしぶりのことなので気分も弾んでおり、のだめはそのテンションのまま、部屋の大掃除にとりかかっていた。


 ……pururu、pururu……


 「アロー?」


 「のだめちゃん?征子です」


 「ふぉ!征子ママ、こんにちは!」


 「のだめちゃん、これからちょっと時間あるかしら?」









 征子はパリにやってきていた。


 仕事でヨーロッパに滞在していたため、息子とのだめの結婚の決意を知り、いてもたってもいられなくなったのだ。


 なんとか仕事の都合をつけ、パリにいるであろうのだめに連絡をし、食事に呼び出した。


 「のだめちゃん、こっち!」


 待ち合わせのレストランで、きょろきょろと自分を探す様子は、初めて会った数年前と変わらない。
 きっと、何年たってもこの雰囲気は変わらないのだろう。


 「征子ママ、おひさしぶりですー!」


 のだめと征子が会うのは、のだめがソロコンサートを日本で行った時、もう1年以上前になる。


 「のだめちゃん、元気そうね」


 「征子ママも、相変わらず綺麗デス」


 食前酒をオーダーし、再会に乾杯する。


 「今日、真一は?」


 「先輩は、明後日がマルレの本番なので、今日パリに戻って早速リハーサルです」


 今頃ごろネチネチやってるんじゃないデスかね?


 「まぁ、本番二日前に戻ってくるなんて、ずいぶん余裕じゃない?」


 「この1年、ずっとそんな調子でしたから、先輩もマルレの皆さんもすっかり慣れたみたいデスよ?」








 近況報告が終わると、征子は急に改まって姿勢を正し、のだめに向き合うと、神妙な面持ちで切り出す。


 「のだめちゃん、この度は真一のプロポーズ受けてくれて、本当にありがとう」


 そういうと、座ったままではあるが深々とお辞儀をする。


 「あわわ、征子ママ、やめてくださいー。のだめこそ、ふつつか者ですが、よろしくお願いします」


 のだめは慌てて征子のお辞儀を止めると、自分も姿勢を正し、あらためてお辞儀を返す。


 「私ね、のだめちゃんがお嫁さんに来てくれて、本当にうれしいのよ」


 「征子ママ……」


 「もしかしたら、あの子は結婚しないかもって思ってたから。
 そんなことになったら、のだめちゃんにも、のだめちゃんのご両親にも申し訳なくて……」


 そういって、征子は涙ぐんだ瞳でうれしそうに微笑んだ。









 食事を進めながら、のだめは先日のイタリアでのことを征子に報告する。


 初めて会ったヴィエラとはすぐに意気投合して、大好きになったこと、そしてイタリアの郊外に真一がみつけた教会に連れていってもらい、挙式の許可を得たことを話す。


 「え?二人だけで挙式って、のだめちゃんはいいの?
 ご両親はちゃんと納得して頂いているの?」


 「はい。最初は実家に戻って披露宴もしてって思ってたみたいデスけど、のだめの気持ちを伝えたらちゃんとわかってくれましたから、大丈夫デス」


 「のだめちゃんの気持ちって?」


 「先輩とずっと一緒にいることを、神様の前で誓いたいって。
 それができればふたりっきりでいいって……」









 食事がおわり、デザートに舌鼓を打ち、大満足でカフェを飲んでいると、のだめが突然切り出した。


 「あ、そうデス!征子ママに聞きたいことがあるんデス!」


 「なぁに?聞きたいことって」


 のだめは、真一が見つけてきた教会のあるイタリア郊外の街の名前を伝え、その街に心当たりはないか、征子に尋ねる。


 「え?その街ってもしかして……」



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