芒果布甸/Mango pudding



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ボーイ/ミーツ/ラッキー☆ガール 47






 真一は、以前にのだめを救出したあのホテルにやって来ていた。


 前回と同じ寿司店やほかのレストランも探してみたが、二人の姿はなく……。


 最悪の結末が脳裏をよぎる。


 (以下、千秋脳内イメージ)


 ふっふっふっ……ノダメチャン、大人しくワタシのものになりなさい


 イヤッ! やめてくだサイっ! 千秋先輩、助けてっ!


 「うわぁぁぁぁっ!」(妄想して理性崩壊状態)


 焦りといらつきから、携帯すらスムーズに操作できない。


 舌打ちをしながらやっと峰の番号を呼び出し、発信ボタンを押す。


 四回、五回と続くコール音にすら、いらついてしまう。


 「千秋、どうした?」


 「……のだめ、見つかったか?」


 「いやぁ、見つかんねー。そっちは?」


 「……いなかった」


 「そっかぁ、ほかの心当たりは?」


 「いや……松田に教えてもらった店も、前にジジイがのだめを連れてきた店も行ってみたけど……お前は?」


 「俺も、松田に教えてもらった店と、一応Sオケの打ち上げで行った居酒屋まで覗いてみたんだけど……」


 「わかった。真澄と松田は?」


 「まだ連絡ねーけど……あ、おい、千秋?」


 すでに真一との通話は切断されていて。


 「なんだよ千秋のやつ……どんだけ余裕がねーんだ?」


 真一は、龍太郎との通話を切ると、真澄に連絡をしてみる。


 「はいっ、真澄ですぅ」


 「……見つかった?」


 「……いいえ。松田さんから教えてもらったお店と、シュトレーゼマンが行きそうな三ツ星のお店も回ってみましたけど、見つかりませんわ」


 「そっか……」


 「千秋様、そんなに心配なさらなくても、いくらスケベ巨匠だからってのだめなんかのこと……ってあれ? 千秋様? もしもし?」


 やはり一方的に切断された通話。


 「千秋様をここまで追い詰めるなんて……のだめは一体……きぃーーーーっ!」


 真澄との通話を切り、松田に連絡しようとしたときだった。


 携帯が手の中で震えて、着信を知らせる。


 「も、もしもしっ! 見つかったかっ!」


 真一は、松田からの着信に飛びつくように通話ボタンを押す。


 「くっくっくっ……千秋、必死だな?」


 「で? どうなんだよっ?!」


 「いやぁ、心当たりは全部探したんだけど……どこ行っちゃったんだろうねー」


 「……そっか」


 「なぁ、腹へらね? とりあえずメシ食おーよ、メシ。
 ほら、コンマスの家、裏軒? あそこでいいや。
 千秋、おごれよな? じゃ、あとで」


 「え? おい松田? も、もしもし?」


 一方的に切られた電話に大きくためいきをつくと、真一は裏軒にむかった。









 「ノダメチャン、本当にここでイインデスカ?」


 「はい。のだめのお気に入りデス、裏軒は」


 のだめとシュトレーゼマンは、学校を出るとのだめのリクエストにより裏軒にやってきていた。


 「ん? なかなか美味しいデスネ?」


 「デショ? 峰クンのお父さんがシェフなんデス。峰パパのつくるお料理は、なんでも美味しいデスよ?」


 「へぇ、コンマスの峰クンの……」


 「……あのミルヒ、そんなことより千秋先輩を海外に連れ出すための知恵っていうのは……」


 あっという間にマーボやらチャーハンやらを食べ終わり、すっかり満腹になったのだめが、真剣な眼差しでシュトレーゼマンを見つめる。


 シュトレーゼマンはキョロキョロと周囲を見渡してから、体を向かい側ののだめにむかってテーブルの上に突き出し、のだめにも顔を寄せるように手招きをする。


 のだめはシュトレーゼマンのそんな思わせぶりな態度にどきどきしながら、身を乗り出した。


 「まずノダメチャンに、海外に行ってモライマス」


 「むきゃ? カイガイ? のだめ、パスポートとか持ってないデスよ?」


 「もちろんパスポートも作らなくちゃいけないのデスガ、それより海外に行くには理由が必要デショ?」


 「海外に行く理由? えと……はうん、ハネムーンとかデスか?」


 「……ノダメチャン、ふざけるのもいい加減にナサイネ?
 あなたは音楽を学ぶ学生デショ? 学生が海外に行くといったら留学するというのが自然な流れデス」


 「リュウガク? なんのデスか?」


 「もちろん、ピアノデスヨ」


 「のだめがピアノで留学? 」


 のだめは巨匠の言葉をしばらく考えてから、おもむろに吹き出し、体を揺らして笑い出した。


 「……なにを笑っているのデスカ?」


 「あははっ! だって……のだめがピアノで留学だなんて、ミルヒも冗談はヨシコサンデスよ!」


 「……ワタシは冗談など言っているつもりはアリマセンヨ?」


 シュトレーゼマンは真剣な表情で、のだめを諌めるように見つめた。


 「……えと」


 「まずは今週中にこの曲を練習しておいてクダサイ」


 そういうと、シュトレーゼマンは一冊のピアノ譜を手渡す。


 「まだ自分がどこに行けばいいのか、どこに向かっているのか、ノダメチャンにはわからないのでショウ。
 構いません、わかる時にはわかるし、ずっとわからなかったとしても、正しい行動をとっていればイイノデス」


 「正しい行動?」


 「はい、まずはその曲を弾けるようにしておいてクダサイ。
 ノダメチャン、チアキを海外に連れていくことができるのはアナタだけデス。
 アナタがチアキのにんじんにナルノデス」


 「のだめが……千秋先輩の、ニンジン?」









 がらっ。


 裏軒の扉が開く。


 「おや? ノダメチャンの王子様がお迎えに来ましたカネ?」


 「ふぉ?」


 「あ……なんだ、こんなところにいたんですか、マエストロ」


 裏軒の暖簾をくぐり一番に到着したのは、真一ではなく幸久であった。


 「松田先輩……どうして?」


 「千秋に頼まれたんだよ、恵ちゃんが巨匠に食われちゃうかもしれないから、一緒に心当たりを探してくれって」


 「弟子の分際で失礼な……」


 「あ、俺は巨匠に限って、心配ないって言ったんですよ?
 ほら、千秋ってば、恵ちゃんのことになると余裕がなくなるから……」


 がらっ。


 「親父、ただいまー……ってあれ? 巨匠とのだめ?」


 「えっ!」


 峰の後ろから、慌てて真一が顔を覗かせる。


 「はぁ……こんなところにいたのかよ……」


 真一は、安堵の表情を見せるのと同時に、空いている席を見つけるとへなへなと座り込んだ。


 「王子のわりに、だらし無い男デスネ?
 ノダメチャン、あんな男で本当にイイノデスカ?」









 松田に続き、真一、峰、真澄の四人が裏軒に到着し、シュトレーゼマンとのだめと顔を合わせると、二人の席の近くに腰を落ち着ける。


 「ちょうどヨカッタデス。アナタたちにも話がアリマス」


 シュトレーゼマンは四人の男子の顔を順番に見渡すとこう伝えた。


 「長野でワタシの友人が音楽祭を開催シマス。
 峰クンはバイオリン、奥山クンはパーカッション、ノダメチャンと松田クンはピアノで推薦してオキマシタ。
 一流のプレイヤーから指導を受けられマスカラ、楽しみにシテクダサイ」


 「え、俺がどうしてピアノを?」


 「何ごとも勉強デショ?
 それに、ワタシの公開セミナーには参加デキマスヨ?」


 「は、はぁ……」


 「あ、あの巨匠、俺は……」


 「ああ、千秋は弟子としての仕事がアリマス。エリーゼがバカンスデスカラ」


 「え……」


 「夏休みとはいえ、遊びに行くわけではアリマセン!チアキは夜這い禁止デス」


 「なっ……」


 シュトレーゼマンは一気に伝えると、おもむろに席を立った。


 「じゃあノダメチャン、例の件頑張ってネ?」


 「え、えと……はい……」


 そうして立ち上がったシュトレーゼマンは、松田に何やら耳打ちをすると、唖然とする真一たちを残し、裏軒から立ち去る。


 真一は、戸惑うのだめを見つめ、理由のわからない不安に胸騒ぎを覚えるのだった。








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