芒果布甸/Mango pudding



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ボーイ/ミーツ/ラッキー☆ガール 42






 「ふう……さすがに疲れた。
 ごめんな? こんな遅くまで付き合わせちゃって。退屈だっただろ?」


 「退屈なんてこと全然ないデスよ? 先輩のピアノ、すごく素敵デスもん……」


 「いやこんなの、まだまだ駄目だろ……」


 真一は鍵盤を軽く拭き取り、ピアノ譜をかばんにしまい込むと、立ち上がる。


 「腹減ったな? 裏軒でも寄ってくか?」


 「はい。いいデスネ」


 レッスン室を出ると、二人はどちらともなく、お互いの手を絡める。


 「……何食べようか?」


 「……先輩はクラブハウスサンドデショ?」


 「……たまには違うもの食おうかな? お前のオススメは?」


 「そデスねー。裏軒ならなんでも美味しいデスよ?」


 お互いの気持ちを知る前に、いつも過ごしていた場所で、こんな風に手を繋いで歩いたりするのは、まだ慣れないから……。


 二人は、お互いの手のぬくもりだけに意識を集中して、上の空の会話を繰り返しながら、裏軒に向かった。

 







 がらっ。


 「いらっしゃーいっ! あ、のだめちゃんと千秋さん!」


 裏軒の暖簾をくぐれば、店主の龍見が息子の友人たちを歓迎して、さっそく息子を呼ぶために店の奥に声をかけている。


 「今、龍太郎来ますからー。
 で、千秋さんはいつものでいいですか? のだめちゃんはマーボかな?」


 「えと……今日は先輩も、違うもの食べてみたいそうデス。先輩、何にしマス?」


 「お前に任せるよ。好きなもん頼んで、二人でシェアするか?」


 「ふぉ! いいデスね? じゃあ……炒飯に餃子、マーボとチンジャオロースで!」


 「お前、それっぽっちで足りるか?」


 「なんだかのだめ最近、あんまり食欲なくて……胸が苦しくって、あんまりお腹に入らないんデス……」


 「えっ……大丈夫か? どっか具合悪いとか……」


 甘い表情でのだめを覗き込み、本気でのだめを心配している真一に、すっかり真一から甘やかされることに慣れっこののだめ。そんな、街の中華屋には不似合いな雰囲気で、裏軒の空気を一瞬で甘味屋のように変えてしまう二人に、突然、爆弾が投下される。


 「千秋ってほんと鈍いよなー、それは恋の病≠セろ?」


 「「えっ!」」


 店主の息子である龍太郎は、友人たちがやってきたと聞き、自分の部屋から店に下りてくると、さらっとそんな言葉で無自覚な友人たちを先制攻撃した。


 「千秋、ビール飲むだろ? のだめもちょっと飲むか?」


 「お、おう……」


 「えと……じゃあちょっとだけ」


 龍太郎は、カウンターごしに父親から瓶ビールとグラスを受け取ると、友人と自分のグラスにビールを注ぎ、かんぱーい!≠ニ掛け声をかけると強制的にグラスをあわせ、一気に飲み干した。


 「ぷはー! うまいっ!
 ……なあ千秋、ちょっとお前に聞きたいことあんだけど?」


 真一は、グラスビールを飲みながら、龍太郎に視線をむける。


 「お前とのだめ、付き合い始めたのか?」


 「ぶほっっ!」


 真一が一気にビールを噴出す。


 「げ、千秋きったねーなぁ!」


 なんてことないという風に一人、千秋が噴出したビールをふき取る龍太郎に、顔を真っ赤にして固まっている千秋とのだめ。


 「な、なんで急に……そ、そんなこと……」


 真一がしどろもどろに答える。


 「だってさー! お前らすげーわかりやすいんだぜ?
 真澄ちゃんはまだ気付いてないみたいだけど。
 お前らがお互いを見つめる時、目はハートだし? お前らの周囲は薄桃色のオーラが充満して、ハートがぴゅんぴゅん飛びかってんだよー!
 気づくなってほうが無理だぜ?」


 「「……」」


 「千秋さ、自分からみんなに報告するのも恥ずかしいんだろ? わかるわかる!
 まあ、俺からそれとなく広めてやっから、安心しとけ!」


 「峰クンって、意外とするどいんデスね……」


 「頼むから、そっとしておいてくれ……」


 「そっとしておいてくれなんて言って、千秋って結構、やきもち焼きだからなー!
 事実を知らないで、痛い目に遭うヤツが可哀想だろ?」


 「……どういう意味だよ?」


 「お前さぁー、のだめと俺が初めて会ったとき、俺がのだめのこと名前で呼んだり、のだめに抱きつかれたりした時、すっげー怖い顔でにらんでてさぁ、全身から黒オーラでてたぜ?俺はあの時、マジで命の危険を感じた!」


 「……」


 「てかお前たち、否定しねーのな?」


 ありえないほど、真っ赤になって恥ずかしさに固まる真一とのだめ。


 「ぷーーーーーっ! おっ、お前らおもしれーーーー!」


 よしっ! もう一回カンパイだ!


 楽しげな龍太郎の笑い声。


 その晩は、龍太郎にいいようにからかわれて、反撃のできない真一とのだめだった。
 








 「くそ……峰のやつ。覚えてろよっ!」


 店を出たところで、真一は憎まれ口を叩きながらも、自分たちのことをよく理解してくれている友人に祝福されて、まんざらでもなさそうだ。


 そんな真一に、のだめがモジモジと尋ねる。


 「あの、先輩……」


 「ん? なに?」


 「先輩とのだめって……お、お付き合いしてるんデスか?」


 「……は?」


 「えと……先輩はこの前、のだめに好きだよって言ってくれて……ききききキスもしてくれて、のだめも先輩のことが好きですって言いましたケド……」


 「……けど?」


 「先輩はそのあと、お付き合いシマショウ! とか言うわけでもないし、のだめ、こういうのよくわからなくて……」


 「……う、うん……」


 「そもそも、お付き合いするって、どういうことなんでショウカ?」


 「えーと……ボケじゃねーんだよな?」


 「のだめはいつだって、本気120パーセントデスよ!」


 「……威張ってんじゃねーよ、はぁ……」


 「えと……ごめんなサイ。のだめ、変なこと聞いてマスよね?」


 「いや……俺がはっきり言わねーから悪いんだ。ごめん、不安にさせたよな?」


 真一は恥ずかしそうに微笑むと、帰り道の途中で通り掛かった公園にのだめを誘い、ぽつんと一つ、ライトに照らされたベンチに二人で腰かける。


 「あのさ……お互いを好きな男女がいるだろ? お、俺たちみたいに」


 「ぎゃぼっ! は、はい……」


 「俺たちはお互いの気持ちを知って、想いあっていることに気づいたよな?」


 「は、はい……」


 「そういう二人がデートしたり、キスをしたり……そういう男女のことを、世間では付き合ってるって言うんだと思う。だから俺たちは、そうした世間一般の見方によれば、付き合っている男女ということになるだろうな……」


 そういって、真一は恥ずかしそうに、それでも真っすぐにのだめの瞳を見つめながら言う。


 「……野田恵さん、俺とお付き合いしてくれますか?」


 のだめは予想もしてなかった真一からの言葉に驚き、両目を大きく見開き、口をぽかーんと開けたまま言葉もでない。


 「……おい、返事は?」


 「ぎゃ、ぎゃぼっ! は、はい、ふつつか者デスが、よろしくお願いしマス」


 「ぷっ! なんだその返事は……くっくっくっ……」


 がちがちに固まったのだめの可愛い返事に、真一がくすくすと笑い出す。


 「せ、先輩ひどいデス! のだめ、真剣なのにー!」


 「ご、ごめ……くっくっくっ……」


 「もー! のだめ一人で帰りマス!」


 「お、おい……」


 ふくれて、立ち上がろうとしたのだめの手を真一は引きよせると、そのまま 両腕の中にのだめを閉じ込め、美しい顔をのだめに近づけていく。


 「キスしてやるから、機嫌なおせ……」


 真一の黒い瞳が熱っぽく艶めき、見つめられたのだめは真一の腕の中で魔法をかけられたかのように動けなくなる。


 のだめ恥ずかしくて、先輩の顔、これ以上見ていられまセン……。


 瞳をとじれば、唇に優しいキスが降りてくる。


 のだめは、自分の身体が、まるで火がついたように熱く火照ってくるを感じる。


 先輩のキスは、甘くて熱くて、のだめはとろけちゃいそうデス……。


 のだめは徐々に身体が脱力していくのを感じ、真一の腕にすべてを委ねていった。








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 初学校内手つなぎ。初屋外キス。初……いいなぁ、初々しい二人。