芒果布甸/Mango pudding



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ボーイ/ミーツ/ラッキー☆ガール 28






 翌朝、目を覚ますと、真一はリビングの床に寝転がっており、身体にはブランケットが一枚、掛けられていた。


 「う、頭いてー……」


 昨日はのだめと鍋をやって、酒飲んでたんだよな?


 俺、なんでこんなところで寝てるんだ?


 テーブルの上は綺麗に片付けられ、部屋にのだめの姿はない。


 「俺、途中で寝ちゃったのか?
 何にも覚えてねーや……」


 二日酔いの頭をすっきりさせようと、寝ぼけた頭でバスルームに向かう。


 がちゃ。


 「ぎゃ、ぎゃぼーーーーっ!」


 「わっ、ごめんっっ!」


 バスルームには入浴中ののだめ。


 透き通るような白肌に、意外と女性的な曲線を描く身体のライン……。


 一瞬だったが、何も身につけていないのだめの身体を見てしまった真一は、その眩しい姿が強烈に脳裏に焼き付いてしまい……。


 どきどきどき……。


 び、びっくりした……てゆーか、俺が謝る必要あったのか?


 人んちの風呂に、無断で勝手に入ってるアイツが悪い!


 ……でかかったな(やっぱりそこ)


 やわらかいんだよな……ってなんでっ?!


 なぜか俺は、あの柔かそうなものの、感触を知っているような気がする。


 なんでだ?

 







 かちゃ。


 のだめがお風呂から上がり、おどおどとリビングに入ってきた。


 「お、お先にいただきまシタ……」


 「お前なぁ……」


 「ご、ごめんなサイ。先輩よく眠ってたから、まさか起きてくるとは思わなくて……」


 「はぁ……まぁいいけど。こ、こっちこそゴメン」


 「イエ、先輩が謝ることないデス。事故みたいなものデスから……。
 それより先輩、昨日のこと、覚えてマスか?」


 「あんまり……てゆーか、ほとんど覚えてない」


 「あは、そうデスよね?あんな先輩が正気なわけないデスよね……」


 「えっ!?お、俺お前になんか……言ったのか?
 その……変なこととか……」


 「イエ、変なことなんか言ってないデスよ?
 いつもより饒舌に熱く語ってまシタけど」


 「そ、そうか……じゃ、じゃあっ、なんかしたのか?俺……」


 「えと……したというか、してないというか……」


 「どっちなんだよ……」


 「どっちかというと、してない?」


 「……微妙なんだな?」


 「うーん、そデスね?まぁ、あれもきっと事故みたいなものなんでショウ。
 先輩が喜んでくれてたから、のだめはそれでいいデス。いつもお世話になってるお礼というか……」


 「はぁ?な、なんなんだよ?はっきり言ってくれ……」


 「いいんデス。酔って正気をなくしてる時のことなんか聞かされても、いいことありまセンよ?

 のだめがいいって言ってるんだから、大丈夫なんデス。
 これはのだめだけの秘密デス!」


 「……はぁ……」









 「こ、こんにちはっ!」


 「ど、どうも……今日はどんなご用?」


 野田恵がまた、突然私に会いにきた。


 「えと……女性として完璧な彩子さんに、ぜひ教えていただきたいことがあって……」


 「ふぅん……どんなことかしら?」


 「その……女性として、隙をつくらないというのは、どうしたらいいのかと思って……」


 「隙?急にまたそんなこと……どうして?」


 「えと、千秋先輩が言うには、のだめは隙がありすぎるんだそうデス」


 「まぁ、そうね?真一じゃなくても、それは思うわね?」


 「ぎゃぼ!そ、そなのデスか……」


 「それで?」


 「えと……ミルヒに2度も胸を揉まれたのは、のだめに隙があるからで、女は好きでもない男に体を触らせてはいけないと、怒られまシテ……」


 「まぁ……真一の言う通りよね?それで?」


 「えと……のだめはその……男から見ると意外とそそるんだから、十分気をつけろと……」


 「ふぅーん……」


 真一ったら、告白もしてないくせに彼氏づら?
 しかも、ダダ漏れだし……。


 「でものだめには、どうやったら隙をつくらないのか、十分に気をつけるということがよくわからなくて……」


 「まぁ、そうでしょうね……」


 「だ、だからこういうことは、女性として隙的なものが全く見当たらない、彩子サンに伺うのが一番ではないかと……」


 「あっそ……」


 隙が見当たらないって……まぁそうだろうけど……。


 「あのね、隙がまったくないって言われるのも、あんまり嬉しいものじゃないのよ?」


 「ぎゃぼ、それはすみまセン……」


 「いいのよ、どうせ悪気があって言ってるんじゃないことはわかってるから……」


 「はい、おっしゃる通りデス」


 「そうねぇ……野田さんは自分の女性としての価値はどの程度だと思ってるの?」


 「ほぇ?女性としての価値デスか?」


 「たぶんね、自分の女性としての価値がわかってる女性は、それに応じて、好きな男性の前と、そうじゃない男性の前で、自分の隙を調節するのよ」


 「隙を調整……」


 「そう。要するに、相手に気を許しているのかいないのか、相手を受け入れているのかいないのか、隙っていうのはそういうことじゃないかしら?

 野田さんって、誰に対してもオープンで、気を許しているというか……。
 真一が言ってる"好きでもない男に……"っていうのはそういうことだと思うわ。

 野田さんはきっと、自分のことなんか男性が女性として見てないだろうとか思ってるんじゃない?
 自分を過小評価してるというか、女としての自覚が薄いというか……。

 だから誰の前でも隙だらけになっちゃうのね」


 「はぁ……」


 「あなた、真一のことが好きなんでしょ?
 だったら真一以外の男性の前では、決して気を許さないことね?」


 「ふぉぉ……なるほど、とってもよくわかりまシタ!
 やっぱり彩子サンはさすがデス!ありがとうございまシタ!」


 「……どういたしまして」


 野田恵はぴょこんっ、と私にお辞儀をすると、ひょこひょこと弾むように帰っていった。


 ああ、イライラする……どうして私は恋敵にこんなこと教えてるんだろう?


 でも、なんだか野田さんってほっとけなくて……。


 それにしても真一ってば……本当に彼女のことが大事なのね。


 私も彼女みたいにもっと隙だらけだったら、真一があんなふうにむきになってくれたのかしら……。
 








 定期まで2週間を切った。


 なんとかこのSオケで「英雄」を形にしたい。


 俺は必死だった。


 譜面はどのパートも完璧に頭に入っている。


 あとはコイツらが俺の指示通りに演奏してくれればいいんだが……。


 どいつもこいつも譜面通りに演奏するどころか、余計なことばかりしやがって……。
 








 週末、リフレッシュしたから、千秋先輩はまたパワーアップした鬼指揮者になっていマス。


 大丈夫かな?


 のだめはSオケのマスコットガールとして、せめて先輩のお役に立てるように、練習を邪魔する人が来ないように、ホールの入口で見張り番デス!


 「あ、だめデス!Sオケの練習中デスから、関係者じゃない人は入らないでくだサイ!」


 男の人が、ホールに入ろうと扉に手をかけていたので、駆け寄りながら声をかける。


 見たことない顔だけど、桃ヶ丘の学生サンかな?


 「あれ?君は……」


 男の人がのだめのことをじっと見て、なにか考え込んでる。


 「あの……どちら様デスか?ホールには入っちゃだめデス」


 「俺、指揮科の松田幸久。
 野田恵ちゃんだよね?よろしく!」


 男の人は、そう言ってのだめに笑いかけると、右手を差し出してきた。


 えと、こういう時デスよね?さっき彩子サンから教わったことは……。


 千秋先輩以外の男性に、のだめは気を許しちゃだめなんデス!


 「あの……松田サンデスか?とにかく、中には入れまセンので、おひきとりくだサイ!」
 








 千秋のオケの進行状況を確認しようと、練習をしているホールに来てみたら……お、野田恵か、ちょうどいい。


 自己紹介をして、まず知り合いになっておかないとな。


 俺はイケメンモードに切り替え、野田恵にイケメンスマイルで微笑みかけたのだが……なんだコイツ?


 俺の差し出した右手を、まるで恐ろしいもののように、両手を背中に隠しておもいっきり拒否られた。


 俺の名前を聞いても知らないそぶりだし、千秋が事前に警戒させてるわけでもなさそうなのに……。


 「あ、あの、野田さん?俺、千秋の音高時代の同級生で、松田っていってね……」


 「アナタ、さてはAオケのスパイデスね?」


 「は?」


 「千秋先輩の知り合いなんて触れ込みがまず怪しいデス!
 ひとさらいもよく、"僕はお母さんの知り合いなんだよ?"とかって、子供を連れ去るんデス!

 とにかく、入っちゃだめデス!」


 「お、おい……」


 そういうと、彼女は俺の背中を両手で押しながら、建物の外に追い出そうとする。


 ばーんっ!


 「峰くん、待って!」


 「うわーーーんっ、千秋のバカァァー!」


 あれ、コンマスだよな?


 なんだ?ソファーに突っ伏して泣いてる?


 「峰くん逃げちゃだめ!もうちょっとだから、一緒に頑張ろう?」


 オケメンバーだろう、泣き崩れるコンマスをなだめすかしている。


 すると、ホールから、メンバーたちがぞろぞろと出てきた。


 「もう今日は終りだってよー」


 「くそっ、千秋のやつ、鬼だな?」


 「峰、泣くなよ?コンマスだろ?」


 「でもひどいわよねー、千秋くんの言い方」


 「そうだよっ、言い方ってもんがあるだろ?」


 「もう我慢できないっ!」


 「ボイコットしてやるっ!」


 口々に真一に対する不満をいいながら、散ってゆくメンバーたちを見て、松田はほくそえむ。


 「くっくっくっ……。千秋、相変わらずだな?
 指揮者がメンバーに嫌われたらおしまいだろ?
 俺が手を下すまでもねーか……」


 「あの……アナタは一体……」


 「野田恵ちゃん、俺は松田幸久。

 たぶん、近い将来、君の中で俺は、千秋なんかより存在が大きくなる予定だから。

 覚えておいて?

 じゃあ、千秋にせいぜい頑張れって、定期公演、楽しみにしてるって伝えておいて?」


 決まった!どうだ、野田恵?


 俺のかっこよさに、もうクラっと来てるだろ?


 松田は自分の台詞に満足をすると、後ろ手に手をふりながら、立ち去る。


 「ぎゃぼ……さっぱり意味がわかりまセン……
 とにかく、千秋先輩のピンチ?」


 のだめは呆然と、立ち去る松田の後ろすがたを見送るしかなかった。






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