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ボーイ/ミーツ/ラッキー☆ガール 24 野田恵が突然私に会いにきた。 「もうすぐ体が空くから……そうね、この前のカフェテリアで待っててくださる?」 「は、はい。すいまセン、突然……。じゃあ、お待ちしてマス」 ひょこひょこ。 小動物のような動きで立ち去る、野田恵の後姿を見送る。 「なんであんな……絶滅危惧種みたいな子。 真一も趣味が変わったのかしら? あんなライバル初めてだわ。戦い方がわかんないわよ……」 彩子は首をふりふり、レッスン室に戻っていった。 「お待たせしました。 ごめんなさいね?時間……大丈夫かしら?」 カフェテリアに着くと、野田恵はチェアに座って、両足をぷらぷらと振りながら、窓の外を眺めていた。 ぷ。子供みたいね? 本当にこの子、私と1つ違いなのかしら? 真一はピアノがすごいって言ってたけど……。 いわゆるギャップ萌えってやつかしらね? 彩子は、自分の向かい側に座るライバルを冷静に観察し始める。 顔は……まぁ、可愛いわよね。 色が透き通るように白くて……肌がすごく綺麗。 わ、若いせいよね?(1つだけだけど)。これはいい勝負よね? 化粧気がなくて、子供っぽいところは、絶対に真一のタイプじゃないと思うんだけど……。 まぁ……あえて言えば清楚な感じ? ……あ、大きい……。 ……これは絶対、真一好きよね(断言) これか!これがツボなのね、きっと! 彩子は真剣な表情で、のだめの一点を凝視している。 「あ、あの……彩子サン? のだめの胸……なんか変デスか?」 「えっ!?あ、ああ……ご、ごめんなさい? 野田さんって意外と……ぐ、グラマーなのね」 「へ?そデスか?」 「失礼だけど……何カップ?」 「え……Dデスけど……」 「そ、そう……(完敗)」 「あの……彩子サンって……そういう趣味の方だったんデスか? さ、彩子お姉サマって呼んだほうがいいデスか?」 「は?はぁぁ?!」 「と、ところで……今日はどんなご用件かしら?」 なんだか知らないけど、すこし顔を赤らめた野田恵が、ぽーっと私の顔を眺めているばかりなので、こちらから切り出してみる。 私の言葉に弾かれたように、あっ、と声をあげると突然野田恵は立ち上がった。 ぺこっ。 「せ、先日は……危ないところを助けていただいて、ありがとございまシタ。 おかげで乙女の貞操を守ることができまシタ。 今日はそのお礼を言いたくて……」 「ああ……そのことだったら、私は女性として当然のことをしたまでよ? 実際にあなたのことを助けたのは真一なんだし。 お礼なんていわれるほどのこと、してないわよ。 でも……あんなわかりやすい下心みえみえのエロじじい……。 野田さん、気がつかないって女性としてどうかと思うわよ?」 「は、はい……おっしゃる通りで……返す言葉もありまセン」 「どこで引っ掛けられたの? あんな外国人、見つけて来いっていうほうが難しいと思うんだけど……」 「はぁ……ガッコから家に帰る道々……。 でも、ミルヒは……あのエロじじいのことデスけど、すごいオジイサンだったみたいデスよ? 今は、千秋先輩の師匠デスし」 「はぁぁ?! それ、どういうこと?」 「えと……ミルヒは本当は……シュ、シュト……なんとかって名前の……有名な指揮者だそうデス。 桃ヶ丘にAオケの指導に来たらしいのデスが、ミルヒセレクトのスペシャルメンバーで結成されたSオケを発足させて……。 初練習のときに、のだめが……そのぉ……キスを迫られて、ミルヒの顔がその、こ、ここまで迫ってきて、のだめは怖くて正拳突きしちゃったんデスけど、ミルヒが動かなくなってしまったので、のだめはチャンスだと思って千秋先輩にSオケの指揮を頼んで……でも、先輩の指揮するSオケ、すごい破壊力で先輩も高い鼻がぽっきりで……ミルヒが「千秋、失格デス!」って言って……でも翌日になったら、先輩はミルヒの弟子になってたんデス。指揮科には転科させてもらえないみたいデスけど……」 「……さっぱりわかんないわね……」 「はぁ……のだめもデス……」 「おい……」 この天然さ加減……真一の超鈍感といい勝負ね。 「とにかく……今桃ヶ丘に来ているマエストロ・シュトレーゼマンが、この間のエロじじいだったってことね。 で……真一はマエストロの弟子になったと」 「はい……。 よかったデス。 先輩、今Sオケの副指揮者をミルヒから任せられていて……。 念願の指揮をオケストラで振ることができて、とっても楽しそうなんデス!」 そう言って、野田恵はまぶしいくらいの満面の笑顔を見せた。 女の私でもドキドキしちゃうような……恋する瞳? 「野田さん、あなたもしかして真一のこと……好きなの?」 「ぎゃぼ!えと……たぶん?」 「たぶんって……」 「あの……のだめはこゆう気持ちになるのがはじめてで……自分でもよくわからないんデス。 最初は……先輩とモツアルトを連弾したとき、胸がドキドキして……これが恋かな?って思ったんデスけど……。 でも先輩にいやな事言われて、すぐ大嫌いだって思って……。 でも、彩子サンが先輩の部屋に来た夜……おふたりの関係にのだめ、嫉妬?みたいな気持ちになって。 先輩のこと、すごく気になるようになって。 この前、のだめのこと助けに来てくれた先輩にやっぱり胸がときめいて……。 この感情はやっぱり……恋デスよね?」 「そ、そうね……。 ばっちり、どっぷり、はっきり恋しちゃってるわね」 「だから……ごめんなサイ。 のだめは彩子サンの気持ちにはお応えできまセン」 「……は?」 「彩子サンは……先輩の放置プレーに愛想をつかして、男嫌いになっちゃったんデスか?それで百合系に? はう……悲劇デス! 昔の男の人間性の酷さに男に幻滅して百合系に走る美しい女性!でも、その諸悪の根源である昔の男は、まだその美しい女性のことを……。 悲しすぎるじゃないデスか!!! だって、先輩は彩子サンのことが今でも好きなんデスよ?」 どこから突っ込めばいいんだか……ツッコミどころが多すぎよ! 「あ、あのね?私は百合系?とかいうのじゃないから! 普通にヘテロだから! それに……真一がまだ私を好き?……どうしてそんな風に思うの?」 「ほえ?ご、ごめんなサイ!のだめ……大変な誤解を! 乙女の貞操の恩人に向かって、重ね重ね申し訳ございまセン! どうしてって……この前、先輩がのだめを助けにきてくれたとき、どうして先輩が来てくれたのか訊ねたら、先輩は彩子サン1人じゃ心配だったからって言ってまシタよ?」 「そう……真一そんなこと言ったの……。 ま、まぁ……わかってくれればいいから。 この前のことはそんなに気にしないで? こちらこそ、わざわざお礼まで言いに来てくれて、ありがとう」 「は、はい! じゃ、のだめはそろそろ……ありがとうございまシタ」 野田恵は、もう一度立ち上がってぺこりとお辞儀をすると、またひょこひょこと小動物的な動きで帰っていった。 はぁ……私ってほんとバカみたい。 私の行動が、野田さんの天然無自覚恋心を覚醒させちゃったんだなんて……とんだ当て馬ね。 それに……真一が私に未練があるって誤解してるみたいだけど……。 真一は本当はあなたのことが好きなのよ? だからって、私が誤解を解いてあげる必要はないわよね? 好きなら好きって、真一が言うべきでしょ? 私だってそこまでお人よしじゃないわ。 一応、恋のライバルなんだから。 「真一!」 やっと見つけた。 最近の真一は忙しいみたいで、なかなかつかまえることができずにいた。 「あ……彩子?」 中庭のベンチで、総譜とにらめっこしてる。 「あなた……マエストロの弟子になったんですってね?」 「あ、ああ……」 「オケ……振ってるんでしょ?よかったじゃない」 「うん……よく知ってんな?そんなこと誰から聞いたんだ?」 「野田さんから。 この前、ホテルの件のお礼をわざわざ言いに来てくれたの」 「のだめが?そっか……」 「ねぇ……野田さんと真一……その後、進展あった?」 「はぁ?なんだよそれ……。 お前に関係ねーだろ?(きっぱり)」 ずきっ! ヒドイ。この男は本当にひどい。 なんで私、こんな男のこと、まだ好きなんだろう? 「そんな言い方することないんじゃない? この前、真一の大事な女の子の危機を救ってあげたのに」 「……ごめん。 なにもねーよ。てか、なんかする気もねーし」 「どうして?」 「どうしてって……。 俺はやっと、ここでもやれることを見つけたんだ。 のだめに会ってから……俺はいいことずくめで。 失いかけていた音楽への情熱とか、今、オケで指揮ができることとか……。 まずは今、自分ができることを精一杯やって……。 それにのだめのピアノ……あの才能もこのまま埋もれさせるつもりはないし。 俺の恋心とかなんかより……やらなきゃいけないことがいっぱいあるんだよ」 そういって、遠くを見つめるように、うっとりと野田さんのことを思う真一。 私はきっと、自分のことは二の次にしてお互いのことを強く思っている二人に嫉妬したんだと思う。 だからついつい……意地悪が言いたくなって。 「オケが指揮できるっていっても、海外に行けないのに変わりはないでしょ?」 「……」 「真一の願うように野田さんが上を目指して頑張ったとしたら、野田さん、真一を置いて海外に行っちゃうでしょうね」 「……かもな。 だから、いいんだよ。俺の気持ちなんて、どうでも……」 「そう……ならいいんだけど。 じゃあ、頑張ってね」 「……うん」 立ち去って、振り返ってみた真一は、うつむいて考え込んでいるようだった。 私を傷つけた罰よ。 そんな、ふわふわ幸せそうにしちゃって……。 どんなに頑張ったって、あなたは海外には行けない。 せいぜい苦しみなさい。 野田さんはあなたを置いて海外にいっちゃうかもしれないけど。 私は……たぶん待っててあげるから。 きっと音楽抜きになったら……私たち上手くいくわよ。 とある、ドイツ郊外の学生寮。 男は、日本の友人からのメールを読み、怒りにわなわなと震えていた。 「おのれ千秋真一……。 今度ばかりは絶対に許さねぇ! こんなドイツの田舎にいたからってなんだ? 俺様の才能をすれば、桃ヶ丘に戻ったって問題ないよな? 千秋、すぐにそっちに行って、お前を叩きのめしてやるから。 首を洗って待ってろよ? ひひひ……」 ぱたん。 男はノートPCを静かに閉じると、帰国のための準備を始める。 すでに気持ちは日本へと飛び、どうやって真一を痛めつけようかと、楽しい妄想に胸を膨らませて。 25へ> 大変!真一クンがピンチみたいです!!! どうしよう!くっくっくっ……(楽しくてしょうがないです) |