芒果布甸/Mango pudding



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ボーイ/ミーツ/ラッキー☆ガール 22






 「は?千秋真一の指揮科への転科?絶対に認めまセン!全力で阻止しマス!」


 ひさしぶりにのだめと過ごした週末。


 週明け、学校で峰から聞かされたニュースに、やっと俺にも希望の道が開かれたのかと喜んでみたが……。


 その希望は一瞬にして消えてしまった。


 「……はぁ……」


 「千秋いったいなにがあったんだよ?どうしてシュトレーゼマンにあんなに目の敵にされちゃってるわけ?」


 「……恥をかかせたうえに、頭突きまで食らわせたから」


 「はぁぁ?!一体どんな展開だよ?」


 「……俺にだって、さっぱり訳わかんねーよ……」


 どうして俺は、こうも上手くいかないのだろう?


 ていうか、シュトレーゼマンの人間性っていったい……。


 いっそのこと、週末のことをネタに、学長にチクられたくなければ転科させろって脅すか?


 「あ、チアキ、言っときますけど、ワタシのプライベートなネタを使って脅すようなことはやめておきナサイ。

 ワタシはこの学校では絶対デス!
 もし、変な噂でも立てるようなことがあったら……転科どころか、音楽を学ぶことすら出来ないようにしてアゲマス!」


 「……あんた、人として最低だな……」
   
 







 「のだめ!見た?Sオケメンバーの発表」


 「ふぉ?Sオケってなんデスか?」


 「マエストロ・シュトレーゼマンの選んだメンバーによるスペシャルオケらしいわ。
 あんた、メンバーに入ってたわよ?」


 「ふぉ?のだめがオケストラ?」


 マキちゃんたちに教えてもらって、のだめはSオケメンバーの発表を確認しにいきまシタ。


 「あ、のだめ!見て、真澄もSオケメンバーに選ばれたのよっ!光栄だわー!」


 「よう、のだめ!俺のことはな、今日からコンマスって呼んでくれ!」


 「ふぉ?真澄ちゃんも峰くんもSオケなんデスね?
 ところで……のだめのこの、マスコットガールというのは……シュトレーゼマンっていったい誰デスか?」


 「はぁぁ?あんたそれでも音大生なの?まったく……いい?シュトレーゼマンっていうのはね……きゃあ!マエストロよーっ!」


 噂の主シュトレーゼマンが、学生たちの羨望のまなざしを一身に受け、姿を現したのだが……。


 「のっだめちゃーんっ!」


 むぎゅっ。


 「ぎゃぼーーーーーっ!」


 突然のセクハラ行為に、のだめの正拳突きがヒットする。


 ざわざわ……騒然とする学生たち。


 よろよろと立ち上がったシュトレーゼマンに、のだめは涙ながらに訴える。


 「あ!あなたはミルヒーじゃないデスか!!
 ミルヒーってばひどいデス!のだめを騙して、酔わせた上で乙女の貞操を奪おうとしていたエロじじいだったんデスね!」


 「おー、それは誤解デース。ワタシは酔っ払ってしまったのだめちゃんを、ちょっと部屋で休ませてあげようとしていただけデスヨ?」


 「うそデス!のだめのことを、資金投入した獲物だっていってまシタ!」


 「そ、それは……ま、まぁいいじゃないデスカ?
 素敵な王子様が助けにきてくれたデショ?ワタシのお陰デスヨ?

 それに、ワタシはミルヒーではアリマセン、シュトレーゼマンデス。今日からワタシはのだめちゃんを指導する教師、そしてのだめちゃんはワタシのそばで疲れを癒してくれる、マスコットガールなのデス!」


 「「「え?」」」
   








 真一はがっくりと肩を落とし、一人家路を歩いていた。


 Sオケメンバーになった、峰や真澄は今日はさっそく顔合わせと称した飲み会らしい。


 あろうことか、ピアノののだめまでマスコットガールなどといった訳のわからないポジションでSオケに参加している。


 この前のことがあったので、のだめ本人も気をつけるとは思うが、それでも心配な真一は、峰と真澄にくれぐれものだめをシュトレーゼマンのセクハラから守るように頼んだのだが……。


 「はぁ……アイツら大丈夫かな……」
   








 「のだめちゃん、野球拳シマショウ!」


 「いやデス!ミルヒの裸なんて、のだめ見たくないデス!」


 「おい……あれ本物のシュトレーゼマンなのか?偽者じゃねーの?」


 「……本物だとしたら、信じたくないわね……」


 最初はシュトレーゼマンのSオケに入れることを喜んでいた峰と真澄だったが、真一から聞かされた週末の出来事や、目の前で繰り広げられているセクハラ三昧に早くも幻滅していた。


 「ミルヒー、千秋先輩の転科を邪魔してるって、本当デスか?」


 「はい、男の怨みは怖いデス。ワタシは千秋のことをゆるしマセン!」


 「ミルヒー、ひどいデス。千秋先輩は音楽が大好きで、指揮者を目指してるんデス。転科させてあげてクダサイ!」


 「……どうしてのだめちゃんが、そんなに千秋のことで必死になるのデスカ?」


 「え……それは……」


 のだめはシュトレーゼマンの質問に戸惑い、答えることができずうつむいてしまった。


 「あの……のだめはよくわからないけど……指揮者になるにはやっぱり、海外に行けないとだめデスか?」


 「ソウデスネー、やっぱりクラシックの本場はヨーロッパダカラネ」








 指揮者を目指して、誰よりも真摯に、音楽にひたむきな真一を、のだめはあの連弾を通して、強く感じとっていた。


 のだめには、クラシック音楽の世界でプロとして進むなんてこと、想像もつかないケド……きっと千秋先輩は、それができる人。


 理由はわからないけど……夢も情熱もあるのに、海外にいくことが出来ないなんて。


 千秋先輩、きっと悔しいだろうな。


 せめて、指揮科に転科したいっていう先輩の希望を、叶える方法はなにかないのでショウか……。









 翌日、のだめはSオケの初練習にむかうシュトレーゼマンに意を決してお願いすることにした。


 「ミルヒー、お願いデス。
 どうしたら千秋先輩を指揮科に転科させてくれマスか?
 ミルヒーはのだめのお友達デショ?だったらのだめのお願いも聞いてくだサイ!」


 「……のだめちゃんがそんなに言うなら、考えないわけでもアリマセン。
 もしのだめちゃんがワタシにキッスしてくれたら、千秋の転科を考えてあげてもイイデスヨ?」


 「キス……デスカ?」


 「はい。簡単デショ?
 欧米ではキッスなんて、挨拶デス!子供だってしてマスヨ?

 さぁ、のだめちゃん!いつでもウェルカムデスヨ?」


 じりっ……じりり……。


 シュトレーゼマンの顔が、のだめに近づいてくる。


 「は、はうう……」


 がつっ!!!


 ごんっ!ずるる……。


 シュトレーゼマンの顔面に、のだめの正拳突きがまたもやヒットした。


 シュトレーゼマンはそのまま、壁に後頭部をぶつけ、意識を失い、ずるずると座り込んでしまった。


 「あわわ、どうしまショウ……これからSオケの初練習なのに……。

 そだ!千秋先輩に指揮を振ってもらいまショウ!」


 のだめは、真一にSオケを振らせるため、校内に真一を探しに走りだしていた。






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