芒果布甸/Mango pudding



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ボーイ/ミーツ/ラッキー☆ガール 20






 峰のアドバイスにより、すっかり自信を取り戻した真一は、ヴァイオリンの試験でも素晴らしい伴奏をし、峰の窮地を救った。


 「千秋ってやっぱり天才だな……。

 来て欲しいときに来るお前のピアノ……。
 すげー絶妙なテクで、最高の安心感だったよ……」


 「そ、そうか?」


 「でもずるいよなぁ……お前みたいにヴァイオリンもピアノも完璧な奴って。
 俺だってできるもんなら、クラシックで生きていきてーよ……」


 「言っとくけどな、俺はヴァイオリンもピアノも3歳からやってんだ。ヴァイオリンなんか、それこそ高校までは朝から晩まで血反吐吐くまで……。

 苦手だから大学はピアノを選んだけど……俺は指揮者になりたいんだ。

 だからまだ……何ひとつ思い通りになんて、なってねーんだよ」


 「へぇ……指揮者か……」
 
 







 「なぁ……それよりどう思う?
 今日も、のだめのこと……誘ったほうがいいかな?」


 「そうだなぁ……ちょっと時間あけてみれば?

 ほら、"逢えない時間が愛育てるのさー"って、ヒロミ・ゴーも言ってんだろ?」


 「は?」


 「押してだめなら、引いてみろだよ!

 女もさ、毎日のように会っていた男が、突然何も言ってこなくなったら、"あら、どうしたのかしら?なんだか気になるわ?気になるってことは……好きっていうことかしら?"とかって思うんじゃねーの?」


 「なるほど……峰ってすげーな」


 「そ、そうか?
 まぁ、いうほど経験ねーんだけどなっ!」


 こうして真一は、峰のアドバイスどおりのだめを誘うのは控え、今夜も裏軒で男二人、音楽と恋の話で盛り上がるのであった。
 








 千秋先輩からは、昨日メールが来たあと、まだ連絡はありまセン。


 のだめが昨日断っちゃったから……気を悪くしちゃったかな?


 それとも……彩子サンと会ってるのかな?


 あわわ……のだめはどうしてこんなに千秋先輩のことばっかり、気になっちゃうのでショウか?


 学校から1人、マンションまで帰宅する間、のだめは思い悩みながら、ぼーっと足を進めていた。


 「そこのお嬢サン?ちょっとイイデスカ?」


 「ぎゃぼ!が、外人サン……」


 「そう……ワタシ、外国人で道とかワカリマセン。
 一人ぼっちでサビシイデス……。
 ホテルに帰る道もワカラナイし、一人ぼっちで食べるゴハン、サビシイデス……」


 「一人ぼっちで食べるごはん……」


 のだめも昨日、一人ぼっちでコンビニ弁当でシタ。


 美味しくないし……さびしいデス。


 「優しいお嬢サン、ワタシをホテルまで連れて行ってクダサイ。  お礼に美味しいモノ、ゴチソウシマス。
 お寿司でも焼肉でもなんでもイイデスヨ?」


 「ふぉぉ……お寿司に焼肉……」
 








 彩子は、ちょっとした自己嫌悪に落ち込んでいた。


 野田恵と真一の前であろうことか涙ぐんでしまい、真一にかばってもらうなんていう醜態をさらしてしまったから、昨日はせめて謝っておこうと野田恵のところに行ったのに。


 自分のことを"戦友"だなんてぼかすにもほどのある真一の言い草にイラついて、つい自分と真一の付き合いの深さをほのめかすような発言をしてしまい……。


 恥ずかしい!多賀谷彩子ともあろうものが、元カレに執着するなんて!


 しかも、元カレが好きな女の子に、あんな話して張り合うようなこと……。


 彩子はプライドが高く、自己中心的で、底意地の悪い(千秋談)ところもあるが……その分、自分の行動は常に誇り高く、美しいものでありたいと思っており、決して根の悪い女ではない。


 真一が、私とやりなおしたいっていうんなら考えてやってもいいけど、だからってもし真一と彼女が……恋愛感情を持っているのなら……それを邪魔してまでなんて……絶対に嫌!私のプライドが許さないわ!


 「彩子どうしたの?
 お寿司、気に入らない?」


 「いいえ、とっても美味しいわ。
 でもちょっと、体調が悪くて。あまり食欲がないだけ……」


 母親と二人、気分転換にと思ってお気に入りのお店に来てみたが、食事なんかではこの落ち込みは解消されることもなく……。


 「むっきゃぁーーーーっ!
 うにっ!あわびっ!アンブレーラッッ!!!」


 「まぁいやねぇ?
 この店も、品のないお客が来るようになったのかしら?」


 母親の言葉に、奇声の上がる方向に視線を向ければ……。


 はっ!あれは野田恵?


 ホテル内の高級すし店。カウンターに年配の外国人紳士と座り、がつがつと寿司を食べている。


 うわ……あの年寄り……下心みえみえじゃない!


 あの、野田さんを見つめる目。まるで獲物を太らせて、美味しくなったところを食べてやろうと舌なめずりするケダモノのよう……。


 それに対して、野田さんったら……。


 全然、気付いてないわね。


 うわ……お酒も飲まされてるし……。


 このままじゃ、酔っ払わされて、上のホテルの部屋に連れ込まれるのが関の山ね……。


 「お母様、ちょっと失礼?」


 彩子は店を出て、ロビーのソファーに腰をかけると、真一にメールをする。


 これは私から……せめてものお詫びよ。


 負い目なしに、戦うなら正々堂々と戦いたいから。









 "彩子です。

 今、……ホテルのお寿司屋さんに来てるんだけど、野田さんが下心みえみえのエロオヤジと一緒に、カウンター席で食事してるの。

 彼女、そういうの疎いみたいだし。
 お酒も結構飲まされてるみたいで……危ないんじゃない?

 私が助けてもいいけど……万が一ってこともあるし。
 男性に来てもらったほうが安心だわ。

 じゃあね。

 P.S この間はありがとう"


 「ん?メールだ……。
 彩子?……やばいっ!峰、俺ちょっと行ってくる」


 「あ?なんだ?どうした?」


 「ちょっと急ぐから!また明日!」


 真一は慌てて店を飛び出し、大通りに出てタクシーをつかまえると、ホテルへと急がせる。


 「くそ……頼むから間に合ってくれよ?」


 祈るような気持ちで、車窓から流れてゆく街並みを目で追う。


 ホテルのエントランスが見えると、真一はタクシーをとめ、釣りも受け取らず、ホテルに走りこんだ。









 がたんっ!


 静まり返る、店内に駆け込んだ。


 「あ、真一!」


 「彩子?のだめは?」


 「今ちょうど、会計して出て行ったところ。
 もうちょっと遅かったら、私が行こうと思ってたんだけど、会わなかった?」


 「っっ!」


 慌てて店を飛び出し、通路を見渡す。


 すると、来た通路と逆方向の通路の先にふらふらで足元のおぼつかないのだめらしき女性の腰を抱きかかえる、いかにも下心みえみえの初老の外国人男性が目に飛び込んできた。


 「のだめっっ!」


 真一の呼びかけに、ゆっくりとのだめが振り向く。


 「ほえ?千秋……せんぱ?」


 「げ!あれはお嬢サンの彼氏デスか?」


 「いいえ?音大の先輩デス!
 千秋せんぱーいっ!」


 ご機嫌でのん気に手を振るのだめの元に、真一が息を切って駆けつける。


 「はーはー……お前、何やってんだよっ!」


 「ほえ?のだめは困っていた外国人のオジイサンを助けただけデスよ?」


 「はぁ……」


 「これから、ホテルのお部屋まで連れて行ってあげようと……。
 それが何か?」


 「そっか……じゃあ、俺も一緒に行く。
 じーさんを部屋まで送ったら、お前は俺と一緒に帰ろう」


 「ふぉ!そうしてもらえると助かりマス!
 のだめ、さっきからなんだか……目の前がぐるぐる回ってて、上手く歩けないんデス……」


 「オー!お兄サン、それはイケマセン!お兄サンは来ないでクダサイ!」


 「それはなんでだ?じじい……」


 「えっ!いやその……見ず知らずのお兄サンの手を煩わせては、申し訳アリマセンカラ!」


 「のだめのことは見ず知らずじゃねーのか?」


 「ノダメチャンは、一人ぼっちのワタシ、助けてクレマシタ。
 命のオンジンデス!ふらふらしてマシタカラ、部屋で休ませてあげマス!
 お兄サンは、おひきとりクダサイ!」


 「じじい……お前がのだめをわざとフラフラさせたんじゃねーのか?」


 「オー!それではまるで、ワタシがレイプ犯のようじゃないデスカ?
 ワタシ、とっても傷つきマシタ!」


 「そデスよ、先輩。ミルヒーは、美味しいおすしをごちそうしてくれた、とってもいいおじいさんデスよ?」


 「ミルヒー?」


 「はいっ!ミルヒー・ホルスタインさんデス!」


 「思いっきり偽名じゃねーか……」


 「ぎゃぼっ!」


 真一は、のだめの腰にまわった外国人紳士、ミルヒー・ホルスタインの手を振り解くと、今度は自分がしっかりと腰を抱き寄せ、のだめの腕を真一の肩にまわした。


 「じじい、どっちか選べ。
 このまま一緒にホテルの部屋まで行くか、それともここで別れるか」


 「はぁ?その意味不明な二択はナンデスカ?
 ノダメチャンは今夜ワタシが資金投入した獲物デス!
 返しナサイ!」


 老人とはいえ、体格では真一に負けていないミルヒー・ホルスタインが、のだめを奪い返そうとする。


 「のだめに触るんじゃねぇ!」


 ごつっ!


 「ぎゃ、ぎゃぼ!」


 真一の頭突きがミルヒー・ホルスタインにヒットした。


 ふらふら……ぺたん。


 「じゃあな、じじい。ここでお別れだ。

 そうだこれ、ここに来る途中でタクシーの中にあったからお前にやるよ」


 ひらりっ。


 そういい残すと、真一は壁にもたれて通路に座り込むミルヒー・ホルスタインの上に、風俗のチラシを投げつけると、のだめを抱きかかえて立ち去った。


 わなわな……。


 この恨み……絶対にワスレマセン!


 ワタシの権力の全てを使って……あの男を完膚なきまでに叩き潰してヤリマス!






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 ついにミルヒーが登場です!
 やばいよー!真一クン、頭突きしちゃったよ(笑)