芒果布甸/Mango pudding



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ボーイ/ミーツ/ラッキー☆ガール 15






 「……お前、ヴァイオリン下手くそだな……」


 峰との初共演は、予想通り最悪の結果に終わった。


 「なっ!悪かったなっ!嫌なら……」


 「いや……お前の演奏、面白いよ。
 でももう少し、俺の音も聴け……」


 真一の伴奏も聴かず走りまくり、春なのに落雷が鳴り響くような峰の演奏に、最初はやめてしまおうかとも思ったのだが……。


 なんだかアイツに似てるんだよな……。


 こんな独りよがりな演奏、合わせられるのは俺様くらいだろ?


 「……え?伴奏、やってくれんの?」


 「ん?やるって言ってんだろ?
 それとも、俺のピアノに不満でもあんのか?」


 「い、いやっ……あの……千秋ってさ、ピアノ上手いけど、すげーいやな奴だって噂だったからさ……。

 お前って意外といい奴じゃん?」


 「は?
 くだらねーこと言ってねーで、練習するぞ?」


 無駄なことなんて一つもないんだ、きっと。


 尊敬するベートーヴェン様の音楽だ。


 俺も精一杯、今、自分ができる演奏をしよう。


 「それにしても……お前の金髪、なんか見覚えあるんだよな?
 しかも1年の時。
 お前……2年だって言ってたよな?
 3年の俺が1年の時に、お前に会ってたなんて……ありえねーよな?」


 「……留年したんだよ……」


 「は?留年?どうやったら留年なんてできるんだ?」


 「……お前ってやっぱり、すげーやな奴だな……」








 「……俺、姿見えてるか?灰になっちまった気がするんだけど……」


 真一の鬼のような指導により、みっちりとしごかれた龍太郎は、疲れ果て、自信を喪失して、がっくりと肩を落としていた。


 「……見えてるよ。
 燃えかすみたい、だけどな」


 「けっ、ひでーなぁ」


 「くっくっくっ……」


 「お、千秋が笑った!」


 「……人をバケモンみたいに言うな」


 「くっくっくっ……千秋って噂に聞いてたほど、いやな奴じゃねーな?
 まぁでも、さっきまでのお前は、ちょっと死相が出てたけど……」


 「え?」


 「まぁ、普段のお前なんて、今日初めて会ったばっかでわかんねーけど、それにしても、ひでー顔だったぜ。
 女に振られでもしたのか?(バカほど勘がいい)」


 「……(ずきっ!)」


 「まぁ、少し元気になったみたいでよかった……。
 な、ちょっと寄っていかねーか?」


 「……裏軒?」


 「ここ、俺ん家なんだよ」


 「へぇ……」


 がらっ!


 そういって龍太郎は扉をあけると、"親父ぃー!ただいまー!"と店の主人に声をかけ、真一に向かい中に入るように目配せをした。









 「ふぃぃー。ここなら粘着サンも追いかけてこないデスよね?」


 のだめは、人気のない学校屋上のベンチに腰掛け、ほっと一息ついていた。


 かっ!


 「ま、まぶしいデスよっ!」


 突然、屋外なのにもかかわらず、ライトを顔の間近で照らされ、のだめは眩しさに手をかざしてさえぎろうとしたが……。


 がしっ!


 「ぎゃぼっ!な、何するんデスかー!」


 その腕をがっしりと掴む、石川伶奈。


 「のだめっ!今日という今日は、胃液吐くまで残らずゲロしてもらうわよっ!」


 ライトを手に、恫喝するのは田中真紀子。


 「マキちゃんとレイナちゃん……のだめ、今日はおべんと盗んでないデスよ?」


 「しらばっくれてんじゃないわよっ!千秋様のことに決まってんでしょ?!」


 「はぁ……あの粘着サンデスか……」


 「ね、粘着ぅ?
 のだめ、どういうことよ?アンタなんかが、どうして千秋様と……」


 のだめの台詞に驚き、白目状態のマキ。


 「そうよー!
 私なんか昨日、突然千秋様に呼びとめられて、"君、野田さんの友達だよね?彼女、今どこにいるかな?"って聞かれたのよ?

 のだめの居場所を教えてあげたら、すごい血相ですっとんでいったわ……ぴゅーって。あの千秋様がよ?!」


 レイナも自分の目にしたものが信じられないとでもいうように、首を振る。


 「そうよっ!
 そのあと、のだめを追いかけてきた千秋様、ぜーぜー言いながら"のだめっ、話がしたいんだ!少しでいいから俺に時間をくれっ!"って、教室の入り口でのだめを見つめながら叫んで……。

 なのにあんたったら、返事もしないで教室を飛び出していっちゃって、それをまた千秋様が"ま、待ってくれっ!"って、すごい勢いで追いかけていって……。

 あんな千秋様、見たことないもの……。
 驚くし、ちょっと幻滅だし……。

 それにっ!
 千秋様をあんなふうにしている張本人が、のだめ!アンタだなんて全く理解に苦しむわよ!」


 「そうよ!私たちにわかるように説明してよ!
 千秋様はいったい、あんたにとってなんなのよ!」


 ぜーはー……。


 肩で息をしながら、のだめに詰め寄るマキとレイナに、のだめはため息をついてベンチから立ち上がると、俯いたまま低い声でつぶやく。


 「千秋真一なんて……ただの音楽バカの、オンナ心もわからない、最低ヤローデスよ!!!」


 きっ!


 のだめが顔をあげる。


 長い付き合いのふたりですら、見たことも無いようなのだめの怒りの表情。


 「ちょ……アンタいったい……」


 「今度、千秋真一にのだめのことを聞かれたら……。
 のだめは死んだって伝えてくだサイ」


 くるっ。


 すたすたすた……。


 「「……」」


 のだめのあまりの迫力に、ただ立ち尽くし見送るしかない、マキとレイナであった。
 








 「千秋真一がなんだって言うんデスか……」


 マキ&レイナの取調べから逃げ出し、屋上のドアをあけ、薄暗い階段室に足を踏み入れたときだった。


 「野田恵……今日という今日は許さないわよ?」


 暗がり、背後から聞こえた低く響く声。


 恐ろしさにゆっくりと振り返ると……。


 「ぎゃぼっ!り、リアルもじゃミちゃん?!」


 「はぁ?!なによそれっ!
 わ、私はねっ、管弦楽科3年、奥山真澄よっ!

 野田恵っ!今日はアンタと決闘するためにやってきたわ!」


 「け、ケットウ?」


 「そう……私の愛するアポロン、千秋様を勝ち得るために。
 真の愛情を持って、アンタを地獄送りにしてやるわっ!!!」


 「ほわぉ……もじゃミちゃんが、王子サマのために、愛の決闘デスね?」


 「はぁぁ?!だからっ!私は真澄よっ!」








 「これっ!ネタはあがってんのよ!」


 真澄に腕をつかまれ、連れてこられたレッスン室で、のだめは叩きつけられた写真に目をやる。


 そこには、スーパー店内を仲良く腕を組み、買い物をする真一とのだめが映っていた。


 「それから……これもっ!」


 のだめ部屋を掃除したあと、のだめ部屋のベランダで洗濯物干しにいそしむ真一の姿や、お互いの部屋に出入りする姿をおさめた写真。


 「ぎゃぼ……」


 「私の愛するアポロン……千秋様の背景に突然現れた小汚い小娘。

 私のこの……胸の苦しみがアンタにわかるっ?!
 でも……見て?千秋様、ちょっと楽しそうなのよ……」


 「え?」


 ばさっ!


 驚きの表情を浮かべるのだめに、真澄はさらに写真の束をたたきつける。


 「問題はねっ!こっちよ、こっち!
 ここ1週間ほどの、千秋様の様子ったら……(涙)」

 「ぎゃぼ……」


 マンションのベランダで、隔てを乗り越えのだめ部屋を覗き込む真一。


 のだめ部屋のドアをどんどんと叩きつける真一。


 ドアの隙間から、ビーフシチュー鍋がのだめ部屋に消えるのを見守る真一。


 学校内でのだめに逃げられ、追いかける真一。


 まんまと逃げ切られ、肩で息をしながら、のだめの後姿を見送る真一。


 「あのぉ……ベランダとか、廊下とか、どやって撮影したんデスか?これすごい望遠デスよね?
 盗撮は犯罪デスよ?」


 「うるさいっ!
 私の愛のファインダーが捉えたのよっ!

 見て……この千秋様を。

 寂しげで悲しそうな……憂いのある瞳。

 こんな表情をする千秋様……一度も見たことがなかったのに。

 それになにより……千秋様をこんな姿にしたのが……アンタ!
 野田恵っていうのが、なにより許せないのよっ!!!」


 ぴしっ!


 真澄は、怒りの表情で、のだめに向かって人差指を突きつける。


 「野田恵っ!私と勝負しなさいっ!」


 「ぎゃぼ……」


 のだめは突然の展開に驚き、唖然として立ちつくしていた。





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 真一クンを罵るのは(のだめに罵らせるのは)ご本人の前ではないですが、いやぁ、気持ちよかったです(真性S)

 あと、真一クンの恥ずかしい写真とか、思い浮かべては……(笑)

 次回はいよいよ、のだめと真澄ちゃんの対決です!