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ボーイ/ミーツ/ラッキー☆ガール 11 俺は自覚してしまった。 とことん自分がのだめに甘いことを。 まぁ好きだから……仕方ないのかもしれないけど(さらり) これからアイツにピアニストを、もっと上を目指してもらうには、このままの俺じゃだめだって思う。 がちゃっ。 「千秋せんぱーいっ!こんばんはっ!」 「おう……」 「今日の夕飯はなんデスか?」 「和食にしてみた。お前、米が好きみたいだから……」 「むきゃー!呪文料理もいいデスけど、和食も大好きデスよ!」 「そっか……よかった」 最近、のだめの大好きという言葉に、俺の体はぞくぞくする。快感を覚えてしまった。 だからついつい……アイツが好きそうなものばかり用意してしまう。 メシ……は仕方ないとして。 ピアノは厳しく……しないとな。 メシのあとは、毎晩のだめのピアノレッスン。 毎日風呂に入るようになった(はずの)アイツからは、異臭はしなくなってきて、寧ろアイツの横に立ってレッスンしていると、ほのかなシャンプーの甘い香りが漂ってくるようになってきて……。 だめだっ、俺!ピアノに集中だ! ゆったりとした、甘いささやきのような第2楽章が終わり、いよいよ終楽章。第1、第2楽章と同じソナタ形式ではなくロンド形式で、第一楽章のような楽しく弾むような旋律と、ダイナミックな旋律が繰り返し奏でられる。 「ふぃーーーー。大変でシタけど、最後までつっかえずに弾けまシタよ?」 "先輩、どでシタ?" のだめが俺を見上げる。 「う、うん……そうだな……」 のだめはここ数日のレッスンのお陰で、楽譜どおり弾けるようになってきた。 もちろん、そのためにレッスンしてきたから、当然なんだけど……。 なんだかすっきりしない。 俺を惹き付けてやまない、あののだめの色鮮やかなピアノが影をひそめてしまった。 間違ったことをしているわけじゃないのに……。 俺はどうしたらいいんだろう……。 明日のレッスンを控えて、真一は頭を悩ませていた。 がちゃっ。 「の、のだめ入りマスっ!」 「ぷっ。お前なに緊張してるんだ?」 2台並んだピアノに腰掛ける。 「じゃ、やります」 「うん、がんばってねー」 谷岡は相変わらず、憎たらしいくらい楽しそうに余裕で笑ってやがる。 隣ののだめは、緊張でがちがちになってるし……。 「のだめ……おい、のだめ?」 「はっ、はいっ」 俺を振り返ったのだめは……緊張に表情はこわばり、握り締めた両手は小刻みに震えている。 「適当に……今日は自由に弾いていいから」 「え?」 コイツに正しく弾かせることも大事だけど……。 まずはコイツにピアノをもっと頑張りたいと思ってもらいたい。 コイツのクセは、この数日で把握した。 俺様なら……コイツのどんな演奏にも合わせられる。 だから俺が、コイツの今最高の演奏を……引き出してみせる! 自由に弾いていいと言ったとたん……本当にのだめは自由に弾きはじめやがった。 でも、俺がどんな演奏でも合わせてやる! 早いし、走るし、飛ぶし、跳ねるし……。 それなのに……。 ああ、なんだこれ……。 すげー気持ちいい……。 アイツのピアノに俺が応えると、アイツがさらに俺のピアノに応えるように……。 もうどこまでが俺のピアノで、どこからがアイツのピアノなのか……。 音が混ざり合って……。 今、のだめと俺は、完全にひとつになってる。 ヴィエラ先生は言った。身震いするほど感動する演奏ができることなんて、本当に稀なことだって……。 俺はそんな瞬間を夢見ながらも、のだめに出会う前までは、そんな瞬間には出会えないだろうと諦めていた。 それなのに今、俺は……確かに小さな身震いを感じている。 俺にも……この日本でやれることがあるのか? 「ブ、ブラボー……」 演奏が終わって、放心状態の俺に谷岡が言った。 「よかったねぇ千秋くん。なんだか壁、乗り越えたみたいで」 え……俺のためのレッスンだったのか! 「くそ……あのたぬき教師……」 でも、のだめとの連弾は、予想以上の気持ちよさで……最高だった。 それだけでも谷岡には、感謝しないとな。 のだめは……この連弾でなにか感じてくれただろうか? レッスン室をあとにして、俺のうしろを歩くのだめは、さっきから黙ったままだ。 「のだめ……今日はこれからどうするんだ? 今日も夕飯、うちで食べるなら……ちょっと早いけど一緒に……買い物でもいかねーか? お前もレッスンよく頑張ったから……まぁ楽譜どおりとはいかなかったけど……ご褒美ってわけじゃねーけど、なんかデザートでも買って……」 振り向くと、のだめは俯いたまま立ち止まっていた。 「どうした?腹が減って、うごけねーのか?(んなあほな)」 「先輩の背中……とびつきたくてドキドキしマス……」 「え?」 顔を上げたのだめは、頬を桃色に染め、瞳をキラキラと輝かせて、俺を上目遣いで恥ずかしげに見つめている。 「これってフォーリンラブ……デスかっ?!」 「はぁ?!」 「はぅー。胸がキューン……って苦しいんデス。 のだめ、こんな気持ちになったことは初めてで……。 先輩、教えてくだサイ。 これは……この気持ちは……のだめが千秋先輩に恋をしたっていうことなんでショウか?!」 のだめが……俺に恋をした? ……なんで? いやいやいやっ!恋に理由なんてないだろう? そのことは、最近、恋に落ちたばかりの俺が一番よく知っている。 俺がのだめのピアノに惹かれて恋に落ちたように、のだめも俺との連弾で、俺様の包み込むような演奏に、恋に落ちたのか? まぁ、そうなんだろうな(うぬぼれやさん) やっぱり俺とのだめは……出会うべくして出会った運命の2人なんだ。 恋に落ちるのも宇宙の摂理なんだろう、うん。 ということは……すなわち、俺とのだめは、お互いにお互いのことが好きだということだから……。 え?ええええっっっ!!! 俺の恋……、実っちゃったのか? これから俺たちは、恋人同士として……ら、ラブラブな学生生活を……送っちゃったり……して? ええええっっっ! う、嘘だろーーーーっ!!! 12へ> なにをそんなに、あなたは慌てているの?(笑) さて、なにやら突然、恋が実っちゃった真一クン。 このまま、うまくいっちゃうんでしょうか? ふっふっふっ……。 |