芒果布甸/Mango pudding



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ボーイ/ミーツ/ラッキー☆ガール 10






 のだめ、最近とっても生活が充実しているんデス!


 それは……最近知り合った人。千秋真一サンのおかげ。


 ガッコの先輩で、隣人で……新しいお友達デス。


 初めて会ったのは……レッスン室。


 ドアのガラス窓から、険しい表情で覗き込まれてまシタ。


 ちょっと怖かったけど……のだめのピアノが気に入ったから、中で聴いてもいいかってレッスン室に入ってきた。


 背が高くて、とっても綺麗な顔の先輩は、窓辺に立つと映画のワンシーンのようで、のだめは見とれてしまいまシタ。


 そのあと、悲愴を聴いてくれた先輩は、のだめのピアノをとっても褒めてくれて……。


 自分のピアノを、他の人に聴いてもらって、そんな風に褒めてもらうなんて初めての経験で、ちょっと緊張したケド、すっごく嬉しかった。


 のだめはピアノを弾くのが好き。


 自由に、おもうがままに、自分の好きなように鍵盤に指を走らせる。


 かっちりと正しく楽譜どおりに弾くのは……とっても苦手デス。


 だからのだめの夢は、幼稚園の先生になって、子供たちが喜ぶような楽しい音楽を弾いて、歌って……。それが一番自分に合ってると思いマス。


 翌日も、千秋先輩はレッスン室にやってきた。


 のだめの即興で弾いていたオリジナルを、面白いって言ってくれた。


 もう一度って言われて、感じるままに鍵盤を叩けば、さっきと違うって指摘されて……。


 すごいなぁ。一度聴いただけで、正確に覚えているなんて。


 千秋先輩に導かれるように、2人で1つの曲を完成させて。


 先輩は、それを楽譜にまでしてくれた。


 こんなことは初めて。ちゃんと1曲完成させるって、とっても気持ちいいことなんデスね?


 翌日はレッスン室には行けなかったんだケド……なんとお家に帰ったら、廊下の前に千秋先輩がいたんデス。


 ほわぉ……お隣サンだったんデスね?


 ご縁がありマスね?って言ったら、先輩はぎこちなく笑ってた。


 でも、そのあと、先輩の部屋で手料理をごちそうしてくれて……。


 呪文料理!のだめ、あんなに美味しいお料理は、生まれてはじめて食べまシタ!


 これからも食べにくれば?って誘ってくれて……仕送りで毎月ひーひーしてるのだめには、とっても大助かりデスけど……いいのでショウか?


 あれから毎日のようにお邪魔してるケド……先輩は1人分も2人分も手間は一緒だって言うケド……どうしてこんなに優しくしてくれるのカナ?


 世の中には、とっても親切な人がいるんデスね。


 この東京砂漠も、捨てたモンじゃないデスよ!









 谷岡センセとのレッスンは、幼稚園の先生になってから子供たちに音楽の楽しさを知ってもらえるような、音楽の勉強をしていマス。


 今は紙芝居「もじゃミ♪ちゃんの虹」につける組曲を制作していマス。


 去年11曲まで作って、今年は最後の1曲を作る予定。


 ところが、この前レッスンに行ったら……ふぉ?千秋先輩?


 のだめのピアノに惚れこんだって……連弾したいって……ぷぷぷ、千秋先輩ったら、ほんとにのだめのピアノが好きなんデスね?


 谷岡センセは、千秋先輩のこと、"桃ヶ丘一のピアノの腕前"って言いまシタ。ふぉぉ……千秋先輩ってすごい人だったんデスね?


 面白そうデス!


 それに……千秋先輩とだったら、なんだか楽しい音楽が奏でられそうな気がして……。


 のだめは千秋先輩と連弾をすることにしたんデス。









 「えと……ここは……あ、そうか……」


 昨日、千秋先輩は夕食をごちそうしてくれたあと、のだめのために連弾の曲をファースト、セカンドと弾いてくれた。


 千秋先輩の演奏は、本当に楽譜どおりで……。


 先輩の演奏、正確なんデスね?って言ったら、先輩は指揮者になりたいんだって言った。


 音楽を尊敬しているから……楽譜に忠実に音楽を再現することは当たり前なんだって……。


 のだめも頑張って、楽譜どおりに弾いたら、18世紀のモーツァルトと同じ音楽になるんだって……ふぉぉ!しゅごいデス!


 先輩に教えてもらいながら、楽譜どおり、忠実にピアノを奏でること、のだめは努力していマス。


 モツアルトと同じ音楽を奏でてみたいカラ……。


 のだめは、ゴミ溜めのような散かり放題の自室のピアノで、モーツァルトの音楽の世界に没頭して、楽譜と鍵盤だけを見つめ、夢中でピアノと対峙していた。









 そろそろ最終楽章……。


 できたっ!


 じゅわわーーーーーっ。


 音でわかる、焼き加減。


 今日も地鶏のカプリ風がうまいぐあいに仕上がった。


 なのに……のだめはやってこない。


 レッスン室には寄らないとメールはもらっていたけど……。


 夕食は用意しておくから、来るようにメールしておいたのに。


 携帯に思い切って電話してみたけど……留守電に繋がって出てもらえない。


 昨日……レッスン厳しくやりすぎたか?


 それとも……喜んでいたように見えたけど、付き合ってもいない男に髪をシャンプーされるなんて……やっぱりショックだったとか?


 1日顔を見てないだけで、逢いたくて、切なくて、胸が苦しい。


 壁一枚隔てた隣室の様子をそっと伺ってみるも、防音のきいた部屋でわかるはずもなく……。


 くそっ!


 気がつくと俺は、のだめの部屋のドアの前に立っていた。


 ピンポーン。


 しーん……。


 どんどんっ!


 しーん……。


 「おーいっ!のだめ?」


 がちゃ。


 「げ、開いてる……?」


 おそるおそるドアを開け、中の様子を伺う。


 「うっ……」


 玄関先から広がる光景は……。


 真一はその光景に、一瞬にして凍りついた。


 乱雑に荒らされた部屋。の、のだめは……?!


 無我夢中で部屋の奥に進む。


 「のだめっ!のだめっっ!!!」


 視線の先には、乱雑に散かった部屋の中、ピアノチェアに座り、楽譜を一心に見つめながらぶつぶつと何かに取り付かれたように呟く、放心状態ののだめだった。


 はっ!これは……PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状かっ!(大誤解)


 真一の顔は青ざめ、体は小刻みに震える。


 のだめの部屋に強盗が入る→部屋が荒らされる→そこに戻ってきたのだめ→口封じのためにのだめは……ひぃぃぃっ!!!


 真一は、震える体でなんとかのだめに向かって進む。


 のだめの横に立ち、そっと声を掛ける。


 「の、のだめ?大丈夫か?」


 「……ほぇ?千秋……せんぱい?」









 のだめがゆっくりと俺を見上げる。


 顔色は青ざめ、目はうつろで……。


 俺はあまりの恐ろしさにそっとのだめに両手をのばし、その華奢な肩を掴み、のだめが間違いなくそこに存在していることを確認する。


 「せんぱ、い?……どしまシタ?」


 切れ切れの言葉を紡ぐのだめに、胸がいっぱいになる。


 見える範囲で、傷つけられた様子は見えないが……。


 「のだめ?大丈夫か?どこか……痛いところはないか?」


 「へ?痛いとこデスか?とくにないデスけど……」


 ショック状態で、何も感じられないのかっ!


 「のだめ……もう大丈夫だ。俺がそばにいるからな……」


 「……はい?」


 「なにか俺に……してほしいことはないか?」


 「……えと……先輩にはもう、望む以上のことをしてもらってマスから、大丈夫デスよ?」


 ああっ!なんて健気で、なんて痛々しいんだ……。


 俺がしっかりしなければ……。


 のだめには辛いことだろうけど、やはり関係各所に連絡をとって、しかるべき手段をとらなければ……。


 「のだめ……辛いだろうけど、まず警察に連絡するぞ?
 きっと病院で検査なんかもされるだろうけど……。
 大丈夫だ……俺がずっとついてるから……。

 だれか友達とか呼んだほうがいいか?ご両親とか連絡したほうがいいか?」


 「ケイサツ……デスか?」


 「ああ……辛いだろうけど、被害にあった以上、俺たちには報告する義務があるんだ。
 そうしなければ、悪ははびこり、俺たちのような無抵抗な人々は恐怖におびえて暮らさなければならなくなる。

 大丈夫、のだめのことは俺が一生守ってやるから……(無自覚にプロポーズ)」


 「あの……先輩。お気持ちは大変ありがたいのデスが……。
 被害とか、悪がはびこるとか……のだめには何のことやらさっぱり……。
 
 のだめは自分の部屋で、連弾する曲を練習してただけデスよ?」

 ふ……。現実逃避の症状が出てるな。


 わかるぞ?俺も経験があるからな。


 「大丈夫、のだめは何も心配しなくていいから。
 この部屋に強盗が入ったことは、俺から通報して……。

 それにしてもすごい荒らされようだな?何がなくなったのか、のだめには確認できないだろうし……」


 「あの……強盗って……。
 先輩もしかして、この部屋を見て、強盗かなにかに荒らされたと思ってるんデスか?

 のだめの部屋はこれがデフォルトですケド……何か?」









 「はぁぁぁぁっっ!?」


 俺は、のだめの言葉に、改めてその部屋を見渡した。


 確かに……荒れ放題のこの部屋だけど……俺には理解不能だけど……冷静に見てみれば、強盗に荒らされたというのとは、確かに種類が違うような……。


 俺の惚れた女は、ずぼらで不潔で、片づけができなくて、部屋がゴミで溢れかえっていてもへっちゃらってことか?


 がくっっ!!(膝から落ち、前のめりにうなだれる)


 「あっ!だめデス!そのダンボールには大切なものが入ってるんデス!」


 「うるさいっ!黙ってろ!!!」


 気がつけば俺は、のだめ汚部屋からゴミを撤去し、部屋中を磨きあげていた……。一体どうして……?


 解説しよう。
 千秋真一は極度のストレスに晒され、ショック状態に陥ると、好きな女の世話をついつい焼いてしまう性分だったのだ(笑)


 「!」


 綺麗になったのだめ部屋のピアノから、モーツァルトの楽しげな旋律が色鮮やかに響く。


 「ふぉーっ!お部屋が片付いてると、音が違いマス!」


 見つめる俺を振り返り、のだめが嬉しそうに微笑む。


 きらきら……(部屋が磨かれたため、相乗効果でのだめまで輝いて見える)


 昨日まで弾けてなかったところが、正しく弾けている。


 1人部屋にこもって、練習してた?


 「のだめ、お腹すかないか?」









 「軽くシャワー浴びるから……少ししてから俺の部屋、来て?」


 「むきゃ?じゃあのだめもお風呂に入ってから、行きマスね?
 先輩に言われたカラ、のだめもちゃんとお風呂に入るようにしたんデス。
 のだめ先生デスから!」


 「……うん」


 部屋に戻り、バスルームでのだめ部屋で大量に浴びたほこりを洗い流す。


 「おじゃましマス!」


 「……おう」


 風呂上りののだめ。艶々と輝いて、頬はばら色に染まって。


 温め直した夕食を、いつもと同じように美味しい美味しいと口に運ぶ。


 のだめは……やる気がなくて、楽譜を見てピアノを弾かない。


 ずぼらで不潔で……部屋がちらかっていてもへっちゃらな女。


 のだめに知り合う前の俺だったら、聞いただけでもむしずが走るような……そんな最悪な女なのに……。


 俺はそんな女……のだめのことが、恋しくて、可愛くて、好きでたまらない。


 俺……大丈夫か?


 「先輩?どしたんデスか?
 すっごく美味しいデスよ?

 先輩は天才デスね!のだめ……先輩のお料理……大好きデス!」


 「あ、ありがとう……」


 俺もお前のこと……大好きだよ。






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 久しぶりに、のだめちゃん視点で書いてみました。

 真一クンは、ほぼのだめちゃんの実態を把握しましたが、依然恋心はさめやらず。
 大誤解大会、かなり楽しかったです(笑)

 しかし、のだめちゃんにとって、真一クンはただの"いいひと"のようですねぇ。
 ほんと、のだめちゃんってばヒドイ(笑)
 がんばれっ、真一クン!!!