芒果布甸/Mango pudding



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ボーイ/ミーツ/ラッキー☆ガール 09






 がちゃっ。


 「突撃!隣の晩ごはーんっ!」


 「い、いらっしゃい……」


 のだめは3日目にして、すっかり俺の部屋に来ることに慣れてしまったようだ。


 ま、まぁ……それだけ俺たちの距離が縮まったってことだよな?


 数日前まで静まり返っていた俺の部屋に、のだめの鈴の音のような可愛い声が響く。


 「ムハー!いい匂いデス!
 千秋先輩、今日のごはんはなんデスか?」


 「ブフ・ブルギニョン」


 「ふぉぉ、呪文料理!」


 「米?」


 「おコメでお願いしマス!」


 こんな会話も、もうすっかり俺の日常だ。


 2人で食器を並べたりして……これはもう恋人同士なんじゃないかと錯覚してしまうほどナチュラルで。


 ああ、俺は今……幸せなんてものを感じている。


 それは21年間の俺の人生の中で、史上最高に。









 「ふぃー。お腹いっぱいデス……」


 「今日は3杯。よく食ったな……」


 「ぎゃはぁ!照れマスよぉ〜」


 「いや、別に褒めてない……」


 のだめは今日も、見てて気持ちいいくらい食べた。


 両足を投げ出し、クッションを抱えて、幸せそうに微笑むのだめは……めちゃめちゃに可愛い(恋は人を……以下省略)


 「しっかり食うモン食ったんだから、やることやってもらうからな?」


 「むきゃ?なんでショウ?」


 「のだめがやることっていったら、これしかないだろ?」


 今日、谷岡からもらった楽譜をのだめに差し出した。


 「ぎゃぼ……」


 「まずは俺が弾くから……のだめは楽譜見て聴いてて?」
 








 モーツァルト"2台のピアノのためのソナタ"ニ長調、第1楽章。


 モーツァルトらしい、やたら明るい曲。


 2台のピアノの掛け合いが楽しくて、これをのだめと弾けたら、どんなに気持ちいいだろうと思う。


 だからのだめには、苦手な譜読みとか暗譜とかで頭をがちがちにさせないで、とにかく弾いてみたいと思わせたい。


 音楽に正面から向き合って、今より高みに上がれば、最高に気持ちいいことが待ってるって知って欲しいから。


 俺が弾くファースト、続いてのだめの弾くセカンド。


 のだめに願いが届くように、俺は夢中で旋律を奏でた。









 「……どう?」


 「……先輩すごいデス。本当に楽譜どおりでシタ。

 先輩のピアノって……本当に正確なんデスね?」


 少しは驚かすことができたようで、のだめはぼんやりと俺を見つめている。


 「俺は……、指揮者になりたいんだ。

 音楽が好きだから、音楽家を……作曲家を尊敬してるから、俺はその音楽を忠実に再現しようと努力してる。

 すごいと思わないか?
 18世紀にモーツァルトが作曲した音楽が、今のだめが見ている楽譜の中にある。

 俺たちは今、21世紀に生きて、その楽譜に忠実に奏でることで、18世紀にモーツァルトと弟子が演奏したのと同じ、音楽を体感できるんだ」


 「ふぉぉ……」


 そんなこと、言うつもりじゃなかったのに……。


 指揮者を目指しているなんて……。


 祈るように必死でピアノを弾いていたら、なぜだか熱い思いがこみ上げてきて、つい口からこぼれていた。


 「……のだめ、弾いてみマス……」


 のだめは静かに立ち上がると、ピアノチェアーに座る俺の横に立った。


 無言のまま席を譲り、のだめを座らせると、俺はそのままのだめの傍らに立ち、のだめが弾き始めるのを待った。









 「……そこ、違う。なんとなく弾くな」


 「はい……」


 「テンポ!走るな!」


 「は、はい……」


 のだめは必死に楽譜を追っているけど……すぐには上手くいかなかった。


 それでも徐々にミスは減ってきた。


 それなのに……。


 なんだかいらつく。正しいことをしているはずなのに……。






 「のだめ……。

 お前のあたま……クサイ……」






 「え?そデスか?
 4日前に洗いまシタよ?」


 「……は?よ、4日?」


 「はい。お風呂は1日おき、シャンプーは5日おきデスので」


 「……それは……宗教上の理由かなんかか?」


 「むきゃ?
 のだめのお家は、ぽっくり寺の檀家デスけど、特に生活習慣の制限はありまセンよ?」


 それはつまり……俺の好きな女は、ずぼらで不潔ってことか?


 がくっ……(膝から落ちる)









 「むっきゃぁぁぁぁーーーー!!!」


 「うるさいっ!大人しくしろっ!」


 気がつけば俺は、のだめを浴室に引きずり込み、頭をバスタブに突っ込むと、シャワーを浴びせてシャンプーをしていた。


 はっ!俺はなんていうことを……。


 解説しよう。
 千秋真一は極度のストレスに晒され、ショック状態に陥ると、好きな女の世話をついつい焼いてしまう性分だったのだ(笑)


 「はぅん……千秋先輩の指先、気持ちいいデス……」


 「そ、そうか?」


 「はい……最高デス……」


 「か、かゆいところはない?」


 「えと……右耳の後ろのあたり……はぅん……そこデス……」


 俺の手に身をゆだねて、恍惚の表情を浮かべるのだめは……めちゃめちゃにしたいほど可愛い!!!(恋は人を……もう呆れて言葉がないです)


 しっかりとコンディショナーも洗い流し、タオルドライの後、ドライヤーをかけてやると、のだめは"はぅん、お姫様気分デス"と、うっとりとした。


 「のだめ……お願いだから風呂には毎日入れ。
 そんなんじゃ……幼稚園の先生はつとまらないぞ?」


 「むきゃ?そなんデスか?
 じゃあのだめ……明日からがんばりマス……」


 「いやだから……今日から風呂入ってくれ。頼むから……」


 「じゃあ先輩……またシャンプーしてくれマス?」


 そういって俺を上目遣いで見つめるのだめは、シャンプー後のさらさらのカフェオレ色の髪がキラキラと艶めいていて……。


 ああ……あああ……。


 ドワーーーーーーッ!(止まらない感じ)


 「ぴ、ピアノ頑張ったらな?」


 「うきゅ……のだめ、がんばりマス!」


 ああっ!だめだっ!


 のだめが可愛すぎて、俺には厳しくできないっっ!
 





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 のだめと出会って5日。真一クンはのだめのいる日常にも、恋をしている自分にもだいぶ馴染んできました。
 真一クンのツッコミも出始めて、2人の会話もやっとチアノダらしくなってきました。

 で、この日は谷岡先生やのだめ本人から、のだめの実態をいろいろと知ってしまった真一クンだったのですが……。

 いやはや、恋は冷めないようです(笑)
 でも女はね……甘いだけじゃ、恋は始まらないよ?真一クン。