芒果布甸/Mango pudding



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ボーイ/ミーツ/ラッキー☆ガール 08






 俺たちはその日、レッスン室を出ると、そのままマンションまで一緒に帰ることに……。


 並んで歩くだけだけど……すげーうれしい。


 「今日も……俺の部屋来る?」


 「え……そんな毎日……悪いデスよー」


 「いやっ?全然っ!?悪くないしっっ!
 昨日も言ったけど、一人分も二人分も作る手間は一緒だしっっ!(必死)」


 「え、でも……」


 「今日はビーフシチューが朝から食べたくって、ほらあれ、一人分じゃ旨くねーし、のだめが食べに来てくれるなら、その分多く作れるから、そのほうが俺の都合がいいってゆーか……(饒舌)」


 「じ、じゃあ、お言葉に甘えて……」


 「うんうん、そうして?
 甘えちゃってくれ……」


 「実はのだめ、ビーフシチューは大好物なんデス。
 久しぶりのお肉、うれしいデス!」


 「そ、そう?じゃあよかった」


 帰り道、買い物のためにスーパーに寄る。


 念願の、初二人でお買い物だっ(感涙)


 「米とパン、どっちがいい?」


 「お米デスー」


 「了解」


 買い物カゴを手に、こんな会話をするなんて……本当に恋人同士みたいじゃねーか?


 「むきゃ?ごろ太……」


 彼女がお菓子コーナーで立ち止まる。


 「それなに?」


 「えと……プリごろ太っていうアニメがあって、のだめ大好きなんデス」


 「へぇ……」


 彼女は、そのごろ太とかいうキャラクターのついたオマケつきお菓子をじっと眺めて、何やら考え込んでいる。


 財布と相談か?


 可愛いな……(恋は人を愚か者にする)


 ひょいっ。


 のだめの手からお菓子を取り上げ、買い物カゴに入れ、歩き出す。


 「え?千秋先輩?」


 「ショパンのお礼。買ってやる」


 「えー、だめデスよ、そんな……」


 「いいから。俺が買いたいの」


 すると、のだめは突然立ち止まって、うつむいてしまった。


 「うきゅう……ずるいデスよ、千秋先輩……」


 「なにが?」


 「のだめばっかり、先輩にいろいろしてもらうばっかりで、ちっともお返しできないんデスもん……」


 「……そんなことない。
 俺はピアノとかいろいろ……のだめから貰ってるから。

 そんなこと、気にすんな。友達……なんだろ?」


 俺の言葉にのだめが顔を上げる。


 俺は精一杯笑顔を作って、のだめを見つめる。


 「……はい、ありがとございマス」


 「うん……」


 俺はのだめが可愛くて可愛くて、できれば抱きしめたかったけど、その代わりに思い切ってのだめの頭に手を伸ばすと、その柔らかいカフェオレ色の髪の毛をくしゃくしゃっと掻き乱した。


 「ぎゃぼっ!やめてくだサイー!」


 「くっくっ、ひでーあたま……」


 「先輩がやっておいて、ひどいデスー」


 ふくれたのだめが俺に仕返ししようと背伸びしてくるので、逃げるように歩きだせば、追いかけてきたのだめの腕が、俺をつかまえようと腕に絡まってきた。


 「むきゃー!先輩待ってくだサイ」


 「……置いてかれたくなかったら、そこにつかまっとけ……」


 「はーい」


 ぎゅっ(小悪魔的な何か)


 ああ……あああ……。


 ドワーーーー!(脳内麻薬系物質が大量放出中)


 左腕に絡まる、のだめの腕。


 そこから何かが熱をもったように、全身が熱くなってゆく。


 かすかにかかる重みが心地よい。


 もうこのまま、時が止まってしまえばいいと思った。








 翌日、学校に行くと、ピアノ担当変更の通知が張り出されていた。


 ハリセンから……谷岡?


 あ、のだめの担当と一緒か……。


 ちょうどいい、のだめのピアノのことを聞けるかもしれない。


 なんとなく……今までの反応から、のだめはピアニストを目指すという事に嫌悪感を持っているような気がする。


 その理由を知らないかぎり、のだめはピアノに本気で向き合ってくれないだろうから……。








 「初めまして、千秋真一です」


 「谷岡です、よろしく」


 にこにこと愛想がいいけど……なんだかつかみどころがない。何考えてるのかよくわからない人だな……。


 とりあえず今までにやった曲のことなどを話ながら、今後のレッスン曲について相談する。


 次回からレッスンする曲が決まったところで、さりげなくのだめの話を切り出してみた。


 「あの……谷岡先生は、野田さんのことは入学してからずっと、指導されているんですか?」


 「え?野田くん?
 千秋君、彼女と知り合いなの?」


 「あ、はい……。
 まだ知り合ったばかりなんですが、偶然彼女がレッスン室でピアノを弾いているところに通りかかって……」


 「へぇ……」


 不思議なもので、このつかみどころのない教師は、自分から何か言うわけではないのに、相手の話を引き出すテクニックを持っているようだ。


 俺は初対面の人間にあれこれ話ができるタイプではないのに、気がつけばのだめと知り合ってから今日までの出来事を話してしまっていた。


 もちろん、俺の恋心については言えないけど。


 でも、彼女のピアノが好きで、ピアニストを目指してほしいと思っていることは、思い切って話してみた。


 なにか協力してもらえるのではないか……という期待も込めてだ。









 「へぇ……野田くんがねぇ。
 即興の曲とはいえ、一曲最後まで弾いたなんて……。
 千秋くん、すごいよ。指導方法を僕が教わりたいくらいだよ、はははっ!」


 「……は?」


 「野田くんはね、手ごわいよ。
 なにしろやる気がないから」


 「……え?」


 「楽譜を見ながら弾くこともあまりないし、気分にムラが多くて、まともに一曲弾きおえたことがない」


 「楽譜を見ないって……」


 「うん、耳がいいからね。僕がはじめに弾いて、それを耳で覚えて弾くんだ。
 やる気のない生徒に、譜読みしてこいっていっても、いつになるかわからないしね、はは……」


 「……」


 「でもすごくセンスがいいし、テクニックもすごい。
 もったいないとは思うけど、本人にやる気がないんじゃ、しょうがないしね」


 「その……一応音大生なんですから、技術をさらに向上させるための指導をするとか……」


 「ん?それはね、その生徒が希望していれば僕もそうするよ?
 でも、野田くんの場合は幼稚園の先生が夢だから、今はもっぱら子供むけ音楽の制作について指導してるんだ」


 なんだかイライラする。谷岡から語られるのだめの実態は衝撃的すぎて……。


 谷岡の言うことはもっともで、のだめに知り合う前の俺なら共感していただろう。


 でも今の俺は、のだめにピアニストを目指してもらいたいという目標があるわけで……。


 引き下がるわけにはいかない。


 「あの……野田さんにやる気になってもらうために、何か僕にできることはないでしょうか?」


 「……千秋くん、余裕だね?」


 「……え?」


 「……まあいいや。
 それなら千秋くんの指導力を見込んで連弾でもしてみる?
 野田くんに桃ヶ丘一の千秋くんのレベルの高いピアノを聴かせたら、刺激を受けるかもしれないよ?」









 「むきゃ?千秋先輩?」


 「どーも……」


 谷岡の計らいで、俺はのだめのレッスンに同席した。


 「どゆことデスか?」


 のだめは不思議そうな顔をしてる。


 「千秋くんのピアノの担当が僕に変わったんだ。
 それで……、千秋くんから野田くんの話が出てね。

 千秋くんが君のピアノに惚れ込んでて、ぜひ連弾をしたいっていうから……」


 「なっ!先生、その説明は……(赤面)」


 「むきゃ?連弾?千秋先輩とのだめが?」


 「うん、どうかな?
 桃ヶ丘一のピアノの腕前の千秋くんと連弾できるなんて、野田くん幸せ者だよ?」


 「ふぉぉー……」


 のだめは目をぱちくりさせて、俺を見つめている。


 「どう?やってみる?」


 「むむん、面白そうデスね。
 いいデスよ?受けて立ちまショウ!」









 「じゃあ、曲はこれね?」


 選曲は、谷岡から任せてほしいと言われていたので、俺にも知らされていなかった。


 「ふぉぉ、モツアルト……」


 「……俺も知らない曲だ」


 モーツァルト"2台のピアノのためのソナタ"ニ長調、第1楽章。


 谷岡先生も人が悪いな。


 のだめが譜読みが苦手だとわかっていて、わざとマイナーな曲を選んでくるなんて……。


 なんだか谷岡に、俺の本気を試されているような気がした。


 受けて立とうじゃねーか!


 「のだめ、ちょっと譜読みして、軽く一回合わせてみるか?」


 「ぎゃぼ!譜読み……」


 まずはこいつの現時点の実力を知らなければ……。


 俺も本気ださねーと、谷岡のヤツを唸らせるくらいの演奏をしたい。


 「のだめ、そろそろいいか?」


 「……はい」


 「じゃあ最初はゆっくり、このくらいのテンポで」


 「はい……」









 「おい、最初の2小節で間違えるって……」


 真一はがっくりとうなだれると、大きくため息をつく。


 「ぎゃぼ!ご、ごめんなサイ……」


 「も、もう一回最初から……」


 なぜ?こんなにメチャクチャに弾ける?


 ちらっ。


 「のだめ……なぜ目をつぶる?」


 「ちゃ、ちゃんと暗譜してマスから……」


 うそつけ……。


 俺の音聞きながら、適当に合わせて弾いてるだろ……(げっそり)


 「まあ時間はあるから……。
 気長にやろうよ、千秋くん」


 お、俺ぇ?俺のせいかっ?!


 のだめはピアノチェアーの上で小さくなっている。


 谷岡は面白そうに……笑ってやがるし。


 「はぁ……」


 どうすりゃいいんだ?


 真一はこの連弾の前途多難さを想像して、もう一度ため息をついた。








 "千秋です。今日はレッスン室に寄らずに帰る。夕食はのだめの分も用意しておくから、よかったら食べにきて"


 "了解デス!いつもありがとございマス。美味しい夕食、楽しみにしてマス!のだめ"


 くすっ。


 ほんと、色気より食い気だよな。


 楽しみなのは夕食か……(ちょっと複雑)


 真一は料理の仕込みを終わらせ、あとは煮込むだけにすると、ピアノに向かう。


 まずは自分のパートを完璧にして……その後でのだめのパートもマスターするつもりだ。


 今日の様子じゃ、暗譜なんていつになるかわからないからな。


 真一は気合いを入れると、久しぶりにピアノに没頭していった。






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 もー、のだめちゃんてば、本当に小悪魔なんだから(笑)

 で、谷岡先生も、結構好きなキャラです。
 ちょっと黒めにしてみました(笑)

 さて、恋は真一クンに忍耐を与えてくれるのか?
 負けるな!真一クン!