芒果布甸/Mango pudding



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ボーイ/ミーツ/ラッキー☆ガール 06






 「ふおぉ……同じマンションでも、お部屋はそれぞれ違うんデスね?
 千秋先輩のお部屋、のだめのお部屋より大きいデス」


 「へぇ……そうなんだ?」


 野田さんの部屋……彼女みたいに、明るくて可愛い部屋なんだろうな……(脳内イメージ=お花畑状態)


 いやっ!今そんなこと妄想してる場合じゃないんだって、俺!


 「あの……ピアノ、見てもいいデスか?」


 くすっ。


 やっぱり野田さんは、ピアノが大好きなんだな。


 「どうぞ?」


 「ふぉぉ……のだめのピアノよりグレードがいいデス!」


 「そう?
 よかったら弾いててもいいよ?」


 「むきゃっ!
 じゃあ、さっきいただいた楽譜、さっそく弾いてみマスね?」


 きゅーんっ!


 む、胸が痛い……。これが恋の痛み?


 「う、うん……」


 嬉しいな……昨日頑張った甲斐がある。


 真一は、蕩けそうな笑顔で、料理を始めた。









 「野田さん、食べられないものとかある?」


 指慣らしをしている彼女に、料理をする前に事前確認を。


 「えと……生のトマトが……」


 「へぇ……生トマト、だめなんだ?」


 「はい……でもそれ以外はなんでも大丈夫デス!」


 「了解」


 鍋に湯を沸かす。


 ブロッコリーがあるから……あれにしよう。


 手早く、食べやすい大きさに切って、沸騰した湯に塩を入れ茹でる。


 その間に、玉ねぎをみじん切りに。


 リビングからは、昨日真一が楽譜に起こした<有頂天>を奏でるのだめのピアノが聞こえてくる。


 楽しげに歌うように……まるで俺の今の気持ちのようだ。


 と、ピアノが止まる。


 「ぎゃ、ぎゃぼ……」


 ん?


 ピアノは何度か止まっては流れ、止まっては流れを繰り返し、なんとか<有頂天>が最後まで奏でられた。


 どうしたんだろう?


 お腹が空いてるから、調子悪いのかな?(んなあほな)


 不思議に思いながらも、真一は手早くベシャメルソースを仕上げ、そこに茹で上げたブロッコリーとミレリーゲを加える。


 味見をし、その仕上がりに満足すると、皿に盛り付ける。


 「野田さん、できたよ?」


 リビングのピアノで音遊びを続けていたのだめに声をかけ、料理をテーブルに運んだ。









 「お、おいひ〜!!!
 先輩、天才デス!」


 「そ、そう?」


 「これは、なんていう名前のお料理デスか?」


 「ミレリーゲ・アラ・パンナ・コン・イ・ブロッコリ」


 「むきゃっ?!呪文料理デスね?」


 「……は?」


 「この大きいマカロニはなんデスか?」


 「ミレリーゲっていう、パスタ」


 「ふぉぉ……すっごく美味しいデス!」


 目の前の彼女は、美味しい美味しいといって、気持ちいいくらい豪快に俺の料理を食べてくれている。


 か、可愛いな(恋は盲目)


 料理をするのは好きだし、今までも自分ひとりのために料理をするのは別に苦ではなかったけど……。


 こうして自分の作ったものを、他人に食べてもらって、こんな風に美味しい美味しいって喜んでもらえるのって……やばい、すげー嬉しい。


 彼女に出会ってから、俺は今までに味わったことのない喜びを感じている。


 「のだめはお料理とか得意じゃないから……ふがふが……大学に入って一人暮らしを始めても……もがもが……コンビニのおべんととか……。

 先輩はいいデスね?こんなに美味しいもの、自分でつくって食べられるんデスから……。

 先輩のお料理、お母さんの料理より美味しいデス!
 のだめ、こんな美味しいもの食べたの、生まれて初めてデス!」


 彼女は満面の笑みを浮かべて、俺にそう言った。


 俺はその瞬間、この笑顔を、いつも見つめていたいと思ったんだ。


 「じゃあ……野田さんさえよければ、これからも食べに来れば?
 1人分も2人分も、作る手間は一緒だし……せっかく隣同士で、知り合えたんだし……(運命的な出会いだし>心の呟き)」


 がばっ!


 夢中で料理を食べていた彼女が突然顔をあげ、ごくんと飲み込むと口をあけた。


 「ほ、ほんとに?」


 俺を見つめる彼女の瞳は、キラキラと輝いて……。


 「う、うん。
 今日は在り合わせの材料で作っただけだから……次はもっと美味しいもの作ってあげられると思う」


 「むっきゃぁぁぁ!救世主ー!!!」









 食事が終わると、コーヒーを飲みながらいろんな話をした。


 俺はコーヒーはブラックだけど……彼女はミルクと砂糖たっぷりの甘いカフェオレが好きだとわかった。


 カフェオレって……甘くてカフェオレ色の……まるで彼女みたいだ(恋は人を詩人にする)


 「気になってたんだけど……。
 どうして野田さんは、"のだめ"なの?」


 「えとデスね……中学のとき、同じクラスに"めぐみ"って名前の子が3人いたんデス。


 それまでは"めぐみちゃん"って呼ばれてたんデスけど……かぶっちゃうじゃないデスか?

 それで、古賀めぐみちゃんが"こがめ"、辻めぐみちゃんが"つじめ"、のだめは野田めぐみだから"のだめ"になったんデスよ」


 「へぇぇ……」


 「よかったら千秋先輩も、のだめって呼んでくだサイ?」


 「う、うん……」


 どちらかと言うと……"めぐみちゃん"とか、"めぐみ"とか……、ああ、"めぐ"っていうのもいいな……可愛い名前だから、名前で呼びたいけど……。


 でもうれしい。ニックネームで呼ぶことを許されるっていうのは、かなり心を許している証拠じゃないか?


 彼女が求める呼び方が"のだめ"なら、それで呼んであげるべきだよな?


 「の、のだっ、のだめっ……さん、ピアノの担当、先生は誰?(呼び捨てにはできねえ!)」


 「むきゃ?谷岡センセデスけど……」


 「谷岡先生……知らないな」


 「優しくて、とってもいい方デスよ?
 のだめの夢のために、熱心に指導してくれマス」


 「そう……。
 のだめさんの夢って……やっぱりピアノ奏者?」


 「ほえ?
 先輩ってば嫌デスねぇ?のだめがピアニストになんか、なれるわけないじゃないデスかー。

 あと、のだめに"さんづけ"っておかしいデスよ?
 のだめって呼んでくだサイ?」


 「え?」


 「ほら?呼んでみてくだサイ?
 の・だ・め、デス(小悪魔)」


 「の、のだっ……のだめっ?(真っ赤)」


 「ぎゃはぁ!なにやら仲良しサンのようで嬉しいデス!」


 「……そ、そう?(すごく嬉しい)」


 「はいっ!
 もう、のだめと千秋先輩は、お友達デスよ?」


 「お、お友達ね……(ちょっと複雑)」


 「お友達だカラ、千秋先輩には教えちゃいマスけど、のだめの夢は幼稚園のセンセなんデス!
 子供が大好きだカラ……」


 幼稚園の先生か……ピアノを弾きながら子供たちに囲まれて、歌なんか歌って……可愛いだろうな、のだめ先生(恋は人を夢見がちにする)


 「そっか……でも、もったいないな。
 のだめくらいピアノが弾けたら、ピアニストになるのだって夢じゃないと思う。

 もっと上を目指してみたら?」


 「……上デスか?」


 突然、彼女の声のトーンが下がった気がした。


 「う、うん。上っていうか……。
 俺はあの悲愴を聞いた時、すごい衝撃を受けたし。

 のだめのピアノには、人を惹きつける魅力があると思う」


 「……あ、ありがとございマス……。

 でも、のだめは幼稚園のセンセでいいんデス……」


 そういって、のだめは複雑そうな微笑を浮かべると、うつむいてしまった。


 なんとなく、この話は鬼門のような気がして、俺はのだめに調子を合わせてみる。


 なにより、うつむいてしまったのだめの顔を、もう一度俺に向けさせたくて。


 「う、うん……のだめ先生、似合ってると思う」


 「むきゃっ!のだめ先生って、いい響きデス!」


 "のだめ先生"に気をよくしたのか、一瞬のだめの上に差した影のようなものは、あっという間に姿を消し、それからは今までどおりの彼女で。


 俺は、才能を持ちながら幼稚園の先生になってしまうかもしれない彼女の未来を、ちょっと残念だとは思いながらも、今までどおりの様子にほっとする。


 それに……少し思ったんだ。


 もし彼女がピアニストを目指すのなら……きっと近い将来、海外に留学してしまう。


 その時俺は……きっと、この日本に取り残されてしまう。


 やっと見つけた、俺のたった一つの輝きみたいなのだめが、俺の前から永遠に消えてしまう。


 だから、のだめのピアノは、俺だけのものでいい……。


 こんな了見の狭い、俺の腐った思いを彼女が知ったら……幻滅されるだろうな。


 でももうちょっとだけ……叶わない夢を見て、希望のない俺に、夢を見させて欲しいと、この時は思ってしまったのだった。






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 餌付けし、あだ名で呼び捨てに成功(笑)
 真一クンの恋は急速に進展中?

 そして、原作とは立場が逆転してしまったかのように、のだめさんが自分から離れていってしまうことに、おびえる真一クン。

 恋する真一クンに、運命の女神は微笑むのでしょうか!?