芒果布甸/Mango pudding



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 のだめにはふくれられるわ、マルレの団員たちにはからかわれるわ、雑誌の取材はしばらく受けないと固く決意した真一。


 パリジャンの記憶も薄れ、Numeroショックからやっと立ち直った真一のもとに、今度は日本から続々とメッセージが届く。


 "千秋見たぞ!すげーな、あの表紙。やっぱりパリは違うな☆ 一流モデルのオーラとかって、やっぱすごいのか?"とは、峰からのメール。


 "千秋様!Numero素敵でした〜!真澄、東京で手に入るだけ、片っ端から購入しましたのよ。家宝にしますわ"とか。


 「真一やるじゃない?お母さん、あなたのこと見直しちゃったわ」


 「どどどどういうことだよ?!なんであの雑誌のこと、日本のやつらが知ってるんだ?」


 「あらぁ?Numeroは日本版もあるのよ?もちろんフランス版より少し遅れての発行にはなるけど。
 これいいわぁ、"そして私にとって一番の宝物は、妻と妻のピアノです"だって。ぷぷぷ、やるわね、真一」


 ぴっ!


 「はぁぁぁ……」






 Gossip! 前編






 久しぶりの休日。


 真一は、日ごろの疲れを癒すべく、自宅のリビングで愛娘の蕾を抱っこして、妻のピアノを思う存分堪能することにした。


 "やっぱり、のだめのピアノはいいな。
 すっとしみこんで、じんわりと温めてくれて。そしてまた、新たに音楽に向かっていこうと俺を鼓舞してくれる……"


 うっとりと、目をとじてのだめのピアノに全身を委ねる真一を、のだめはピアノを弾きながら見つめ、微笑む。


 "最近、ちょっと忙しかったから真一クンもお疲れでシタけど、のだめのピアノで癒されてくだサイね?のだめの愛情タップリ、いつもより多めにサービスしときマスよ?"


 そんな両親の穏やかな気持ちが伝わるのだろう。真一に抱っこされた蕾も、そのままうとうとと寝付いてしまった。


 のだめはモレンドで弾き終わると、うたたねをする真一と蕾に近づき、蕾を抱き上げるとベッドに寝かしつけるために、寝室に向かう。


 ソファーで眠る真一のためにブランケットを手にリビングに戻る。
 起こさないように、そぉっとブランケットをかけようとすると、真一の目が突然開いて、気がつけばのだめの身体は真一の腕の中に……。


 「真一クン、たぬき寝入りデスか?」


 「さっきまでは本当に寝てた。蕾は?」


 「蕾ちゃんはベッドでお昼寝デス。真一クンもお昼寝してていいんデスよ?」


 「俺は眠るより、もっとしたいことがあるんだけど……」


 そういって、のだめを抱きしめたまま器用に身体を反転させると、あっという間にのだめの身体はソファーの上で、真一の身体に組み敷かれている。


 「なぁ?今度はのだめの身体で俺のことを癒して?」


 「もぉ……あんっ、だめデスってば……」










 蕾がお昼寝から目覚める頃、真一は心身ともにすっきりとリフレッシュして、ご機嫌で蕾をベッドから抱き上げた。


 「蕾、パパとママとお買い物に行くか?
 外はいいお天気だぞ?」


 「おかいものー!いきマスー!」


 よちよち歩きも上手になってきて、お出かけというと蕾は歩きたがり、可愛らしい小さな靴を履かせてもらうと、得意になってぱたぱたと駆け出す。


 「蕾ちゃーん、パパとお手手繋いでなきゃ、だめデスよー!」


 「むきゃぁー!」


 母親ゆずりの可愛らしい奇声をあげて走りだす蕾を、真一が長いストライドであっという間に追いつき、抱き上げる。


 「ぎゃぼっ!つぼみちゃんもあるくのー!」


 「じゃあ、パパと手をつながなきゃだめだ」


 「あうぅ……」


 まだまだ小さな蕾と手を繋ぐのは、真一にはかなり辛い姿勢になるが、そうでもしてないと、ぱたぱたと好きなように歩き回る蕾を1人で歩かせるのは危なっかしくて仕方ない。


 真一とのだめ、両親の間に入って両手をつながれた蕾。


 嬉しそうに父親と母親をかわりばんこにニコニコと見つめ、両親の優しい笑顔に出会い、またニコニコと嬉しそうに笑う。


 そんな、幸せを絵にしたような3人の家族を、パリの街でファインダー越しに覗き込む目があったなど、そのときの真一ものだめも、気付くはずがなかった。








 「ハーイ、チアキ。日本での仕事が入ったわ。
 せっかくだから里帰りも兼ねて、ノダメとツボミも連れて家族で帰ってよし。
 じゃ、あとはよろしく」


 「え?日本での仕事ってなんだよ?」


 「まぁ例えるなら"鉄は熱いうちに打て"?」


 「おい……例えなくていいから、ストレートに言えよ、ストレートに」


 「客演に呼ばれたのよ、新都フィルから。
 初めてだっけ?あら、よかったわね。

 まぁ、それより、この時期、家族で帰国することに意味があるから。要するにプロモーション?売れるときに売れるだけ、顔と名前を売っておいてちょうだい。
 日本人は熱しやすく、冷めやすいって話だから」


 「俺が……日本のオケから呼ばれたのか……しかも新都フィル……(じーん)」


 「もしもし?ちょっと、話聞いてる?
 ま、いっか。じゃ、頼んだわよー」


 真一は、幸か不幸か、エリーゼの話を半分も聞いていなかった。
 自分が日本のオケに呼ばれたという感激に浸っていたから。


 「日本で、日本のプロオケで、俺が指揮……(じーん)」


 ほろり。


 真一は、胸に熱いものがこみ上げていた。
 日本から出られず、音楽なんてやめてしまおうかと腐っていた自分。
 のだめと出会って、海外に出られるようになって、指揮コンで優勝を勝ち取って。
 ボロボロのマルレオケを、必死で立て直して……。


 「お、俺はやったぞ!」


 真一はキッチンから小躍りで飛び出すと、リビングで遊ぶ妻と娘の二人に交互にキッスをする。


 「パパぁー、どうしたデスか?」


 「日本に帰るんだ!パパとママと蕾の三人で旅行だぞ?」









 真一は、日本の三善にも3人揃って帰国することを連絡する。


 「まぁー!蕾ちゃんと久しぶりに会えるのね!うれしいわ。
 せっかくだから大川にも帰るのかしら?」


 「うん、俺がリハなんかしている間に大川に帰そうかと。
 俺の本番に合わせて戻ればいいし」


 「わかったわ。じゃあ、お部屋とか準備しておくから。
 最近は蕾ちゃん、どんなことして遊ぶの?何が好きかしら?」


 「……じゃあ、のだめと代わる」


 真一は、息子の日本でのプロオケデビューには無反応な母に一抹の寂しさを覚えつつ、妻に電話を代わろうとする。


 「あ、真一。ついでに言っとくけど、今あなたたち日本でちょっとした話題になってるから、帰国の時とか蕾ちゃんのこと、気をつけなさいね?」


 「な、なんだよそれ……」


 「ほら、この間のNumero?日本での販売部数なんかは大したことないんだけど、写真とか、あなたたちの経歴とか、ネットで少し話題になったの。それで、マスコミが興味を持ったみたいで。
 まぁ、大丈夫だとは思うけど……一応ね」


 「わかった……」


 あんな取材、受けるんじゃなかった。
 俺にとっていいことなんか、何一つないじゃねーかっ!


 真一は、あんな仕事を請けてきたエリーゼに対して、沸々と怒りがこみ上げる。


 しかし気持ちは日本でのプロオケデビューへといつしか飛び、初めての公演に思い残すことがないよう、勉強に向かう真一であった。




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