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4.再現部>>> きっとアイツは、俺が照れ屋で恥ずかしがるだろうと、二人っきりでいいなんて気を使ってくれたんだと思う。 それでも、 『二人っきりでもいいから、ちゃんと神様の前で誓いたいデス。 駄目デスか?』 なんて、いつも以上にかわいい顔で、上目遣いで俺を見上げて。 俺のシャツの袖口をちょんとつまんで、首をかしげてねだられたら、俺が断れねーこと、絶対コイツわかってやってンだろ? 最後まで白の衣装を身につけることについては、絶対に嫌だと拒み続けたけれど、上目遣いの瞳をうるうるさせやがって。口をへの字にまげて、まるで今にも泣き出しそうなのを耐えてるみたいな。 ヤメテクレ。 「あーーー!わかったから!着ればいいンだろ、着れば! 白だろーと赤だろーと、好きなの持って来いよ!なんでも着てやるよ!(千秋真一、墓穴を掘る)」 のだめは俺の言葉に、あっという間に笑顔になった。 それだけで幸せなんてモノを感じてしまう俺は、完全に負かされていると思う、コイツに。 もうそれだけで、いいじゃないかと思ってしまったんだ、あの時は。 ……あのとき、どうしてアイツの言いなりになったりしたんだ?俺。 実際にその白いものを目の前にすると、その破壊力に猛烈に後悔が襲う。 「はぁぁ……」 今俺たちは、控え室を中央にはさんで左右につくられた、着替えるためのスペースにそれぞれ一人ずつ入っている。 アイツも部屋の反対側で一人、準備を整えているはずだ。 いまさら逃げるわけにもいかねーし…。 なかばやけくそで白いものを身につけると、ざっと姿見でチェックをして、タメイキをまた一つ、中央の控え室に戻った。 ヨーコも、辰男も、よっくんだって、二人っきりでと伝えたとたん、電話の向こうでぎゃーぎゃーと騒ぎ出した。 地元に戻って、親族やお世話になった人、友人たちにもお披露目をして、それくらいの蓄えはあるって、辰男が怒鳴ってる。 ゴメンナサイ。のだめ、親不孝な娘デスね。 のだめの選んだ人は、とっても照れ屋さんで、でも、そんな彼が大好きで。 だから、最後のわがままにしますからって、なんとか許してもらって。 1ヵ月後に届いたヨーコからの荷物はいつもの倍以上の超特大で、それはそれは夢のようにうつくしい白の衣装。 はぅん、のだめ、これを身につけた真一くんを想像して、思わずはぁはぁしてしまいマシタ。ゲハ。 真一くんが着てくれるカナ?ってとっても不安でしたけど、ヨーコからの精一杯の気持ちですから、こればっかりは譲れマセン。のだめ、真一くんをオトすため、いつも以上にガンバリマシタ! のだめもターニャから特訓されたメイク(最低限のアッサリ、シンプルメイクで!と真一くんからしっかり指定されましたケド)で、髪も簡単にまとめられる方法をマスターして、この日を迎えたんデス。 ステキな真一くんの横に立っても恥ずかしくないように、慎重に衣装を身につけていき、最後にヘッドドレスを髪に乗せる。 はぅぅ…、とっても心配デス。 ブーケを手に取り、姿見で最終チェックをして、真一くんが待っているだろう部屋に戻りマシタ。 ドキドキしながら、ノブに手をかけて、そーっとドアをあけた。 「…しんいち、くん?」 …がぼん…真一くんがいまセン。 「はぅっっ!」 ま、まさか、衣装が嫌で逃げ出しちゃったとか? ど、ど、どーしまショウ? 部屋の窓に駆け寄り、窓から外を覗き込む。 真一くん、お願いだから逃げないでくだサイ。 控え室に戻ったものの、俺は生まれて初めて身につけた白い衣装に、最上級の居心地の悪さを感じていた。 のだめが準備をしているだろう、となりの部屋はとても静かで、それでもときどき、かすかに衣擦れの音がして、そのたびに俺の心臓が跳ねる。 このときばかりは、指揮者の条件である聴覚のよさを恨んだりした。 「お、落ち着かねー……」 なかなか出てこないのだめに痺れを切らし、隣で準備をしているだろうのだめを想像しては、ありえないほどに膨らむ期待感に押しつぶされそうで、俺は着替える前に身につけていたジャケットの胸ポケットからタバコを探り出すと、部屋の外に出た。 屋外に出て、タバコを一服。 「はぁぁー……」 いまさら、ふたりっきりでいいと言ってくれたのだめに感謝する。 こんなところ、身内とか、峰たちとか見られると思ったら、羞恥に絶えられねーだろ、俺。 一生のうち、こんな思いをするのは今日だけだと考え、一服したら気持ちも落ち着いてきた。 郊外に建つこの建物は、緑に囲まれてとても静かだ。 それでも6月の強い日差しにそろそろ耐えられなくなって、屋内へと戻った。 |