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あのノエルから、もうすぐ2ヶ月が経とうとしている。 のだめの学生生活も順調なようだ。 俺は与えられた仕事があれば、とにかく今は経験値を上げるためにがむしゃらにこなしている。 こんな生活がいつまで続くのかと、不安になるときもあるけど……。 俺とのだめの関係は……どうなんだろう? アイツは俺から見るかぎり、今まで通り……ある1点を除いてだが……のように思う。 それに比べて俺は……気付いていなかった感情に気付かされてからは、その想いは膨らむばかりで……。 Virgin Snow その後 ノエルから2ヶ月が経とうとしていマス。 先輩はお仕事を次々とこなして、指揮者として自信をもって突き進んでいて、立派デス。 のだめも、次から次へと出される課題に、なんとか食らいついているケド……先輩の背中を見るたびに、不安におし潰されそうになるのは、誰にも内緒デス。 先輩とのだめの関係は……あの夜から、何か変わったのカナ? 確かに二人で過ごす夜は……先輩との距離が縮まるような気がしマス。 先輩のキスも、素肌で抱き合うのも、とても気持ちがよくて安心できるし、なによりこんな無防備な先輩の姿を、こんな近くで触れて、見つめることが許されているのは、のだめだけなんだと思うと、ちょっと優越感。 でも最近思うんデス。 のだめのお休みと先輩のオフが重なると、必ず先輩の部屋に泊まる。 えと……泊まるっていうのは、すなわちえっちするってことなんデスけど……。 先輩はそれだけでいいのカナ? のだめとどこかに出掛けたいとか、お話をしたいとか……思わないのカナって。 普通の恋人同士は、お休みの日は待ち合わせをして、映画をみたりショッピングをしたり……デートして過ごすんじゃないのカナ? そんな事を考え始めると……馬鹿みたいに不安になるんデス。 「明日……休みだよな?」 先輩が食事のあと、さりげなく尋ねる。 「はい……お休みデス」 「……風呂、先に入るか?」 えと、その質問は……、当然のことのように、のだめは泊まることになってるのでショウか? 「えと……あの……今日はのだめ、自分の部屋に帰りマス……」 「え?どうした?」 もうアレだっけ?って、先輩は全然わかってないみたい。 「あの……先輩はのだめのこと……体が目的だったんデスか?」 「はぁぁ?!」 先輩はのだめからの思いがけない言葉に驚いて、言葉も出てこない。 「……それ……どういう意味だよ?」 「だって先輩……お休みになると絶対……えっちするんデスもん……」 「……あ、ああ……」 先輩はのだめの言葉に真っ赤になって、俯いて頭をがしがしとかいて、ごめんと小さく言った。 「べつに……体だけとか……そんなわけねーだろ? お前が嫌なら、無理にしなくたって……そういうもんじゃねーし……」 嫌なわけじゃないんだケド……なんていうか……女の子の複雑な気持ち、わかってほしいんデス。 「嫌なわけじゃないんデス……。 でも、そればっかりじゃ……なんというか……淋しいっていうか……」 はっきりしないのだめの言葉に、先輩は一生懸命考えて答えた。 「わかった。今夜はお互い自分の部屋で過ごそう。 明日はお前がしたいこと、なんでも付き合ってやるよ。それでいいか?」 「はいっ!ありがとデス!」 嬉しい! 明日は先輩とデートデス! 驚いた。 というより、のだめからそんなこと言われるなんて……かなりショックだ。 でも、俺は俺なりにこれでも遠慮していたというか……本当はそばにいれば抱きしめたいし、朝まで一緒に……って思う。 だけど、アイツにだって課題はたくさんあるし、翌日学校があると思えば、そういう気持ちになっていたとしても、我慢して部屋に帰していたわけで。 俺は普段、いちゃつくなんてできるタイプじゃないし、その反動なんだろうか?夜、二人っきりの時は……と思ってしまう。 それに、夜、二人っきりの時のアイツは……なんというか、昼間、みんなと一緒にいる無邪気なだけのアイツじゃなくて、すごく可愛くって。 そんなアイツに、俺はどんどん引き込まれていってる。 そんな俺の気持ちが、逆にアイツを不安にさせていたんだなんて……ちょっと落ち込むというか……。 俺って……いろいろ過剰なんだろうか? 翌朝、のだめは少しおしゃれして姿を現した。 胸元には、俺がプレゼントしたルビーのネックレス。 鼻歌なんて歌ってる。 本当は昨夜、あれからいろいろと考えてしまって……かなり悶々と過ごしたのだが、こんなに嬉しそうなのだめを見たら、そんな気持ちは吹き飛んでしまった。 「ぷっ!お前、小学生の遠足みたいにはしゃいでんな?」 「はいっ!だって千秋先輩と外でデートするなんて、ひさしぶりデスもん!」 「……そ、そか……」 アイツはそんなつもりじゃないんだろうけど、なんだかそんな一言に胸が痛む。 「どこ行くんだよ?」 「えと……まずは映画が見たいデス!」 「映画?」 フランスといったらシネマ、恋人たちが見るシネマといったら恋愛映画デス!と、アイツの選んだ映画のチケットを購入して、映画鑑賞を始めたが……。 すこー。 難解なフランス映画に、ものの5分ほどでのだめは寝息をたて始めた。 大体、恋愛映画なんて興味もないくせに……。 俺の肩に頭を預けて眠りこけるのだめにデコピンをくらわせ、俺は1人映画鑑賞を続けた。 「おい、のだめ……映画終わったぞ?」 よだれをたらして熟睡していたのだめを起こす。 「へ?あ、あれぇ……?」 「何がデートといえば恋愛映画だよ……。 お前、開始5分で寝てたぞ?」 「ぎゃぼっ!なんで起こしてくれないんデスか……」 「そんな恥ずかしいことできるかっ! ほら、行くぞ?次はどうすればいいんだ?」 「のだめ、お腹すきました……」 「……」 腹を減らしたのだめを連れて、カフェでランチをとる。 一体何が、いつもの俺たちと違うのか、さっぱりわからないけど……。 「このあとは?どうするんだ?」 「えと……カフェでお茶をしながら、さっき見た恋愛映画について語り合うつもりだったのデスが……」 「ぷっ!お前、語りあうネタがあんまりねーな」 「むきっ!先輩が起こしてくれないカラ……」 「普通、映画が始まって5分で寝ないだろーが……」 「そだ……どんな映画だったのか、先輩が教えてくだサイ」 「はぁぁ?めんどくせー……」 面倒がる俺に、ちょっと寂しそうな表情をしたから……。 「しょうがねーな。今回だけだからな?」 アイツは嬉しそうに目を輝かせた。 俺もなんというか……ほんの少し罪悪感というか……すまないと思うところもあったから。 「花屋の女がいて……。お客の男に恋をする。 男は週末になると必ず花を買いに来る。 女は……男に会えて嬉しいんだけど、男が誰かほかの女に花を贈るところを想像して、嫉妬に苦しんでるんだ」 「その男の人は……誰に花を贈ってるんデスか?」 「……誰にも。男も花屋の女のことが好きで、贈る相手もいないのに毎週花を買いにくるんだ」 「ほわぉ……お互いに好きなんじゃないデスか!」 「うん……でも、どっちも内気で、いろいろ想像しては舞い上がったり、落胆したりして……相手の気持ちには気付かない」 「むむん……イライラしマスね?」 「かなりな……」 「それで?どなるんデスか?」 「ある日、男はやっと決意をして、女から花を買って、それを女に贈ろうとする」 「おおっ!やっとデスね?」 「ところが、女は男のことを叶わぬ恋と諦めて、すでに店を辞めてしまっていて、逢うことができない」 「ええっ!」 「この映画、最大の"がっかり"場面だ」 「で?どうなるんデスか? はっ!のだめわかりまシタ! 悲嘆にくれた男は、違う街に引っ越すんデスけど……その街のお花屋さんで彼女に再会して……。 『君のことがずっと好きだったんだよ、マリー!』『まぁっ!私もよ、ピエール!』って感じのハッピーエンドデスね?!」 「……なんだその少女漫画みたいな展開は……。 残念ながら、映画ではがっかりして終わりだ。 要するに、さっきのシーンがこの映画最大のがっかり場面であり、最大の見せ場ってことだ」 「ええー!なんですかそれ! ヒドイ!ひどすぎマス!金返せってんデスよ!」 「5分しか見てねーくせに……。 大体お前、金払ってねーだろ……」 「次は公園をお散歩しまショウ!」 カフェを出て、のだめが言い出した。 「おい……寒いんだけど……」 「寒いからこそ、恋人同士寄り添って歩くのがいいんじゃないデスかー!」 人もまばらなリュクサンブール庭園を、寒さに震えながら歩いた。 なにが嬉しいンだか、とりあえず、のだめは喜んでいるようだ。 「先輩、今日はのだめに付き合ってくれて、ありがとうございまシタ」 「……寒い。こんなデート、どこがいいんだよ?」 寒さに首をすくめながら、文句ばかり言う俺に、のだめは微妙な微笑みを浮かべた。 「さっきの映画の話ですケド……」 「ん?」 「のだめと先輩は……"がっかり"が最大の見せ場にならなくって、よかったデスね?」 のだめは、寒さに赤く染まった鼻をして、俺を見上げる。 「……まだわかんねーだろ? 俺たちの最大の見せ場が、どんなシーンになるかは」 「ぎゃぼっ!ひどい夫デス……」 「だれが夫だ……。 でも、とりあえず今日最大の見せ場を、がっかりにしなくて済む方法なら知ってるけど?」 寒いだけの公園をあとにして、旨いフランス料理でも食べさせてやろうと思ったのに、のだめは意外にも"早く部屋に帰りたいデス"と断った。 仕方ないのでマルシェに寄って、少しいい食材を調達して、アイツのいうところの呪文料理を作ってやる。 なにがデートだよ? 結局、こうなるのかよ。 「やっぱり夫の手料理が一番デス!」 「夫じゃねえ」 まぁ、いつも本当に旨そうに食ってくれるから……料理人として、こんなに嬉しいことはないけど。 ワインを飲みながら、あっという間に綺麗になっていく皿を、満足気に見つめる。 「これが俺たちの、今日最大の見せ場か?」 のだめは十分満足してるみたいだし……。 俺は、こんな日もたまにはいいかと思ったりして、言った言葉だったのに。 ところがアイツは……。 俺にはもう、何がなんだかさっぱり……わかんねー。 「……どうでショウ? のだめ……今日は泊まっていってもいいデスよ?」 「……へぇ……」 「先輩のやる気次第デスけど……」 「……風呂、先に入るか?」 「……お願いしマス」 ぷぷっ。先輩ってば、さりげなくバスルームに準備に行くみたいなふりして、鼻歌なんて歌ってマスよ? のだめ、なんとなくわかりまシタ。 つまんないことに、こだわってたみたいデス。 先輩が話してくれた、今日のがっかり映画じゃないデスけど……あれこれつまんないことにこだわって、本当に自分が欲しいものを欲しいって言わないと、それこそ馬鹿みたいデス。 先輩がのだめの事……当たり前みたいにしてくれるのだって、よく思えばそれは、二人の距離が縮まったってことで。 それに、今の先輩の反応を見れば……決して当たり前の事じゃなくて、その……えと……のだめとえっちするの、嬉しいみたいだし。 今日みたいに、お外でデートするのも楽しいケド……。 先輩と腕を組んで公園を歩きながら、早く部屋に帰っていちゃいちゃしたいって思ってたのは……絶対に先輩には内緒デス。 「じゃあのだめ、お風呂入ってきますケド……」 「う、うん……」 「……先輩、一緒に入りマス?」 「……」 先輩は、少し間があったあと、のだめのほうを振り向くと、こくりと首を縦にふった。 「じゃあ、先に入ってマスね?」 のだめと先輩の今日最大の見せ場は……これからデス。 --------End--- VirginSnow番外編、1つ目です。 付き合って2ヶ月くらい、女の子にありがちな悩みかな?とお話にしてみました。 ふいー、こういうお話は苦手みたいです。 なかなか二人が話しだしてくれなくて、難産でした。 書き出してからこんなに時間がかかったのは初めてです。 なので、こんなのでいいのか?とかなり悩みながらですがupします。 もう1本、真一クンサイドの悩みでお話を考えています。 また難産かもしれませんが……お付き合いいただければ幸いです。 もう2010年もまもなくですね。年内にupできるかどうか……。 間に合わなかったらごめんなさい。ガンバリマス! 2010.12.28 香水 |