芒果布甸/Mango pudding



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 ある休日の午後。


 前日の夜からのだめと二人きりで過ごして、朝はゆっくり寝坊して……。


 やっと起き出した昼過ぎ、カフェでランチをとり、目的もなくパリの街を手を繋いで歩く、そんな穏やかな午後。


 のだめが突然、なんの脈絡もなく切り出してきた。


 「のだめ前から聞いてみたいと思ってたんデスけど……」


 「なに?」


 「あの……初めて先輩が、のだめにキスしたとき……」


 「……」


 「どうしてあの時、キスしたんデスか?」


 「……なんで今さら……そんなこと聞くんだよ?」


 「えと……ずっと気になってたんデスけど、聞くきっかけがなかなかなくて……」


 「今は? なんかこの話するきっかけとかあったか?」


 「えと……ちょっと思い出しまシテ……」


 「……んなもん思い出すな。もう一度忘れろ」


 「えええー! なんデスか、それ?」


 「……」


 「黙るのずるいデス!」


 のだめがぎゃーぎゃーと騒ぎ始める。


 繋いだ手をぶんぶんと振り回して、まるで駄々っ子だ。


 行き交う通行人が不審な視線を投げかけてくる。


 「やめろ、恥ずかしい……」


 「先輩がのだめの質問にちゃんと答えてくれないからデス! ちゃんと答えてくだサイ!」


 「……なんでそんなこと……お前に命令されなきゃいけねーんだよ……」


 そのまま答えずに足を進めようとすると、のだめは突然立ち止まり、膨れっ面で言う。


 「命令じゃないデス! お願いしてるんデス! どうして先輩は、のだめのお願いを聞いてくれないんデスか? のだめはいつだって、先輩のリクエストにちゃんと答えてるのに……」


 「なんだよそれ……」


 「昨日だって、先輩のリクエストに応えて、のだめ恥ずかしかったのにネ「あーーーー!わかったから!それ以上言うな!」」






 言葉じゃ伝わらない






 パリの街中、日本語はわからないだろうと思っていても、膨れっ面でぎゃーぎゃーと騒ぐ女には好奇の視線が集まるわけで……俺はこの恥ずかしい状況を少しでも早く解消したかった。


 「……好きだからだろ?」


 「むきゃ?」


 「ほら、恥ずかしいからもう行くぞ……」


 手を繋ぎなおし、前をむいて歩きだす。


 「あの……先輩は、好きだと無理チューするんデスか?」


 「無理チューっていうな」


 「だってー、先輩あのとき、断りもなく突然だったじゃないデスか。あれは無理チューデス」


 「……悪かったな」


 「責めてるわけじゃないデスよ? 先輩がのだめのこと好きで、どうしてあそこで無理チューになるのか、知りたいだけデス」


 「……お前しつこい」


 「先輩にしつこいって言われたくないデスね? 昨日だって、のだめもう無理だって言ってるのに、先輩ってばも「あーーーーー!わかったから!それ以上言うな!」」


 「先輩ってば、恥ずかしがるくらいなら、しなきゃいいじゃないデスか……」


 「……喜んでたくせに。結局すごかったじゃねーか、お前。あのあとお前のあ「ぎゃぼーーーー!ごめんなサイ!のだめが悪かったデスから、それ以上は言わないでくだサイ!」」








 形勢逆転。


 どうだ、俺がどれだけ恥ずかしい思いに堪えているかわかっただろう?


 その上、過去の恥ずかしい思い出の理由だとか自分の気持ちなんて、今さら口になんてできるかっ。


 「先輩は女の子の気持ち、わかってないと思いマス……」


 のだめは、やっと大人しくなったかと思ったら、今度は静かに、それでも俺を責めるような口調でつぶやく。


 「どうせ、俺は女心がわからない、デリカシーのない男だよ! だから……ああいうことになるんだろ?」


 俺の逆ギレも気にせず、のだめは続ける。


 「そんなことないデス。先輩はキスもエッチも上手で、奏でる音楽はそれは繊細デスもん。

 でも先輩はあんまり言葉で言ってくれないカラ……、先輩 がどうしてのだめに蕩けそうに甘いキスをしてくれるのか、たまにはその理由を言葉で聞きたいんデス……」


 そういってのだめは俯いていた顔をあげ、俺をいつものように上目づかいで見つめる。


 それってお前……俺がお前に……はぁ、コイツはほんと恐ろしい女だ。


 「そんなこと言われなくても読み取れ。……妻なんだろ?」


 「ズルイ、こんな時だけ。普段は『夫じゃねー!』って拒絶するくせに!」


 再びのだめが騒ぎだす。俺はずるいだの、甘さが足りないだの、俺様で横暴なカズオだの……。


 俺の気持ちをわかってないのは、お前も一緒だろ?
  








 「っっ! 突然なにするんデスか……」


 「自分で考えろ。それとももう一回、してやろうか?」


 パリの街中、人々が行き交う路上で、俺は強引にのだめのうるさい唇をふさぐ。


 通行人にひやかされたって、かまわねー。


 もうあの時みたいに奇声もあげられないし、突き飛ばされもしないけど、やっぱり恥ずかしそうに顔を真っ赤にして黙り込むのだめ。


 のだめを俺に服従させる方法。


 効果は絶大だから。


 言葉でわかんねーヤツには、身体で教えるしかねーだろ?
 



--------END---


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 らいすサマから、拍手メッセージで突然振られたお題「強引なキス」でちょっと思いつきました。短めですが。
 イメージは、ロベール・ドアノーの「パリ市庁舎前のキス(Le Baiser de l'hotel de ville)」
 この写真大好きで、ポスターをずっと飾っていたのですが、昨年あんまりにもボロボロになってしまったので処分してしまいました。写真集、買っちゃおうかな?
 右腕に女性を抱き、覆いかぶさるようにキスをする男性に、キュンキュンします。俺様な真一クンのイメージにぴったり!


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