長いながーい無自覚期間をこえて、やっと恋人同士になった真一クンとのだめちゃん。
変態だけど可愛くて小悪魔なのだめちゃんと、何をやらせても完璧、男前だけど、のだめちゃんにはついつい甘くなっちゃう真一クン。
そんな二人が日常的に繰り広げているバカップル的行動に、周囲の人々は振り回され、あてられまくるという被害に日々に遭っているのです。
今日は、そんな二人のエピソードの、ほんの一部をご紹介しましょう。
パリの恋人
<友人 ターニャの場合>
「ターニャ、見てくだサイ!可愛いデショ?」
のだめがチアキに買ってもらったというサンダルを見せにきた。
オープントゥで、足の甲と足首にブルー系の2色のリボン。
足首にリボンを巻き付ける、バレリーナのトゥシューズのような華奢なデザイン。
のだめにしては珍しいタイプだけど……。
「アンタ、それで学校に行くつもり?」
「へ?そデスけど、何か?」
「あのねぇ……そのサンダルは日常使いするタイプじゃないの。
しかも、アンタみたいなドジっ子が日常使いしたら、あっというまに壊れるわよ?」
「失礼デスねっ!大人の女を舐めるんじゃないってんデスよ!
それに……春夏しかはけそうもないし……すごく可愛くてお気に入りなんデスもん……」
「まぁ……ワタシは忠告したからね」
「大丈夫デスよー、ターニャは若いくせに心配性すぎるんデス!」
「ぎゃぼっ!」
「あーあ……」
のだめはあれから、ワタシの忠告なんて全然お構いなしで、お気に入りのサンダルをヘビロテしていた。
その日も勿論、お気に入りのサンダルをはいていたのだが……コンヴァトの校門近くで、ついにのだめの荒っぽいヘビーユースに悲鳴をあげていた右足のリボンが、プッツリと根元から切れてしまった。
「だから言ったのに……」
「がぼん……歩けまセン……」
のだめに左肩を貸し、なんとか近くのベンチに座らせた。
「どうするのよ?
いくら初夏だからって、パリの街中を裸足で歩くわけにもいかないし……」
「ターニャ……」
「いやよ!面倒くさい……」
「まだ何も言ってないじゃないデスか……」
「アロー!千秋先輩、ちょっとお願いがあるんデスが……」
結局、のだめはチアキに泣きつくことにした。
なんでも、のだめに言わせれば、今日のアクシデントについては、チアキにも責任があると言う。
「ぎゃぼ!裸足で帰ってこいって言うんデスか!ヒドイ!
だって、大体、千秋先輩がこの間の日曜日に約束すっぽかしたから、こんなことになったんじゃないデスかー!」
なんでも、サンダルがだいぶ疲れてきていたので、新しいサンダルを買いに行く約束をしていたが、前日、深夜まで飲んでいた千秋は翌朝二日酔いで買い物の約束をキャンセルしたということらしい。
いったい、それのどこが、今日サンダルが壊れた責任がチアキにあるっていうことになるのかしら……。
新しいサンダル、チアキが買ってくれるの?とか、チアキが行けなくても1人で買いにいけるでしょ?とか、そもそもアンタがヘビーユースして1シーズン持たせられないってどうよ?とか……突っ込みどころが満載なわけで……。
チアキもワタシと同じ考えのようで、電話の向こうで抵抗しているようだ。
「あーそうデスかっ!!!
のだめがもし、裸足で帰ることになって、犬のウン〇を踏むようなことになったら、その足で先輩の部屋を歩き回ってやりマスからね!いいんデスね?
……なにがテロ行為デスか!は?脅し?人聞きの悪いこと言わないでくだサイよ?」
はぁぁ……日本語だから何言ってるかはわからないけど……きっととてつもなくくだらない痴話喧嘩的な会話が繰り広げられているのだろうと、のだめの語気から想像できる。
チアキが折れるのも時間の問題だろう……。
「のだめ?ワタシ、先に帰るね?」
「ターニャ待ってくだサイ!
千秋先輩、車で来てくれることになりまシタから、一緒に待ってまショウよ?送っていきマスから……」
やっぱり(呆)
ほーんと、チアキってばのだめに甘いんだから。
こんな甘い彼氏を持ってる女、ワタシが面倒見る必要なんかある?
でもまぁ、のだめだって、動くこともできずに、一人で待っているのも退屈だろうし……(アナタも十分のだめに甘いですよ?)
「し、しょうがないわねぇ……」
「うきゅ、ありがとデス!」
しかしワタシは、この時に帰ってしまえばよかったと、後悔することになったのだが……。
「あ、千秋せんぱーいっ!」
携帯に、そろそろ校門に到着すると連絡があったので、ワタシはもう一度のだめに左肩を貸して、もたもたと片足が不自由なのだめを校門まで運んだ。
私たちの前に、メガーヌが滑り込んできて、運転席から不機嫌そうな男が降りてきた。
「ったく、俺だって暇じゃねーんだからなっ!」
「ぎゃはぁ!先輩あいしてマス!ありがとデス!」
チアキはブツブツと文句をいいながらも、"ターニャ、悪かったな?"とワタシには労いの言葉をいい(のだめ世話係仲間)、助手席のドアを開けると後部座席からなにやら荷物を下ろし、のだめが助手席に座るのを手伝う。
「のだめ、ちょっとこっち向け……」
「ふぉ?」
「とりあえずサイズを見て、合わなければ取り替えてくれるってゆーから。
ほら、足出せ」
「むきゃ?ふぉぉ!」
チアキが取り出したのは、おニューのサンダル。
え?この短時間に買ってきた?
チアキは、のだめの足元にひざまずき、右足の壊れたサンダルを取り去ると、壊れていない左足のサンダルも、足首のリボンを手慣れた仕種で解く。
裸足になったのだめの足を片方ずつ掴むと、新しいサンダルを自らの手ではかせて、満足気に微笑む。
「うん、いいな。
ちょっと立って歩いてみろ。
サイズどうだ?歩きにくくねーか?」
「はい……。
サイズはちょうどいいデスよ?
歩きにくくもないデス。
どデスか?似合いマス?」
開けられた助手席のドアに片腕を乗せ、ポーズをとるのだめを、これ以上ないほど緩んだ顔のチアキが見守ってる。
「うん……いいんじゃね?」
もうっ……もうっ!なんなのよっ、その笑顔はっっ!
さっきまで、めちゃめちゃ不機嫌そうにしてたくせにっ!
そのプレイはなに?執事プレイ?
人前で恥ずかしげもなく……脱がせたり、はかせたり……。
めちゃめちゃエロいのよ!!!
やってらんないわよっっ!!!
<友人 フランクの場合>
「ひゃー、すっかり遅くなっちゃったよ!
Ruiの部屋ってどうしてあんなに散かるンだろ?
のだめにしろ、Ruiにしろ、女性ピアニストは片付けられないのがデフォルト?(んなあほな)」
フランクは最近付き合いだした恋人のRuiの部屋の掃除に時間がかかってしまい、甘い恋人同士の時間を過ごすこともなく疲れ果て、23時過ぎた深夜、家路を急いでいた。
「明日も学校だし、早く寝なくちゃ……
あ、あれ?チアキのメガーヌ?」
アパルトマンの入り口路上に止められた真一の車。
デート帰り、のだめを送ってきたのだろう。
声をかけて、一緒にアパルトマンに入ろうと、車に近づいたフランクが目にしたものは……。
「っっ!!!」
運転席に座る、真一の下半身に顔をうずめるのだめ。
そののだめを見下ろす真一の顔は、口元をゆるめ、頬を赤く染め、優しいまなざし。長く美しい指先はのだめの髪を撫でている。
な、な、な、ナニやってるの?!こ、こ、こ、こんなところで?!
やばいっっ!
こんなところ見ていたことがばれたら、あとでチアキからどんな報復を受けることになるか……(ビクビク)
ばさっ!
フランクは地面に四つんばいになると、ゆっくりと前進し、真一の車を通り越す。
くそっ!なんで僕がこんな格好で帰らないといけないだよっっ!
いやらしいことするなら、屋内でやってよっっ!
車内でしたいなら、せめて知り合いが通らないところでやってよっっ!
僕なんて……恋人の部屋で掃除してきただけなのにっっ!
ノダメとチアキなんて(見境なくイチャつくカップルなんて)……大っ嫌いだぁーーーっ!!!(涙)
実際のところ……別れるのが寂しいと泣いて腰に抱きついていたのだめを、まんざらでもない(というかかなり嬉しい)気分でなだめていた真一という車内の状況だったのだが、こうしてフランクに誤解されてしまうのも、二人の日ごろの行いの結果であり、このような誤解は二人の友人たちが山ほど持っているネタであった。
<アパルトマン住人 長田の場合>
足りなくなった画材を購入するため、久しぶりに外の空気にあたる。
ついでにマルシェに寄って、食材も購入して帰ろう。
フルーツは……あ、真一とのだめ。
真一、来てたのか?久しぶりだな?
ははーん、それでのだめはこの間から機嫌がよかったのか。
二人で仲良く買い物なんかしちゃって、やっぱり若いっていいな。
声を掛けようと近づいていくと……なにやら揉めているようだ。
「3つでいいだろ?
だいたい、お前この間だって、指に怪我したんだぞ?
たいしたことなかったからよかったものの……俺がいないときは、包丁持つのは禁止だ!」
「5つ欲しいデス!」
「だめだっ!リンゴ食べていいのは、俺がいる間だけ!」
ぷぷぷ……リンゴを5つ買って欲しいとねだる彼女と、多く買うと不器用な彼女が自分がいない間に怪我をするからと、心配する彼氏か。
相変わらず……バカップルだな。
そろそろ年長者の俺が仲裁に入って、丸くおさめてやるか?
そう思って、足を速めたときだった。
すねてうつむいていた彼女が顔をあげ、上目遣いで彼氏を見つめながらつぶやく。
「だから……リンゴ、多めに買っておいたら、また真一クンがすぐに来てくれるデショ?」
「なっ……」
「真一クン、今日もごはん食べたら、帰っちゃうんデスか?」
やばい……この雰囲気は……ここに山積みされたフルーツより甘いぞ。
「……6つください」
くるっ。
俺は、二人に気付かれる寸前の距離で踵を返し、アパルトマンに帰ることにした。
この糖度は、俺がからかえる範疇を超えている……。
いい年してたって、恥ずかしいもんは恥ずかしいんだぞっ!
<知人 指揮者松田の場合>
せっかくカロリーヌとひさびさのデートで、今夜は甘い夜を過ごそうと思っていたのに……。
また、わけもわからず怒られてしまった。
やっぱりパリジェンヌは気がつえーな。
あっさり先に帰っちゃうし……。
松田幸久は、パリのオペラ座のホワイエで、劇場内から押し出されてくる人の流れの中、呆然と立ち尽くしていた。
はぁぁ……つまんねーなぁ。
ちっとも予定通りになんて、なりゃしない。
今日は終日、アムールがテーマの予定だったのに……。
しょうがない、ホテルに帰って寝るか……。
出口に向かって歩き始めたときだった。
お、あれは……可愛くない後輩、千秋真一。
生意気にオペラデートか……。
ってことは、連れは変態ちゃんか?
ちょっとからかってやるか。
松田はニヤニヤと二人に近づき、声をかける。
「よっ!千秋くんじゃないの?」
「あ、松田さん……」
俺の声に、二人が振り返る。
あかさらまに、見つかったみたいな顔すんじゃねーよ。
「ほえ……ズボンおろさないとできない人……」
「どーも、変態ちゃん。
俺、一応、Mフィル正指揮者の松田っていうんだけどね」
「知ってマスヨ?
自分だってのだめのこと、変態ちゃんって言うクセに……」
ち、可愛くねーな。
彼氏の教育か?
そういって、非難めいた目で俺を見る変態ちゃんは。
へぇ……。
この前は風呂入ってるとこだったし、パジャマ姿しか見てなかったけど……。
オペラデートということで、変態ちゃんはちょっと大人びたワンピース姿だった。
ブラックのベルベット。胸元はVラインに深く切り込んでいて……豊かな胸の谷間が、上から覗き込むと角度によっては……。
……ごくり。
コノヤロ。普通じゃねーじゃねーか(胸)
すっ……。
「松田さん、今日はお1人ですか?」
「う、うん……俺のエリーザベトは多忙でね。
さっきまで一緒だったんだけど、急用ができちゃったんで……」
コイツ……俺の視線に気付いて、さえぎるように立ち位置変えやがった。
「そうだ、これから食事か?
よかったら俺がごちそうしてやろーか?」
千秋の肩をぐっと掴み、もう一度、真っ白な谷間を覗いてやろうと動くが……。
「のだめ、ちょっとこれ持ってろ」
「ぎゃぼ!は、はい……」
真一は松田を睨みつけたまま、手にしていたプログラムをのだめの胸元に押し付ける。
のだめは仕方なく、両手で抱え込むようにプログラムを支える。
ちっ、隠しやがった……。なかなかやるな、後輩クン。
「今日はちょっと……急いでいるので失礼します。
またぜひ、別の機会に」
おーおー。後輩クン、すごい勢いで睨みつけてくるよ。
「あっそ。
じゃあ、変態ちゃんまたね。
そうだ……今度は変態ちゃんだけでもいいよ?
彼氏には内緒でね」
「ぎゃぼっ!」
くっくっくっ。
去り際に見た後輩クンの顔、サイコー。
一瞬、殺意なんてものを感じちゃったよ。
クールに見える黒王子も、彼女の前じゃあんなになるのか。
大変だね、普通じゃない彼女を持つと。
ちょっと羨ましいと思ったことは、口が裂けても言えねーけどな。
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先日の60000HITお礼SSで、ゲッターのpommeサマからのリクエスト「第3者目線で……」を三人称と取り違えてしまい(笑)今回はそのお詫びSSになります。
ターニャ、フランク、ムシュー長田、松田さんの4人の視点から、二人のバカップルエピソードをご紹介。
「さりげなくジェントルマンな真一クンと意外に大人っぽいのだめちゃんで、美しいパリにしっとり溶け込んだオトナな愛溢れる美男美女」とは、香水の脳内ではオーダー通りにいかず、力不足で申し訳ございません。pommeサマ、ごめんなさい!今後も精進してまいります。
それでは、今後も芒果布甸/mangopuddingをよろしくお願いします。
2011.1.29 香水
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