何をやってもうまくいかない日がありマス。
やる気だけはめいっぱいあって、がむしゃらにピアノに向かってみるケド……。
全然、思ったような音は響いてこなくて。
弾いても、弾いても、音楽が指先からこぼれていくような感覚。
あなたのピアノには、魂がこもってないわ
そんなこと……決めつけられたくないってんデスよ!
悔しくて、悲しくて……でも、やる気だけが空回りして、次第に本当にその通りなんじゃないかって、自分のピアノには、人に聴いてもらうような魅力なんか、何ひとつないんじゃないかって思えてきて。
美味しい関係
忙しい日々の生活の中で、音楽ばかりになっていると感じると、俺は息抜きに料理をする。
音楽は大好きだし、ずっと聴いていたって飽きるなんてことはないけど、それでもやっぱりそれだけじゃダメだって思うから。
時間があったので、少し手の込んだ料理をしようとマルシェに出かける。
メインを肉にしようか、魚にしようかと考えていた時、なぜか思い浮かんだのは恋人の顔。
料理をするのは好きだし、それを味わいながら食べるのも好きだけど、アイツが俺の生活に入り込んできてからというもの、自分の作った料理を誰かが美味しい≠ニ喜んでもらうという楽しみが増えた。
アイツ……何してるかな?
聞くまでもない、何が食べたいと聞けば肉と答えるに決まっている。
アイツが好きそうなメニューを頭の中で組み立てつつ、買い物を続ける。
事前に連絡をしたところで、予定通りになんて行かないから。
それでも買い物を終えて、部屋に戻る途中で携帯に発信してみる。
RRR……。
コール音だけで留守電に繋がるけど、これぐらいは想定内だ。
構わず料理を始める。
コトコトと心地よい鍋のたてる音に耳をたてながら、もう一度長めに携帯を鳴らす。
……プッ。
「……」
「……元気か?」
「……ドモ」
「……お前が腹減らしてるとろくな事になんねえ。旨いメシ食わせてやるから三十分で来い」
「え、のだめ今ピアノを……」
「そのまま弾いてたってどうにもなんねーよ。いいから早く来い」
「え、あの……」
のだめはすでに通話の切れている携帯に向かって、聞き届ける相手のない悪態をつき、大きくため息をついた。
「遅い。十分遅刻」
合い鍵で入ってきたのだめに、真一はキッチンから顔も出さずに声をかけた。
「これでもダッシュで来たんデスよ……」
重い脚取りでキッチンの前までやってくると、のだめが不機嫌そうに言い訳をする。
「……座ってろ。今、持って行く」
真一はキッチンからのだめの顔を覗き込むと、すべてを覚ったように口元を緩ませる。
相変わらず不器用なヤツ
とっておきのワインストックの中から、口当たりが良くて飲みやすいけど、アルコール度数がちょっと高めのものを選ぶ。
「え、のだめワインは……」
「いいから飲め」
有無をいわさずのだめのグラスにワインを注ぐ。
「乾杯」
グラスを掲げ、のだめのグラスに重ねれば、しぶしぶ口に運んだ。
テーブルには、コイツの好きな料理ばかりが、今日も最高の出来で並んでいる。
「……いただきマス」
「どうぞ」
俺はワインを飲みながら、のだめがゆっくりと料理に手を伸ばすのを見守った。
美味しい料理と、口当たりのいい好みのワイン。
痒いところに手が届く、極上のおもてなし。
ホントに厭味な男デスよ。
グラスは気付かないうちに、いつも満たされていて。
美味しい料理に誘われるまま、いつもより多めに飲まされていたのには気付いていたケド。
気付かないふりをして、ほろよいの体をつくるのも乙女の心意気デスよ?
「ふぅ……のだめ、お腹いっぱいデス。
それに、先輩が知らない間にたくさん飲ませたカラ、もう帰れないデスからね?」
「……別にいいんじゃね?」
そんな風になんてことない≠チて顔して、先輩はいつも余裕。
悔しい。
煮詰まってるのだめを上手く連れ出して、すっかりリフレッシュさせて。
「わっ! っぶねーな……」
「むかつくんデスよ……」
先輩をラグに押し倒して、強引にくちびるを塞いでみる。
欲望をそのままぶつけるような、噛み付くようなキス。
もちろん先輩は抵抗しない。
細いけど、筋肉質で硬い体の上に跨って、いつものようにきっちりと着込んだワイシャツのボタンを乱暴に外して。
そのすべらかな胸に、歯を立ててみる。
たまにはのだめが主導権、握ってみたいんデス。
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美味しい料理とワインをいただいたのだめちゃんと、諸々美味しくなったのだめちゃんを頂いたであろう真一クン。
この場合、どっちがオイシイ思いをしたのかという話(笑)
ええ、煮詰まっているのは香水です(汗)
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