芒果布甸/Mango pudding



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 のだめが一人旅から帰ってきた。


 強引に連弾をして、もう一度俺の胸の中へ抱え込んで。


 結局、コンヴァトに戻って音楽の勉強を続けることになったけど……。


 俺たちの関係は、今までと微妙に違うような気がする。


 今までは無遠慮に、俺の心の垣根をするすると野良猫のように掻き分けて潜り込んできていたくせに、何だか最近はアイツから一線を引いている気がする。


 だから俺は、のだめがまたいなくなってしまわないかと不安で……いろいろと余裕がない気がする。






 俺の女に手をだすな






 のだめにとっては、ほんのちょっとした一人旅のつもりだったのに、パリに戻ってみればいろんな人がおかえり! よく帰ってきたね!≠ニうれしそうに迎えてくれた。


 まるで、帰ってこないと思っていた人が奇跡的に生還したかのように。


 うれしいケド、ちょっとくすぐったいような、恥ずかしいような、不思議な気持ち。


 だから、今まで自分がみんなとどう接していたのか……どんなふうにしているのが自然なのか、のだめ、よく解らなくなっちゃったんデス。


 ターニャたちには、のだめがいない間、先輩が身を持ち崩してたって聞いたけど……。


 確かに、ニナの家で連弾をしたあとの先輩は……はうん、甘甘でしたけど……。


 でも、のだめも学校に戻ってまた今まで通りの生活に戻った今は、先輩はあいかわらず、今まで通りに見える。


 のだめには、身を持ち崩す千秋先輩なんて想像できまセン。








 なんの予定もない週末、約束はしてないけど……ちょっと先輩に逢いたくなった。


 今までだったら部屋におしかけて、怒られながらも纏わり付いて……そんなふうに、なしくずし的に二人の時間を過ごしていたけど、のだめはもっと先輩に恋人としてきちんと向き合ってもらいたくて……。


 まずは電話してみまショウ!


 「……もしもし、のだめ? どうした?」


 寝起きのような、ぽやんとした声の先輩。はうん、可愛いデス。


 でももう十時デスよ?


 「昨日、シモンさんとテオとひさしぶりに飲んで……今、お前の電話で起きた。帰ってきた時間? 覚えてねえ……うん……二日酔いかも」


 むん、タイミング、最悪デスね? のだめが逢いたいなんていったら、断られちゃうカナ?


 それに、寝かせてあげたい気もするし……。


 のだめが躊躇して黙り込んでたら……。


 「……約束はしてないよな? なに? 今日、予定ねーの? そうだな……これからシャワー浴びて……どっかで待ち合わせてランチでもするか?」


 むきゃ? 先輩のほうから誘われちゃいまシタ。どういう風の吹き回しでショウ?
  








 先輩のお家の近くにある、行きつけのカフェで待ち合わせしまシタ。


 めずらしく、のだめのほうが先に到着したみたい。


 二人のいつもの指定席には残念ながら先客がいて……のだめは仕方なく店の奥に見つけた席に腰を落ち着ける。


 むきゃ? 時間を確認すれば、まだ約束の三十分も前でシタ。のだめってば気合い入れすぎ?









 休日のカフェ。


 ランチの時間帯だから、店は込み合って満席状態。


 のだめが三十分前に到着しておいてよかったデスね?


 待ち合わせの十分前、ぼんやりと入口付近を見ていたら……はぅん、チノパンにVネックのインナー、コットンジャケットのカジュアルな先輩。


 二日酔いかもなんて言ってたけど、いつものようにすっきりと涼しげな目元。今日も素敵デス。


 手をあげて、こっちに気づいてもらおうと思ったら……ぎゃぼん、いつもの席がちょうど空いて、先輩は迷いもなく、そちらの席に一直線に向かってしまった。


 のだめが先に来てるっていう可能性については、考えないわけデスね。


 先輩は店内にのだめを探すこともせず、のだめに背をむけて座ってしまい まシタ。


 のだめが先輩のところに行けばいいことなんだケド……なんだか気づいて欲しい気もするし、ちょっとイジワルな気分になってきて、少し様子を見てみることにしたんデス。


 先輩は、のだめに背を向けたまま、ジャケットのポケットからペーパーバックを取り出すと読みはじめる。


 長い脚を組んで、ペーパーバックを読む先輩は、そこだけ映画のワンシーンみたいで見惚れてしまう。


 はうん、ドキドキしてきまシタ。すっかり先輩に声をかけるきっかけを失ったまま、のだめはこそこそと先輩をのぞき見してたんデス。









 「あの……失礼ですが、あなたはロンドンでシュトレーゼマンとピアノコンチェルトをされた、NODAMEさんではありませんか?」


 フランス人男性に突然、声をかけられました。


 「はい、そデスけど……」


 のだめが答えると、男性はぱっと笑顔になり、隣の席に断りもなく座り込む。


 「トレビアン!僕はテレビで見たんですが、あれ以来あなたの大ファンなんです!こんなところでお会いできるなんて!」


 そういうと、男性は突然、のだめの手を両手で握りしめまシタ。


 「ぎゃ、ぎゃぼっ!」


 男性は興奮状態で、のだめのことなんてお構いなしで、手を握ったまま、しゃべり続けていて……ど、どうしまショウ?









 「おい……その手を放せ」


 突然、真っ黒のオーラを纏って先輩が現れた。


 「あ、せんぱ……」


 先輩はとても怖い顔で男性を見下ろし、その手を掴むと、すごい力で引きはがす。


 「ぎゃぼっ!あ、あのせんぱ……」


 唖然とする男性を睨みつけると、凄んだ声で先輩は言ったんデス。


 「コイツは俺の女だ。ナンパなら他をあたれ……」


 のだめも男性も、あっという間の先輩の言動にぽかんと口をあけたまま……。


 でも、驚いていた男性の顔が、突然なにかに気づいたように笑顔になる。


 「あっ! もしかしてあなたは、マルレ常任のチアキではありませんか?」


 「は?」


 「そうでしたかー! NODAMEさんのパートナーが、マルレのチアキとは!
 ファンとして、今日はうれしいことばかりですよ!」


 男性は立ち上がって、今度は逆に驚いている先輩の手を両手で握りしめてぶんぶんと振るとこれからもお二人の活躍を楽しみにしてますよ!≠ニ言葉を残し、笑顔で去っていった。


 「え? あ、あれ? ナンパ……じゃな、い?」


 「はうん、俺の女……先輩、もう一回言ってくだサイ……」


 先輩を見上げると、ありえないくらい真っ赤な顔。


 「真一クン、とりあえず座ってくだサイ?
 真一クンの女の、のだめの隣に」


 先輩は力なくのだめを睨みつけ、何か言おうとしたけど、口をぱくぱくするだけで、言葉は出てこない。


 結局へなへなと座り込み、がっくりとうなだれると、両手で頭を抱えてうんうん唸ってる。


 「はうん……のだめ、しばらくあの台詞だけで、生きていけそうデス……」


 「……はぁ……」


 「のだめはいつまでも真一クンの女デスよ? だから、安心してくだサイ?」


 「なぁ……今のこと、忘れてくんない?」


 「絶対にいやデス!」


 「……お前、性格悪いな」


 「でも、真一クンの女デスよ?」


 「……はぁぁ……」


 「……真一クン、お腹すいてマス?」


 「……いや、俺はまだ平気だけど……」


 のだめはすくっと立ち上がると、真一の腕に手を差し入れ、立つように促す。


 「な、なんだよ? メシ、食わなくていいのかよ?」


 不思議そうな顔で立ち上がった真一の腕にぎゅっとしがみつくと、のだめは出口に向かって歩きだす。


 「お、おい……わけわかんねーんだけど?」


 店を出たところで、のだめは立ち止まると、真一を見上げて言った。


 「のだめ、ムラムラしちゃって……。
 早く二人っきりになりたいデス。

 ね? いいデショ?」


 真一を上目遣いで見つめるのだめは、恥ずかしそうに頬を染めて。


 「……お前、もうちょっと言葉選べよ……」


 あきれたようにつぶやいた真一は、腕に絡まっていたのだめの手をつかみ、手を繋ぐと、早足で歩きだした。


 真一の部屋に向かって。
 



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 70000HITキリリクSSです。
 ゲッターのsasatomoサマからのリクは「パリ恋人時代(あまあま)も大好きですが、大学無自覚時代(やきも千秋)も大好物です♪どちらでも構わないのでお任せで素敵なお話を待ってます」とのことでした。

 現在、連載で無自覚ではないですが音大モノをやっているので、今回はパリ恋人時代(あまあま)で書いてみました。
 いかがでしょうか?

 sasatomoサマはじめとする、これまで当サイトにお越しくださった皆さまに感謝申し上げ、ここに献上いたします。
 今後ともよろしくお願いします。

 2011.2.19 香水

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