「真一クン……どしたんデスか?
朝起きてからずっと……ん……はぁ……」
「……わかんねーけど……べつに……いいだろ?」
熱に浮かされたような、とろんと焦点のゆるんだ瞳。
そんな色っぽい顔で言われたら……逆らえるわけなんかない。
真一クンは……ずるいデスよ。
kissholic
パリから西へ20キロ、サンジェルマン・アン・レーのアパルトマンに二人っきりでやってきて。
真一クンがこんな計画していたなんて……ちょっと意外でシタけど。
1日目は……ずっと部屋にこもって、ただ抱き合って。
押し殺していた気持ちをぶつけるように、言葉もなく、激しく求められて。
2日目は……昼近くまで、だらしなくベッドで過ごして。
「ごめん……身体、辛くない?」
「ふふん……真一クン、優しいデス」
「……バカ」
恥ずかしそうに笑う、彼がとても愛しくて。
これは昼食だからって、いつものように手早く用意された食事。
「少し……散策してみるか?」
「はい! せっかくデスから。
ドビュッシーのお家とかあるんデスよね?」
「うん……今は博物館になってるけど。メシ食ったら行くか?」
「はいっ!」
高台にあるアパルトマンから、坂を下りながら中心部に向かう。
「ドビュッシーの生家に行く前に、ちょっと寄り道してもいい?」
「いいデスよ? どこデスか?」
「モーリス・ドニ美術館」
「ドニ?」
「ほら? オルセーでも見ただろ?」
「ふぉ? 美術館というより、教会みたいデスね?」
「もと修道院だったところを、自分の住居にしたらしい」
美しく手入れされた緑の中に、ひっそりと佇む白壁の建物には、アイビーが我が物顔でからまっている。
「ふぉ……思い出しまシタ。独特の緑色の木立の中に、ピンク色の天使サンが浮遊してる絵……のだめ、ちょっとドニサンって、トリップしちゃってる人かと……」
「ぷっ! お前と気が合いそうだな?」
「むきっ。宗教画だったのデスね……電波じゃなかったと……」
「かなり信仰のあつい人だったらしい」
「うわ……美術館というより、お金持ちのサロンみたいデス……」
素朴な教会のような外観とは違って、内部は瀟洒な住居に手直しされ、壁面や建具なども利用した美しい展示は素晴らしい。
「オルセーのドニさんとは、また作風が違いマスね……ほわお……すごく綺麗な色使いデス……」
絵画だけではなく、壁画やステンドグラス、庭園内の彫刻なども楽しみ、街の中心部へ向かった。
観光案内所となっている一階を通り抜け、中庭から二階に上がると、展示室になっている。
窓際にかけられた、ドビュッシーの肖像画に向かって進む。
「む……ずいぶん偉そうデスね?」
「偉いだろ? お前なんかより」
「むきっ……ほわぉ……この写真のドビュッシーサン、ピアノ弾いてマスね?」
「……サティの家らしいぞ」
「ふぉ? 北斎の富嶽三十六景?」
「親日家だったからな、ドビュッシーは」
「むきゃ? 漆塗りの鯉? はぁ……のだめ金色の魚≠チて、もっと小さくてひらひらした熱帯魚みたいな可愛いオサカナ、想像してたのに……」
「ぷっ! 思いっきり錦鯉だな、これ……」
「がぼん……」
三階のコンサートホールには、ドビュッシー愛用のスタインウェイが置いてあった。
「ほわぉ……」
「……弾いてみたい?」
「イイエー。恐れ多くて。ヘタに弾いたら、怒られそうで」
「くっくっくっ……喜びの島″。なら気持ちのまま、弾けるんじゃね?」
「……どうでショ?」
そういって、いたずらっ子のように笑う。
のだめのくせに、生意気に口ごたえしやがって。
でも、そんな瞳で見つめられたら、何も言えなくて。
もう疑う隙もないほど、自分の気持ちも、アイツの気持ちも、わかりすぎるほど理解しているから。
「ん……はぁ……」
3日目。朝から何をするというわけでもなく、部屋で過ごしている。
朝食を運んできたアイツに。食事の合間に。食後、ソファーでコーヒーを飲みながら。ピアノを弾くアイツに……。
ふと気付くと、ついキスをしてしまう自分がいる。
今だって、キッチンで昼食の支度をする俺のうしろで、たわいもないおしゃべりをするアイツを振り返り、思わずキスしてしまった。
「はぁ……なんでだろ?」
俺の向かい側で、俺の作った食事をいつものように美味しいと奇声をあげながら、よく動く唇から目が離せない。
無意識に手を伸ばして、キスしたいと考えている。
ソファーに移動してコーヒーを飲みながら、ぼんやりと考えていた。
のだめの意味不明なおしゃべりを聞くのはキライじゃない。アイツの鈴の音のような声は……か、可愛いと思うし。
でも今は……可愛い声も、たわいもないおしゃべりも耳から抜けていって、言葉を紡ぐくちびるの動きから目が離せない。
「……ぱい、……もう、先輩ってばっ!」
「う、うん……」
のだめは、そんな俺の様子にあきれたように大きくため息をつくと、ソファーの上に両足をたたんで上がりこみ俺に体ごと向き合と、俺の顔を両手で挟みこんだ。
「……なに?」
「もう……仕方ない恋人デスね?
いいデスよ? 真一クンの気がすむまでドウゾ?」
「……は?」
「キス、好きなだけしてくだサイ?
のだめのくちびる、今日は真一クンに一日貸し出しマスから」
「……後悔すんなよ?」
「ぷぷ……素直じゃない真一クン!」
何度でも、一日中でもキスしていたい。
もう俺は……NODAME?OLICだから。
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G.W、どこに行く予定もありませんが、妄想力でパリ郊外、サンジェルマン・アン・レーへ逃避行(笑)
ネットで検索してると、とっても素敵なところですねぇ。
パリからは30分くらいでいけるようなので、パリに行けたらぜひ立ち寄りたいです。
モーリス・ドニに対するのだめちゃんの感想は、香水自身が今まで思っていたことで、今回、サンジェルマン・アン・レーを調べていた時に、ドニのほかの作品や解説を読んで、妄想画ではなく宗教画なのだと気付きました(笑)
でも、オルセーにも展示されている緑の木立は、とても好きな作品です。
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