約1ヶ月ぶりに右手に絡められた、真一の温かい手のひら。
そこから熱が生まれて火がついていくように、全身が火照ってゆく。
「あの……せんぱ……真一クン?」
足早にホテルの部屋に向かう真一の背中に向かって、のだめがつぶやく。
「ん?なに?」
ジャケットの胸ポケットからカードキーを取り出し、性急にドアを開ける。
バタンっ。
「まずはこっち……」
真一は腕にかけたままだったのだめのコートをベッドに放り投げると、のだめの腕をとり引き寄せ、両腕の中に閉じ込める。
「あの……真一クン?」
胸の中で、のだめが戸惑うようにつぶやく。
「なんだよ?充電しなくていいのかよ?」
「えと……それは嬉しいお申出なのデスが……」
「俺にも充電させろ」
近づいてくる真一の美しい顔に、のだめは流されそうになるが……。
「待ってくだサイ……」
Elevator Kiss<in the Hotel's Room>
のだめの手のひらが、真一の唇をさえぎる。
「な、なんだよ……」
「あの……今日はその……突然こんなことになりまシタよね?」
「こんなことって?」
「その……ほ、ホテルっ!にお泊り?」
「まぁ……そうだな」
「部屋をとったということは……そのぉ……これから……のだめと真一クンは……え、えっちをするわけデスよね?」
「……なんだよ?嫌なのか?」
「い、嫌じゃないデス……」
「……えっ!も、もしかして……アレ?」
真一は思いだしていた。
まだ付き合いはじめの頃。
ヴァージンののだめが、やっと自分に捧げてくれると告白してくれたあの日。
あの日も自分は今日のように、演奏旅行から帰ってきて、久しぶりに目にしたのだめに止まらなくなって……。
そしてあの日も、このオチだった。
マジかよ……(がっくり)
「ぎゃ、ぎゃぼ!ち、違いマス……。
の、のだめはノープロブレムデス……」
「おい……焦らせんなよ……」
「だ、だって……真一クンの目、このまま始めちゃったら、止まらなさそうだカラ……」
「……だからなんだよ?悪いか?」
「そじゃなくて……アレデスよ」
「は?」
「こんな突然のことで、持ってるんデスか?アレ……」
「……あっっ!……持ってない……」
「よかった……」
「なんでよかったなんだよ……はぁ……」
「だって……旅行帰りで、コ、コンドームなんて恋人が持ってたら……のだめ100%浮気を疑いマス」
「だからって……はぁ……お前の中では解決なのかよ……」
「え……」
「……だから、しなくて平気なのかって言ってんだよっ!」
「のだめにキレないでくだサイよっ!!」
真一とのだめは、いったんベッドに腰をかけ、落ち着くことにした。
「……ごめん……はぁ……」
「その……それ以外の方法っていうのは……」
「……なくはないけど、確率は上がるぞ」
「ベッドサイドに置いてあったりは……」
「ラブホじゃねーんだから……って、お前と行ったことあったっけ?」
「ないデスけど……峰くんから教えてもらったことがありマス……」
「……お前ら、ろくな話してねーな……」
「あっっ!」
ぐったりと肩を落とし黙り込んでいた真一が、突然思いついたように声を上げると、ミニバーに駆け寄り、扉をあけて覗き込む。
「どしたんデス?」
「前に……北欧かなんかでホテルに泊まったとき、ミニバーに入ってたことあんだよ、コンドーム」
「真一クン……それどうしたんデスか?」
「いや、どうも?
……ばっ、酒飲もうとして開けたら、たまたま入ってたのを見つけただけだよっ!」
「真一クン……必死デスね」
「はぁ……やっぱねーや……」
「どします?お風呂入って寝まショーか?
それとも……帰りマス?」
「はぁーーー(大きくため息)」
俺って本当にバカだ。
久しぶりののだめにやられて、そのまま急いで家に帰ればいいものを、考えなしにホテルになんて……。
「聞いたことはねーけど……一流ホテルだからな。
サービスの一環でもしかしたら……ってこともある。
最後にこれだけ……これ試してだめだったら諦めて寝る」
「ふぉ?なんデス?」
「はい、コンシェルジュのデスクです」
「あの……夜遅くにすみません。少々お尋ねしたいのですが……」
「はい、どのようなことでございますか?」
「その……大変申し上げにくいことなのですが……その……実は私、1ヶ月ほど仕事でパリを留守にしていまして……」
「それはさぞお疲れのことと存じます」
「はぁ、ありがとうございます……で、1ヶ月ぶりにパリに戻ってきたのですが、その……空港に恋人が迎えに来てくれていまして……」
「それはそれは……よろしゅうございましたね?お疲れも吹き飛ぶところでございますね?」
「そっ、そうなんですよっ!
疲れが吹き飛びまして、その……1ヶ月ぶりに逢った恋人と……その……家に帰る時間も惜しんで、早く二人きりになりたいと、こちらのホテルに……」
「左様でございましたか。それはそれは、当ホテルをお選びいただき、誠にありがとうございます。光栄でございます」
「その……ところがですね……二人きりになったところで……その……必要なものを携帯していないことに気付きまして……」
「……左様でございましたか。
それは……大変僭越ではございますが、いわゆる避妊具といったものでございますか?
間違っていたら、大変申し訳ございません」
「い、いいえ……おっしゃるとおりのものです……」
「左様でございますか!それでしたら幸いでございます。
当方でお役に立てるかと存じます。ただ今より、従業員に持たせてよろしゅうございますか?」
「あの……その……」
「白い封筒にお入れして、ただお渡しするように申しつけておきます。
お部屋番号を教えていただけますか?」
「は、はい……」
「すげーな……俺は感動した。
さすがコンシェルジュ発祥の地、フランスのコンシェルジュ。
最高のサービスだ……」
「え?あったんデスか?」
コンコンっ。
「Oui!」
ドアを開ければ、かっちりと制服を身に纏ったボーイが、うやうやしく真っ白なホテルのロゴ入りの封筒を手渡す。
チップを渡し、ドアが閉まると、封筒を手にのだめのところに戻った。
「ふぉぉ……」
「……」
封筒の中には、S・M・Lすべてのサイズが、3つずつおさめられている。
「すげーな……これが一流のサービスか?」
「えと……真一クンのサイズは……これ?」
「……うるさいっ」
封筒の中から、俺サイズのブツを3つすべて取り出すと、ベッドサイドに並べる。
「さ、使い切るからな。覚悟しとけよ?」
「ぎゃぼっ……」
真っ白な、しわ一つないダブルベッドに、ブラックのドレスを身に纏ったのだめを組み敷く。
「し、真一クン、シャワー浴びなくていいんデスか?」
「お前がよければ……俺はもう、待てないから……」
「うきゅ。のだめはそのほうがいいデス。
どうぞ?」
「じゃあ遠慮なく……あんま匂い嗅ぐなよ?」
「えー、それは約束できないデス」
「変態……」
「好きなくせに……あん……」
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Elevator Kiss<Paris Night>の続編でございます。
続編のご希望にお答えしてみましたが……えへ、すん止めプレーでごめんなさい(笑)
最近、真一クンいじめがクセになってきました、アヘー。
2011.1.29 香水
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