チェレスタくらいで共演だとか、しばらく1人で大丈夫だとか、そんなのだめの無意識の挑発に乗って、俺はポケットの中で所在無さげに指でもてあそんでいたエンゲージリングを、気がつけばのだめの左手薬指に嵌めていた。
「部屋、取ってあるから……。
かまわねーよな?」
「……はい」
最初は、海老蔵がどうとか、茶化すようにはしゃいでたアイツも、どんどん無口になってきて……。
少しは驚かすことができたらしい。
いつもいつも、俺ばっかりじゃ不公平だからな。
俺だってやるときはやるンだよ!
Elevator Kiss<Engagement、その夜>
驚きまシタ。
突然、のだめの左手をとったかと思ったら、薬指に嵌められたハート型の可愛いリング。
先輩ってば、むき出しのエンゲージリングをポケットに忍ばせていたなんて……ぷぷぷ。
それに……のだめのプロポーズ大作戦を立ち聞きされてしまって、久しぶりに竹彦叔父さんの古伊万里攻撃を受けたところだったカラ……。
のだめはゲネプロのパパゲーノに自分を重ねてしまって。
試練だった沈黙が守れなかったのだめは、もうこのまま1人、ピアニストとして生きていくしかないと思っていたのに。
先輩はこのままきっと、巨匠に育っていって、いつかミルヒーみたいに女好きのエロおやじになって、のだめのことなんて忘れてしまうんじゃないかと……(おい)
本当に、こんな形の"約束"は青天の霹靂で。
「なかなかやりマスね?」
「また上からかよ……」
「このルビー、ベトナムで掘ってきてくれまシタ?」
「なんの話だ……」
「海老サマデスよー!たった4時間でおっきいルビーを掘り出したんデス!
やっぱり何か持ってる人は違いマスよね?
先輩も、ちゃんと持ってマスよね?のだめ心配デス……」
「はぁぁ?!おまっ、もう返せっっ!」
「いやデスー!これは何があっても返しまセン!」
夢みたいで、ドキドキしちゃってること、先輩に気付かれたくなかったから、そんなふうにふざけて、茶化したのに……。
「部屋、取ってあるから……。
かまわねーよな?」
「はい……」
こんなこと、初めてじゃないし、今さらドキドキなんてってわかってるのに……。
ここのところ、先輩はオペラに夢中……っていうかいっぱいいっぱいで、ネガティブモード全開だったし。
三善のお家にいたカラ、そ、そゆうことも結構ごぶさただったし……。
かぁーーー。
のだめ、たまに忘れちゃうんデスよ?
先輩はのだめの恋人で、男の人だってこと。
だって、みんなと一緒にいる時の先輩や、三善のお家にいる時の先輩は、全然のだめに甘くないし、ひどいときは、のだめのことを見もしないし。
それに先輩は……スイッチの切り替わりが早いというか、難しいというか……。
いつも突然なんデス。
さっきまでは、桃ヶ丘時代の千秋先輩モードだったのに、途端にのだめの恋人の真一クンモードになっていて……。
はうう……。
色っぽいデス!フェロモンがむんむんデス!
のだめ、鼻血出そうデスよ!!!(おい……)
エレベーターを待つ間も、アイツは俺のうしろで言葉もなく、おとなしくて……。
こんなこと、初めてのことでもないのに緊張してるのか?
到着したエレベーターに、おとなしいのだめを乗せ、階数ボタンを押す。
「真一クン……のだめ、ドキドキしてきまシタ……」
変態のくせに、たまにそういう可愛いことを、ここぞというところで無意識に言うんだ、コイツは。
俺は思わず振り返って、のだめの肩を掴む。
一瞬、驚いたように顔をあげたのだめは、頬をピンク色に染めて。
「期待に応えてやるよ……」
驚いたように目を見開いたのだめに、胸が高鳴る。
そのまま顔を近づけると、のだめは素直に瞳を閉じた。
そっとキスを解くと、真っ赤な顔をして、ちょっとすねたように唇をとがらせて、俺を非難めいて上目遣いで見つめて。
「先輩ずるいデス。ドアちょっと開いてまシタよ?
いつもは完全に閉じるまで、絶対しないくせに」
「どうしてそれが"ずるい"ンだよ?」
「だって……びっくりするカラ……余計にドキドキしちゃうじゃないデスか……」
そういうお前のほうが、よっぽどズルイんだよ!
もう……もう……コイツは……。
「真一クンのえっち……」
「……だから言っただろ?
期待にこたえてやるよ。覚悟しとけよ?」
ちーん。
エレベータがフロアに到着する。
「どうぞ?」
「……どもデス」
のだめを見つめた真一クンの目、やっぱりすごーくえっちデス!
もうっ!のだめ期待しすぎちゃって、ドキドキデスよ!!!
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ひさびさのSS。今、連載どっぷりなので、リハビリ的な(笑)
Engagementの隙間?を埋めるような感じで、以前にエレベータ内部を少しだけ拍手お礼文にあげていたものにプラスして書いてみました。
エレベータ☆キス完全版って感じでしょうか?
ああ、手抜きと言わないで(笑)
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