芒果布甸/Mango pudding



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 パリへ渡ってから、季節が一周した。


 指揮者コンクールで優勝して、変態の森の住人になって……。


 俺は住人かもしれないが、俺自身はノーマルでいたい。
 いやっ!ノーマルなはずだっ!俺がへ……(口に出すのも嫌)わけがない。……そのはずだ。


 できることなら……のだめも少しずつ更正させて……いや、せめてこれ以上、ひどくならないように俺が正しい道に導いてやらなければならない。


 そう思っているのに……なのにアイツは……。


 「先輩!今年もアニメ・フェスティバルの季節がやってきたんデス。
 のだめ、パリに来てからピアノ頑張ってるし……。
 今年も行ってきていいデスよね?
 フランクのママもぜひって言ってくれてるんデス!」


 「アニメ・フェスティバルって……、あのコンクールに行くときに同じ列車に乗ってたコスプレの……」


 「コンクル……懐かしいデスね……。
 千秋先輩がなめくじに塩状態で、初めてのだめと手をつないでくれた夜……はぅん……」


 「へ、変なことばっかり思い出すんじゃねぇ!」


 「ねぇ先輩、行ってきてもいいデショ?2泊3日だけデスよ?のだめがいなくて寂しいデスか?」


 「寂しくねぇ!そーじゃなくて……お前もコスプレとか、するんじゃねーだろーな?」


 「むきゃ?してほしいデスか?
 のだめはコスプレ趣味はないんデスが、先輩がしろっていうなら……」


 「言ってねえ!!!

 そうじゃなくて……お前だって黙ってればそれなりなんだから……。
 そういう格好を俺がいないところで、もししたとしてだな……、その……変な奴から言い寄られたりしたって、俺は守ってやれねーんだから……」


 「むきゃっ!もしかして……先輩のだめのこと、心配してくれてるんデスか?」


 「……うん(赤面)」


 「ぎゃはぁ!のだめ嬉しいデス!
 オタクといっても嗜好はいろいろなんデスよ?のだめはコスプレ趣味はありませんから、安心してくだサイ?」


 「……頼むから、コスプレだけはしないでくれ……」


 「もちろんデス!のだめ、コスプレだけはしまセン!
 音楽の神様にも誓いマスよ!」






 New World






   あれから季節は何度か巡り、のだめはスケジュールさえ合えば、毎年のようにアニメ・フェスティバルに出かけていったけど……。


 俺との約束は守って、コスプレだけはしていないようだ。


 相変わらず、部屋にはごろ太グッズが増殖しつづけているけど……、まぁこれくらいなら、許容範囲内だろ。


 ピアニストとしてプロデビューして、20代も後半に入ったのだから、もうちょっと落ち着いた趣味というか……変わってくれてもいいんじゃないかとも思ったりするけど……。


 とにかく、これ以上変態度が進行しなければ、それでいいと思っていた。


 それなのに……。


 初めてのオペラ。ヨーロッパと日本を忙しく行き来しながら迎えたHP。


 オケピの指揮台に立ってみれば、ヴィエラ先生のそばで聞いていたのとは、まったく様子が違っていて……。


 焦る俺はオケの連中からの信頼も揺らぎ……峰にまでアドバイスされる始末。


 そんな弱りきった俺の前に現れたのは……。
 









 「なんだ!そのカッコは!!!」


 ふともももあらわなミニスカート。まるで女子高校生のような……お前幾つになったんだよ!?(多分26歳?)


 「だって俊彦クンが!これ着ていけば三千円くれるっていうから!!!」


 俊彦……?


 「先輩……やっぱり好きなんじゃ……?
 尋常じゃないデスよ?その過剰な反応」


 「好きじゃねえ!」


 俊彦のやつ……一体、どこへ行こうとしてるんだ?


 疲れきって帰宅した俺は、女の悪だくみまで立ち聞きしてしまい……。


 てゆーか、ターニャまで……。


 今はとてもそんな余裕ないけど……。


 本番が終わって落ち着いたら、帰国前に俊彦と一度話をしなければ……。


 忙しい叔父に代わり、年上の身内として、三善家の一員として、俺が俊彦を正しい道に導かなければならない。


 そんな使命感を感じつつ、疲れ切った身体をベッドに投げ出し、真一は意識を手放した。










 「俊彦……ちょっといいか?」


 帰国を前に、時間が取れた俺は、気になっていた使命を実行するため、俊彦の部屋を訪れていた。


 「真兄、なに?」


 「あのさ……この前お前、のだめとターニャに……あれはなんだ?」


 「……ああ、あれ!真兄は知らないだろうなぁー!
 のだめさんのはハルヒ、ターニャのは初音ミク(いや、わかりません。そーかなーと思うのですが、どなたか正解ご存知の方、教えてください)だよ。
 ハルヒはアニメのキャラで、ミクはVOCALOIDっていって……」


 「いや!そうじゃなくて!!!俺は解説を聞きにきたわけじゃなくて……」


 「じゃあなに?」


 「お前つまりその……ああいうの好きなのか?」


 「好きだよ?」


 「なんでそんなことに……お前、今までそんな趣味なかっただろ?」


 「そんなことないよ?前からアニメは好きだったし……。
 真兄が興味ないから、別に話さなかっただけで」


 「えっ!そ、そうだったのか……」


 「もしかして……真兄も……好きだったの?やっぱり血は争えないねー!」


 「好きじゃねえ!!!

 そうじゃなくて……俺はお前にそんな趣味があるとは知らなかったんで、ちょっと驚いて……。
 何か俺にできることがあれば、話でも聞こうかと……」


 奥歯に物が詰まったような真一の口ぶりに、俊彦は不思議そうな顔で話を聞いていたが、考え込むと少しの沈黙のあと、口を開いた。


 「なるほど……。
 真兄はコスプレに抵抗があるんだね?
 三善家の一員として、跡継ぎである僕にコスプレ好きなんていう趣味があっては困ると、間違った道に進もうとしている年下の従兄弟に意見してやろうと……こういうことだね?」


 「……いや、間違った道とか意見とか……そんな大げさなもんじゃなくて、お前が何か悩みとかあるんじゃねーかって……」


 「ぷっ!あはははっ!真兄らしーや!
 大丈夫、悩みなんてないから安心してよ。
 むしろ僕は、大好きなことを見つけて、楽しんでるんだから。

 それよりその生真面目な真兄のほうが、いろいろ苦労するんじゃないかって僕は心配だよ?

 そうだ、ちょっと僕の趣味のこと、真兄にも知ってもらいたいな」


 「えっ?!」










 「真兄だってあっただろ?子供のころ、憧れのヒーローと同じポーズをとって台詞を言って……。
 憧れて、自分もそれになりたいって思う気持ち。

 大きくなって、そんなことは叶わないって知ってからも、大好きなキャラクターになりきって、キャラと同じ格好をしたいって思って楽しむこと。それがコスプレだよ」


 「いや、俺は子供時代はヨーロッパだから、アニメとか戦隊ものとかそういうのは……」


 「あ、そっか……じゃあ、真兄が子供のころに憧れてたのは……ヴィエラ先生?」


 「……あえて言えば、そうかな」


 「だったらさ、憧れていたころは指揮棒に見立てた棒を、音楽に合わせて振って、ヴィエラ先生はこんな感じだなっ!とかやったりしなかった?」


 「えっ!?……まぁ、そんなこともしたかな」


 「それと同じだよ!

 でもすごいな……真兄は今や本当にオケの前で指揮振ってるんだから。
 夢かなえちゃったンだもんね。すごいよ!

 初めて燕尾服を着て、オケの前に出たとき、感じなかった?
 憧れていたものになれたっていう……高揚感というか。

 まぁ、真兄の場合は、コスチュームで楽しむどころか、本当にプレイ(演奏)してるんだから、ある意味本物のコスプレかも〜!」


 「……」



 「まぁコスプレには、アニメキャラ以外にも、ナースとかメイドとか、自分が萌える格好を恋人にさせて、楽しむっていう男性もいるとは思うけど。

 僕はそっちの趣味はないし、あくまでコスプレ衣装のコレクションマニアなんだ。

 だから、真兄が心配するようなことはないから、安心してよ、ね!」


 「……わかった……」


 俺はその日、年下の従兄弟を諭すどころか、自分のほうが新しい世界を教わってしまう始末で……。


 コスチュームプレイ……世の中にはいろんな趣味があるんだな。


 俺は決してそんな趣味はないけど、確かに舞台に上がる前、燕尾を身につけタイをしめて前髪を上げると、その瞬間から"指揮者・千秋真一"モードに入る気がする。


 まぁ衣装が人の気分を変えるってことなのかもな。


 そんなふうに一通りの納得をして、年下の従兄弟の趣味に理解を持った真一は、帰国のための荷造りに、部屋へと戻っていった。


 「そうだ、そろそろコレクションの整理でもするかな?
 さすがにクローゼットがぱんぱんで、これじゃ新作を納める場所がないや」










 「千秋先輩……」


 「どうした?支度は終わったのか?」


 帰国の準備を終え、部屋でくつろいでいた俺のところに、のだめがやってきた。


 「あのこれ……俊彦クンが先輩にって……」


 「ん?」


 俺は、荷物と一緒に手渡された、俊彦からだというメモ書きに目を通す。


 "真兄へ

 久しぶりにコレクションの整理をしたら、真兄たちに譲ってもいいかな〜というコスプレが何点かあったので、のだめさんに託します。

 気に入ったのがあったら、ぜひパリに持って帰って、楽しんで!

 俊彦"


 「はぁぁっ?!」


 「先輩……俊彦クンのコレクションってすごく完成度高くて……。
 のだめも、ちょっと着てみたいって思うくらい……。
 ねぇ?だめデスか?ちょっとだけ、見てもらえまセン?」


 「お、お前はなにを……」


 「絶対に外では着まセンから……、千秋先輩に見せるだけデスよ?
 ね?だめデスか?」


 俺の袖口をつかみ、上目遣いで小首をかしげ、俺を見上げるのだめ。


 そのおねだりポーズ、久しぶりに見たな。やっぱり可愛いな……じゃなくてっ!


 「……ちょっとだけだぞ?」


 「ぎゃはぁ!先輩、ありがとございマスっ!!!
 じゃあ、ちょっと着替えてきマス!」


 「お、おいっ!」


 そういって、アイツは俺の部屋を飛び出していった。


 こんなこと、由衣子の目に触れたら……。廊下を変なカッコでふらふらしてたらまずいだろ?!


 俺はドアをあけ、廊下に誰も家族がいないことを確認すると、のだめの部屋に向かった。










 「おいっ、のだめ開けるぞ?」


 「むきゃ?先輩待ちきれまセンでした?」


 「そうじゃねえ!!!」


 ドアを少し開け、のだめが顔だけ覗かせた。


 「変なカッコでうろちょろしたらまずいだろーが。
 だから……はいるぞ?」


 「ぎゃぼ……もうちょっと待っててくだサイ」


 「……早くしろ」


 「もう先輩ってば、待ちきれないんデスね?」


 「だからっ!そうじゃねえって言ってんだろーがっ!!!」


 「はいはい、騒ぐと何かと思われマスよ?急ぎますから、いいっていうまで、そこで待っててくだサイね?」


 「くそっ!」










 「先輩、ドゾ?」


 しばらくすると、のだめがドアをあけ、顔だけひょっこりのぞかせた。


 「う、うん……」


 のだめはいったん引っ込んでドアを閉めてしまったので、なんだか知らないけど……やけに緊張するじゃねーか。


 恐る恐るドアをあけると、部屋の中央に待っていたのだめは……。


 「マキマスカ?マキマセンカ?」


 「まかねえっ!」


 ゴスロリ系アンティークドール風(ローゼンメイデンです)の衣装を纏ったのだめがいた。


 確かにこの完成度はすごい。真紅のベルベッドのドレスからのぞく、贅沢なレースにお揃いのヘッドドレス。


 まぁ、童顔なのだめには似合うといえば似合うが……。
 あいにく俺にはロリータの趣味はないというか……萌えない。


 「がぼん……真一クンがのだめのシモベになるっていうプレイもいいかと思ったのデスが……」


 「なんで俺が変態のシモベに……。
 次っ!」


 いちいち部屋を追い出されるのはたまったものではないので、シーツをつかって、手早くのだめ専用の衣裳部屋を用意する、器用な俺。


 のだめはぶつぶつ文句を言っていたが、絶対に覗かないでくだサイね?と鶴のような台詞を言い残し、大人しくシーツの向こう側で着替えている。


 ちょっとだけ期待に胸が高鳴るのは、絶対に内緒だ。


 「先輩ー!準備ができまシタ!出ていきマスから、向こうむいてくだサイ?」


 「……めんどくさ……」


 うしろを向き待っていると、シーツを捲くってのだめが出てくる音がする。


 「いいデスよー!」


 振り返った俺が見たものは……なんだこれ?


 「ピーリカピリララ ポポリナペンペルトー!(すみません、のだめに一度言わせてみたかったんです)」


 「なんだそれは?」


 「むきゃ?魔女見習い服デス。どれみちゃんなんデスけど……。やっぱり真一クンもおんぷちゃんのほうがよかったデスか?(男子に一番人気)
 実はのだめも、リアルタイムで楽しむには年齢がいっていたので、よくは知りまセン。
 でも、魔女系は女の子にとって、永遠の夢なんデスよー!

 ピーリカピリララ 千秋先輩のむっつりすけべ治れー!」


 「死ね!」


 「ぎゃぼー!」


 のだめを吊り上げ、衣裳部屋に投げ込む。


 「もっとこう……アニメ系じゃない、普通のはないのか?」


 「むきゃ……基本的に俊彦クンのはアニメ系なんデスが……。
 普通っぽくて、真一クンが好きそうなので……了解シマシタ!」


 「もう次で終わりだからなっ!」


 「必ず真一クンを萌えさせてみせマスよ!」










 意気込みの雄たけびをあげ、シーツの向こうでがさごそと着替えるのだめ。


 やっぱりコスプレなんて俺の趣味じゃねーな。疲れきった俺にのだめから準備が出来たとの声がかかる。


 うしろを向いて合図を待つ。


 「ドゾ?」


 振り向いた俺を待っていたのは……。


 「おかえりなさい、ご主人サマ♪」


 俊彦はこんなものに幾ら使っているのか……。


 そんな心配が頭に浮かぶほど、のだめの身につけているメイド服は完成度が高かく、本物の匂いがした。


 ごてごてとしたフリルなどはあまり使われておらず、漆黒のドレスはシルクだろうか、上品な光沢が艶やかだ。


 ドレスの上につけたエプロンも、シンプルだが上品なフリルに縁取られ、高級感のある純白が黒のドレスによく映えて。


 エプロンと同じ素材で作られたシンプルなカチューシャ。童顔ののだめにはよく似合う。


 おとなしめだが、ほどよい分量のペチコートでドレスはふんわりと膨らみ、膝が隠れるか隠れないか程度の丈も俺好みだ。


 両足はすこし肌が透けるくらいの白いタイツで包まれている。
 ガータベルトだろうか……あまり露出がない分、かえってその下の姿を想像してしまう。


 靴はめずらしく、シンプルな黒のパンプス。5センチくらいのヒールも俺好みで……。


 ごくり。


 「真一クンはこれくらいシンプルで、露出度も抑え目なほうが萌えるデショ?
 白黒も大好物だろうし……。

 ドデスカ?ご主人サマ……」


 「お、お前がメイドじゃ、料理は失敗する、転んで洗濯物は汚す、皿を洗えばつるっと滑らせて割る、ドジっ娘メイド決定で、ちっとも役に立たないじゃねーか……」


 「でも……ご主人サマにはご奉仕しマスよ?」


 「へ、へぇ……」


 「萌え……まシタ?」


 「……奉仕の内容による」


 「もう……むっつりご主人サマなんだカラ……。
 あんっ……しわになるから乱暴にしないでくだサイ?

 これ、持って帰りマス?」


 「……うん」


 俺の好みを知り尽くしたのだめの最後の攻撃には……参った。


 かなり興奮してしまったことは、口が裂けてもいえねーけど。




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 大変お待たせしました!
 33333HIT!お礼キリリクSSです。

 キリ番ゲッターの花音サマからのリクエストは、「のだめちゃんがいろんなコスプレして、それをみてる千秋が悶々とするカンジ。それでもってめちゃ甘々。なんなら裏か微裏にもしちゃってください。ターニャも出してください」というものでした。

 コスプレと伺った瞬間、オペラ編のコスプレネタが浮かんで。
 拍手メッセージでのんたサマから、「『コスプレだけはしないってあれほど豪語しておいて…』が気になったのでそこの補完ぜひ読みたいなぁ、と…」というメッセージも受け取って、そのあたりまで掘り下げてみました。

 すいません、コスプレシーンはギャグに走ってしまい、あんまり甘々にはならず。コスプレもあんまり詳しくないので、ついつい趣味に走ってしまいました(汗)
 ターニャも登場させられず……中途半端でごめんなさい。

 当サイトに一番最初に拍手メッセージを送ってくださった花音さんに、これまでの感謝の気持ちをこめて献上いたします。

 今後も芒果布甸/mangopuddingをよろしくお願いします。
 2010.12.21 香水


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