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Come fly with me 「騙された……」 パリのレストランで、案内されたテーブルに座っていたのは、まだ絡み方がよくわからない、ちょっと無愛想な息子と、クラシックピアノ界に彗星のごとく現れた、ちょっと風変わりな嫁であった。 「三善の仕事関係で知り合いになったら、実は俺のファンだってことがわかって、パリに仕事で同行してるから会いたいって言ってる映画「レッドクリフ」で一躍スターになった台湾人美人女優の林 志玲( リン・チーリン)は、どこにいるんだよ……」 「うふふ、あなたってほんと、何度でも騙されてくれるのよね。 ……楽しいわ」 帰ると言い出す雅之のひじをぐっと掴んで、征子は静かに凄んだ。 「帰っても構わないけど、あなたがいないところで、若い二人に教えてあげたいことなんて、いろいろあるんだけど。 ワイン飲んで、いい気分になって、私がいろいろ喋ったとしても、あなたには関係ないわよね?」 「うっ……」 雅之は観念したのか、嫁の向かい側の席に、ぐったりと腰を下ろした。 「ほわぉ……、征子ママって極妻みたいでカコいいです……」 「おい、今日はお前の師匠と食事だっていうから来たんだぞ?オクレール先生じゃなかったのかよ?」 「むきゃ?ある意味師匠なんですよ、マサユキ・チアキは。 のだめ、征子ママとグルになって、真一クンを騙すなんてことしてないデスよ?」 「はぁ……、目そらしてんだよ……、バレバレなんだよ……」 元夫婦と現夫婦のダブルカップルによるディナーが始まった。 会話は主に女性陣により進められ、途中途中で意見を求められる男性陣は、ぎこちなく返事をするのみ。 かちゃかちゃ……。 食事を取る音だけが静かに響く、ぎこちない空気の中、のだめと征子はそっと視線を合わせると、お互いに溜息をついた。 「約束どおり、食事にも付き合ったし、おまけに俺のおごりだし、もう帰ってもいいよな?」 まったく盛り上がることなく食事を終え、チェックをすませると、雅之が帰り支度を始める。 「あら?どうせこの後、予定なんかないんでしょ? 一人でホテルに帰って飲むだけなんだから、一緒に飲みましょうよ」 「なんでお前らと一緒に……。 俺は昨日コンサートで、疲れてるンだよ……」 「ああ、わたし今、とっても気分がいいわ。 いろいろと思い出話とか、喋りたい気分?」 「……どこに行けばいいんだよ……」 観念して歩き出す雅之。 その背後で揉める現夫婦の二人。 「お、俺は帰るぞ。 次の公演の勉強もしなくちゃいけないし……」 「ああそうですか……。 じゃあのだめも、次の公演が近いので、このまま征子さんについていって、征子さんのホテルに泊めてもらいます。 公演終わるまで、真一クンのところには帰りまセンから!」 ふんっ!それでいいんデスよね? 両手を腰にあて、仁王立ちで上目遣いで真一を睨みつけるのだめ。 「の、のだめさん?」 くるっ!すたすたっ。真一にお構いなしで歩き出す。 「お、おい……」 嫁大好き、嫁に夢中でまっしぐらな真一は、のだめの攻撃に案の定、きょうも完全敗北という看板を掲げ、とぼとぼと後をついていくしかなかった。 辿り着いたのは、雰囲気のある大人っぽいラウンジ。 広いラウンジの中央には、りっぱなグランドピアノが置かれている。 奥のボックス席に案内され、雅之は征子と息子の嫁に挟まれるように座らせれ、テーブルを挟んだシートには息子だけが手持ち無沙汰に座らされている。 「お前……、大丈夫か? 嫁の言いなりじゃねーか」 「あ、アンタに言われたくねぇ……」 「まぁ、雅之さんと真一ったら、いい感じじゃない?」 「そうですねぇ、やっぱり親子デスから。 ここは早いところ、真一クンにがんばってもらって、いずれはピアノ協奏曲で親子共演?」 「まぁ……。そんな夢みたいなこと……。 こんな男(ひと)だったけど、真一を産んでおいてよかったわ……」 「せ、征子ママ……」 うるうると美しい瞳に涙を滲ませ、言葉を詰まらせる征子。 義母の女としての半生に、同性として共感し、もらい泣きするのだめ。 「おい……、なんか女どもがおかしいぞ? 新手の集団セラピーかなんかか?」 「アンタも一度、カウンセリング受けろよ……」 「なんでだよ?俺はいつでも自分に正直に、生きたいまま、やりたいようにやって来たから、なんの後悔もないし、迷いもないぞ?」 「ああ、そうだったよな……。 てか、少しぐらい迷えよ……」 真一は、どんなに飲んでも酔えないとは、こういうことなのだと実感し、人生の不思議さと奥深さをまた痛感するのであった。 そんな元夫婦と現夫婦のダブルカップルによるお酒の席が、よくわからない盛り上がり(?)を見せていたころ、ふと、テーブルの横を通りかかったフランス人と思われる老夫婦に声をかけられる。 「あの……、大変失礼ですが、奥に座っていらっしゃるのはピアニストのマサユキ・チアキではありませんか?」 「いいえ、そんなピアニストは知りません」 けんもほろろに嘘をつき否定する雅之本人に代わり、真一が答える。 「はい、その通りですが……」 「まあ、やっぱり……。わたしたち、マサユキ・チアキの大ファンなんです!お会いできて光栄ですわ!」 老夫婦は嬉しそうにお互いの顔を見つめあうと、決心したかのようにうなづき、言葉を続ける。 「昨日のコンサートにも伺いました。 実は、私たち夫婦は今日が結婚50周年の記念日だったので、その記念の意味もあったんです。 とっても素敵な夜でしたわ。 あのぉ……、こんな不躾なお願い、いけないかしら、1曲弾いていただきたいなんていったら、プロのピアニストに失礼よね?」 老夫婦の奥方が、人のよさそうな真一をターゲットに、一見丁寧ではあるが、かなりずうずうしいお願いをしてきた。 「え、いや、あの、その……」 「ふざけんなババァ、俺を誰だと思ってンだ?(注:日本語)」 「お、おい……。ファンくらい大切にしろよ、家族はないがしろにするんだから」 「なんだ!父親に向かってその口の聞き方はっ!」 「あ?誰が父親だ?父親を名乗るぐらいなら、それらしいことしてみろよ!」 「だぁーーーーーー! いい加減にしろってんデスよ!!!!」 はぁはぁはぁ……。 初めてといっていい親子ゲンカに、肩で息をつく父子。 「まぁ……、真一と雅之さんが親子ゲンカするなんて……。 仲のいい証拠ね?」 「征子ママ……、よかったデスね……」 かなりな天然系ポジティブシンキングでうれしそうな征子に、義母の喜ぶ姿に感激するのだめ。 「はぁぁ?!母さん、それおかしいって……」 「昔から征子はこういうところがあったんだよ……」 急展開の家族4人の団欒(?)風景に、置いてきぼりの老夫婦。 「あ、あのぉ……。やっぱり失礼なお願いでしたわね? プライベートなところ、お邪魔してすみませんでした……」 立ち去ろうとする老夫婦に、雅之が声をかける。 「いえ……。お二人の記念日にとんだ醜態をお見せしてもうしわけありませんでした。 私はあいにく、コンサート後はしばらく両手を休めるようにドクターストップがかかっておりまして(大嘘)、代わりといってはなんですが、わたしの息子の嫁である新人ピアニストのNODAMEが一曲プレゼントいたします。 まだ、新人で荒削りではありますが、素晴らしい才能をもったピアニストですので、お二人の期待にお応えできると思いますよ?」 な?と面白そうに真一とのだめに笑いかける雅之であった。 「受けて立とうってんデスよ!」 のだめは満面の笑みを浮かべると、疲れてげっそりした真一の手を引き、ピアノに向かう。 「お、おい……」 のだめに促されるまま、ピアノ椅子の横に並んで座る。 ピアノから流れてくるのは、軽快なジャズのメロディ。 スウィング全盛期の眩い光を放つ名曲、IF DREAMS COME TRUE。 弾むようなピアノと一緒に、のだめの鈴の音のような、可愛らしいヴォーカルが真一の耳をくすぐる。 もし夢がかなうなら ずっとあなたの傍にいるわ あなたの瞳、その微笑が好きだから 大空いっぱいにひろがる、あなたの未来 あなたが触れてくれる それだけで幸せ 目を開ければ、あなたがいる もし夢がかなうなら…… 真一は、今まで摂取したアルコールが一気に身体中を駆け巡るのを感じ、心地よい酔いに身を任せた。 のだめの抱きなれた腰に腕をまわし、頬に軽くキスをすると、楽しいのだめのピアノと可愛い歌声にテンションが上がっていくのを感じる。 曲が終わるころ、真一はのだめに耳打ちをした。 一瞬驚いたのだめの顔が、最高の笑顔に変わる。 続いてのだめが奏ではじめたのはフランク・シナトラの名曲、COME FLY WITH ME。 そして、驚いたことに歌いだしたのは真一であった。 「おい、アイツどうしたんだ?キャラ変わってるぞ?」 飛行機怖いやつが歌う歌じゃねーだろ。 雅之が面白そうに言う。 「うふふ……。そうね、人間って面白いわよね。 あの子ってば、嬉しそうな顔して"♪Come fly with me〜"」なんて歌っちゃって、ありえないわよね」 「誰に似たんだよ……」 「あら?あなたにそっくりじゃない。 酔っ払って、気分がよくなると、あなたもああいう感じだったわよ?」 「嘘つけ……」 楽しそうにピアノを弾き、歌う、幸せいっぱいの息子夫婦。 それを嬉しそうに見つめる征子。 「真一ってすごいな」 雅之がぽつりと呟く。 「え?」 「俺、自分の嫁があんなすごい才能のあるやつだったら、嫉妬で駄目になりそうだよ」 「……。 私にはのだめちゃんみたいな才能はなかったけど?」 「な、なんだよ……。 終わったことを蒸し返すなんて、お前らしくないぞ」 征子の思いもかけない反撃に、戸惑う雅之。 「親子そろってへたれなんだから(ぼそっ)」 「……でも、真一はすごいよ。 あの嫁もすごいけどな」 「そうね……」 「それにしてもなんだよ、真一の選曲おかしいぞ? 能天気すぎるだろ、この曲……」 Come fly with me Let's fly,let't fly away もし、君が南国のカクテルが飲みたいなら ボンベイにバーがあるんだ Come fly with me Let's fly,let't fly away ペルーに滑り降りたら ラマではストリートミュージシャンが 君のためにケーナを吹いてくれるよ Come fly with me さぁ、天上の青までテイクオフ 一度君をつかまえて 上がるよ 空気だって薄くなるようなところ 星明りを滑走するんだ 一度君をつかまえて 上がるよ 君をとても近くに 抱きしめて 天使の歌声だって聞こえるさ だって 二人が一緒にいるから 天気だって、なんて素敵な日 君がそういうだけで 僕らは鳥たちにだって勝てるさ アカプルコの入り江に到着 パーフェクトなフライトのハネムーンへ Come fly with me Let's fly,let't fly away 荷物をまとめて、さあ飛び立とう! あれがパリでは黒王子と言われる、クールな指揮者だろうか。 真一はいきいきと、楽しそうに体を揺らし、のだめの腰に腕をまわしたまま、歌っている。 幸せいっぱいな息子夫婦に、ひとりっきりの静かな生活をかき乱され始めた雅之は、そっと溜息をつきながら、たまにはこんな夜も悪くないかと思いはじめていた。 絶対に元妻には言えないけどな。 --------END--- 5000ヒット、キリ番リクエストのSSです。 ゲッターのミッキーさまからのリクエストは、「☆真一パパ&ママと真一くんとのだめがディナーを食べている風景。で、そこで、他のテーブルのお客さまから、パパにピアノのリクがくるわけですよ。→(何故か?)パパは、リクをあっさり若いカップルに譲ってちあのだで連弾するというお話しはどうでしょう・・・?」というものでした。 連弾にはならなかったのですが、真一クンにめちゃめちゃ明るい歌を歌わせてしまいました。 ひさびさにハイテンション千秋の登場。 書いててすっごく楽しかったですw ミッキーさまには当サイト開設当初から可愛がっていただいて、香水に初めて感想をメールしてくださった大切なお客様です。 そのミッキーさんが初めてのキリ番祭りでゲッターになったことは、なんだか感慨深く、本当に嬉しかったです。 今回のリク内容も香水のツボを得た楽しいお題で、のりのりで半日で書き上げてしまいました。 ありがとうございました。多謝! IF DREAMS COME TRUEの日本語歌詞については、ちあのだを思い描きつつの、香水の超・超・超意訳・妄想訳です。その点、ご理解願います。 ★9.28 COME FLY WITH ME 歌詞、加筆 どうしても、真一クンにこの能天気な歌詞をハイテンションで歌ってほしくて、加筆してしまいました。 IF DREAMS COME TRUE同様、香水の超・超・超意訳・妄想訳です。その点、ご理解願います。 2曲については、↓に動画貼ってあります。ぜひ、曲をご存知無い方は、聴いてみてください。よりSSを楽しんでいただけると思います。 今日まで当サイトにお越しくださったすべてのお客様に感謝の気持ちと、大好きなの/だ/め/カンタービレに敬意を持って。 2010.9.26 香水(ひょんそい) ★9.27追加 ちょっと重くなるかもですが、香水のイメージに合う動画貼っておきます。 もちろんシナトラのCOME FLY WITH MEも最高なんですが、若い真一クンにはマイケル・ブーブレのイメージのほうがぴったり。 このビッグバンドの前で歌うライブ版はハイテンション真一クンのイメージにぴったりです♪ ピアノがないんですが、スージー・アリオリ・バンドのIF DREAMS COME TRUE。素敵デス♪ ヴォーカルが入ってないんですが(鼻歌程度しかw)パーティー会場かなんかでのりのりのピアノ演奏のIF DREAMS COME TRUE。 ちょっと長いです……。 SS indexに戻る |